51話 急襲
俺はアクシアの部屋から出て、外で待っていたスミスの元に向かった。
「アイツ、どうだった?」
不安げに眉を寄せるスミスを安心させるように、俺は努めて明るい笑顔で返答する。
「大丈夫。アクシアなら、きっと自分の力で立ち直れる」
それは確信だった。 フィストバンプをした時、髪の隙間から見えた彼の瞳。その奥底には、まだ消えていない「意志の光」が宿っていたからだ。彼はまだ、終わっていない。 あんなところで終わるような、そんな逸材じゃないことを、俺は本能で感じていた。
「そうか......! アンタがそう言うなら、信じるぜ!」
スミスはパァっと表情を晴らし、バン! と俺の背中を叩いた。
「よし! 湿っぽい話はここまでだ! 工房に戻って、アンタの『牙』の調整に入ろうぜ!」
「ああ、頼む」
俺たちは足取り軽く、スミスの工房へと戻った。
◇◇◇◇◇
工房に戻ると、散策から戻っていたユキが、満足そうに──どこかで買い食いしてきたであろうパンを頬張りながら迎えてくれた。
「ほはへひ」
「ああ、ただいま」
行儀悪くも美味しそうにパンを食べているユキを横目に、俺は腕の改造の準備を始める。 その時、工房の隅に、布を被せられた奇妙な形状の武器が置かれているのが気になった。
「スミス、あの隅にある武器は何だ?」
それを聞くと、スミスは苦い顔をして頭を掻いた。
「ああ。あれは......調整中の試作品でな。名前を、螺旋剣クァエスタ・ヘリットっていうんだが、どうも制御系統がうまくいかなくてな」
布の隙間から見えたのは、異様な形状の剣だった。 真ん中に持ち手があり、その周りを何重もの刃が螺旋状に纏っている。 いわば、巨大なドリルのような形だ。
「面白い形状だな」
「だろ? ま、今はアンタの腕が最優先だ」
そうしている間に、準備が整った。
「うわぁ、すごい機械......。レイ、本当にこれを腕につけるの?」
「ああ。これくらいしないと、魔力に耐えられないからな」
俺は上半身裸になり、手術台のような椅子に腰を下ろす。 目の前には、スミスが用意した無骨な金属の杭──試作段階の『魔導接続器』と、俺の腕を改造するためのドリルやカッターが並べられている。
「いいかレイ。手順はこうだ」
スミスがゴーグルを装着し、職人の顔つきになる。
「今から始めるのは、アンタの腕に四本の杭を打つための『整地』だ。表面を削り、神経と回路を露出させて改造しやすくする。その時、皮膚を削られる痛みがあるが......それは耐えてくれ」
そう言い、何かを投げ渡された。 受け取ったのは、分厚い革のベルトだ。 なるほど、拷問に近い激痛が走るわけか。
「上等だ。さっさと始めてくれ」
俺はベルトを口にくわえ、右腕を固定台に乗せた。 スミスがドリルのスイッチを入れる。 キィィィィン......! という甲高い回転音が工房に響く。
「よし、行くぞ......!」
スミスがドリルの刃を、俺の右腕へと近づけた、その瞬間だった。
ズドォォォォォォォォォォンッ!!!!
「ッ!?」
凄まじい轟音と共に、工房全体が激しく揺れた。 作業台の魔導ライトが明滅し、天井からパラパラと砂埃が落ち、積んであった資材が崩れ落ちる。
「きゃっ!?」
「なんだ!? 地震か!?」
スミスが慌てて作業を中断し、窓へと駆け寄る。 俺もベルトを吐き出し、スミスの後を追って窓の外──サテンヘルドの市街地を見下ろした。
そこには、信じられない光景が広がっていた。
平和だった鉱山都市のあちこちから、黒煙が上がっている。 さらに奥の山岳地帯には、展開された魔法迫撃砲の砲列が見えた。いきなりの襲撃か!
「あれは......『円卓』の下級兵士部隊。なんでここを狙った?」
いや、考えられる理由は二つある。 この街は魔鉱石の産地。そして奴らは先日、幹部を失った。戦力ダウンへの焦り。そして体勢を立て直すための資源の確保。奴らはなりふり構わず、この街を墜としに来たんだ......!!!
ウゥゥゥゥゥゥゥ──ッ!!
遅れて、敵襲を知らせるサイレンが、不協和音のように鳴り響いた。
X、活動報告でも書きましたが、2月初週まで少しお休みをいただきます。
理由は学業のためなので、とても私的なことですが、ご了承お願いします。
必ずパワーアップして帰ってきますので、今後も楽しみにしていただけると嬉しいです!!!




