表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百折不撓のアルゴリズム  作者: 一ノ瀬隆
3章 快刀乱麻のブレイブハート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/54

52話 立ち上がる勇気

俺たち三人は、飛び出るように工房の外へ出た。



黒煙が視界を覆い、爆発音が鼓膜を揺らす。俺は掛けてあった魔装ヒュニエスタを引ったくり、袖を通しながら臨戦態勢を取る。



「ここは僕が出るよ! レイ、今のレイに無理をさせるわけにはいかない!」



ユキが決意の表情で、敵の砲撃地点へ向かおうとする。だが、俺はそれを手で制し、冷静に戦況を分析した。



「待て、ユキ。一度ここは様子見だ。迫撃砲はあるが、歩兵の本隊はまだ遠い。今は迎撃よりも、市民の避難を優先させよう」



「でもっ......!」



「俺の体が万全じゃない今、お前まで前線で孤立したら終わりだ。確実にいこう」



俺の言葉に、ユキは少し悔しそうに唇を噛んだが、すぐに頷いた。



「わかった。スミスさんは南側の区画を! 僕は北側の人たちを誘導する!」



「おうよ! レイ、アンタも無茶すんじゃねぇぞ!」



三人は短く言葉を交わし、それぞれの持ち場へと散った。



俺は混乱する街中を駆け抜け、逃げ遅れている人々を広場の方角へ誘導していく。 瓦礫を越え、悲鳴が交錯する中、俺の足は自然とある場所へと向かっていた。



アクシアの家の前だ。 周囲の家は空っぽだが、ここだけまだ人の気配がする。



「アクシアは、逃げてないらしいな」



俺は切れかけていた息を整え、勢いよくドアを開けた。



「大丈夫か、アクシア!」



声を掛けると、薄暗い部屋の奥、机の下で耳を塞いで震えているアクシアがいた。



「あ......レ、レイさん......?」



よし、無事だ。これならまだ間に合う。



「ここは危険だ。早く避難したほうがいい。ユキたちが誘導している広場へ走れ」



俺は彼の手を引き、避難を促そうとする。だが、アクシアはその場を動こうとせず、震える声で問いかけてきた。



「レイさんは......どうするんですか?」



「え?」


「さっき、スミスとの会話が聞こえちゃったんです。レイさんの体はボロボロで......戦える状態じゃないって」



アクシアが俺の目をまっすぐ見て、問いかけてくる。 その瞳は怯えていた。けれど、それ以上に「答え」を求めていた。 傷つき、万全でない人間が、なぜ死地に赴くのか。その理由を。



俺の答えはもちろん──────。



「俺は逃げないよ。例えそれで、体が壊れても、逃げるわけにはいかないんだ」



ユキと一緒に、最後まで足掻く。そう決めたから。 それに、ここで逃げたら、俺は本当に「何も守れなかった過去」に負けることになる。



「......ッ」



アクシアは息を呑み、何かを納得したように頷いた。 彼は涙を拭うと、リュックを背負い、立ち上がる。



「わかり、ました......。ボクも、行きます」



「ああ。頼んだぞ」



俺はアクシアの背中を押し、家から送り出す。そして、戦火の上がる通りへと駆け出す直前、振り返ってこう言い残した。



「あと、俺に”さん”はつけなくていいからな。友達だから」



少しむずがゆかったが、アクシアともっと仲良くなりたかった一心で、不意に言葉に出ていた。



◇◇◇◇◇



ボクはレイさんに送り出されて、避難場所へと向かっていた。 しかし、心が辛い。あの時と、両親を失ったあのダンジョンブレイクの時と重なる。



「このままで、いいのか......?」



そう思ったときには、避難の足は止まっていた。 二度と、何もできないまま終わるのは、嫌だ。



でも、怖い。痛いのが、失うのが、死ぬのが。



「......う、うぅッ」



ボクはたまらず、その場にうずくまってしまった。 ダメだ。怖い。前に進めない。やっぱりボクは、家で引きこもっているのがお似合い。そういう定めだったんだ。



そう、決めつけようとした瞬間、固く閉じた目の裏によみがえる、レイさんの背中。



レイさんは、過去を乗り越えているんじゃなかった。 受け止めて、ボロボロになりながら、それでも引きずって進んでいるんだ。



そのレイさんは、ボクの閉ざしていた心のドアを若干開けた。だから、今迷えている。



そうか──────。



ボクに必要だったのは、”きっかけ”だったんだ。



それなら、ボクにだって、出来ることはあるかもしれない。 引きこもりながらずっと考えていた妄想の数々。それが、想像力となり、ボクに力を与えてくれる。



何万回にもわたる、脳内シミュレーション。ボクに想像できないことは、きっとない。



「ボクに、出来ることをやるんだ」



そう思った瞬間、足は避難所ではなく、スミスの工房に向かっていた。



────武器が、いるんだ!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ