表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百折不撓のアルゴリズム  作者: 一ノ瀬隆
3章 快刀乱麻のブレイブハート

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/60

47話 バーンナップ

「......ッ、痛ったい」



ズキズキと脈打つこめかみを押さえ、重い頭を振る。 何があった......? 記憶の糸を手繰り寄せる。 そうだ。あの演説の後、エデニアムの私室に戻って、俺とユキ、イーシア、ソフィアの身内四人で「本当の祝勝会」をしたんだった。



張り詰めていた糸が切れた反動か、それとも勝利の美酒が過ぎたのか。 結局、酒に慣れていない俺とユキは早々にダウン。イーシアも上機嫌で飲み潰れ、最後はソフィアが呆れ顔で後片付けと介抱をしてくれた......というわけか。



「ん......レイ......」



身体を起こそうとすると、胸元に重みを感じた。 見ると、ユキが俺の服を掴み、しがみついてすやすやと寝息を立てている。 無防備すぎる寝顔に、思わず頬が緩む。



そして、ベッドの向こう側には──とんでもない大の字で、布団を蹴飛ばして爆睡しているイーシアの姿があった。 昼間の凛とした騎士団長の姿はどこにもない。



「......さすがにはしゃぎ過ぎたか」



自分の中で大いに反省しながら、俺はユキを起こさないようにそっと身体を抜け出した。 喉が渇いた。顔も洗いたい。



部屋を出て、共用のリビングへと向かったところで、エプロン姿のソフィアと鉢合わせた。



「おはようございます。レイ様。少しお時間いただいても?」



「ああ。大丈夫......おはよう、ソフィア」



あれだけの惨状を片付け、こうも整然としているソフィアに感心するしかない。 彼女は酔い覚ましの水を俺に手渡しながら、本題を切り出した。



「レイ様の右手を何とかできる鍛冶師が、一応見つかりました。......あくまで、『一応』ですが」



ソフィアの言葉に、少し引っ掛かりを覚える。 完璧主義の彼女が、なぜ言葉を濁すんだ?



「有名な鍛冶師ではありませんが、腕は確かなようです。後でエデニアムに来るように手配していますので、あとはレイ様のご判断に任せます」



「わかった。会ってみるよ」



俺はズキつく頭で頷いた。 どんな人物が来るにせよ、この暴走する右手を何とかできるなら、藁にもすがりたい気分だった。



◇◇◇◇◇



俺はズキズキと痛む頭を抱えながら、エデニアムのフロントでその鍛冶師を待っていた。 ソフィアの話では、もう到着しているはずなのだが。



「よろしく頼むぜェェェェッ!!!!!!!!」



鼓膜を突き破るような大音声と共に、エントランスの扉がバーン! と勢いよく開かれた。 鉢金を巻き、油と煤で汚れた作業着を纏った男が、風のように入ってくる。



「......うっ」



二日酔いの頭に響く。 間違いない、あの男だろうな。見るからに、俺と大して変わらない年齢だ。これが、ソフィアの言っていた鍛冶師か。

無駄のない筋肉に、俺とさほど変わらない身長。思っていた人物像とは違い、好青年な印象を受ける。



ソフィアの評価は独特だった。 『腕は極めて優秀です。しかし、優秀過ぎて使いこなせる人がいないのが最大の欠点です』



見たことの無い革新的な構造。 既存の常識に捕らわれない、素材の限界を無理やり引き出す機構。 それゆえに、使用者が反動に耐えられず、武器より先に人間が壊れる──そんな「欠陥品」を作るのが、この鍛冶師なのだという。



普通の騎士なら敬遠するだろう。 だが、今の俺には「それ」が必要だ。



「お前が、ソフィアが言っていた、スミスか?」



「おうよ! 俺がスミスだ!」



スミスは、白い歯を見せてニカっと笑った。 裏表のない、太陽のような男だ。 その真っ直ぐな瞳に見つめられると、二日酔いの頭痛すら吹き飛びそうな気がしてくる。



「アンタが、新しい剣聖サマだな? ソフィアから話は聞いてるぜ。『とんでもないナマモノ』を制御してくれってな!」



「......ナマモノ扱いかよ」



俺は苦笑しながら、右手の革手袋を外した。 スミスの目が、点になる。



「こいつだ。見ての通り、普通の鍛冶じゃどうにもならない」



俺は結晶化した右手をスミスの前に突き出した。 蒼碧に輝く指先。バチバチと散る魔力の火花。 普通の人間なら引くか、気味悪がるところだ。



だが、スミスは違った。



「すげぇ......ッ!!!!」



彼は目を輝かせ、俺の右手を両手でガシッと掴んだ。 熱い。こいつの手、熱すぎるだろ。



「なんだこりゃ!? 生きてんのか!? いや、鉱石そのものが魔力の塊になってやがる......! こんな素材、見たことねぇぞ!!」



スミスは俺の手を様々な角度から眺め、鼻息を荒くする。 そこに恐怖や嫌悪はない。あるのは、未知への興奮と、職人としての純粋な闘志だけだ。



「どうだ、スミス。これに合うガントレットを作れるか?」



俺が尋ねると、スミスは顔を上げ、今日一番の熱い笑顔で言い放った。



「当たり前だろ! こんな面白れぇモン見せられて、燃えない職人がどこにいる!」



彼はバンッ! と俺の肩を叩いた。痛い。



「やってやるぜ! 俺の持てる全技術を注ぎ込んで、アンタのその腕を完璧に乗りこなす『最強の牙』を作ってやる!」



「頼もしいな。で、いつから取り掛かれる?」



「今すぐにでも叩きてぇところだが......」



スミスは腕組みをして、周囲を見渡した。



「ここでは無理だ。俺の工房に行かねぇと、最高の仕事はできねぇ。道具も、炉の火力も足りねぇんだ」



「工房? どこにあるんだ」



「決まってんだろ!」



スミスは親指で、西の方角をビシッと指差した。



「鉱山都市サテンヘルドだ! 俺たちのホームグラウンドに来な! そこで最高のやつを打ち上げてやるよ!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ