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百折不撓のアルゴリズム  作者: 一ノ瀬隆
2章 艱難辛苦のフォアードロード

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44話 激戦の結末

クオカミの纏っていた血が、生気を失ったように滴り落ちる。 その中心には、クオカミの亡骸があった。 あれだけの再生能力を誇っていた肉体は炭化し、もう二度と動くことはない。



「お前たちは強かった。肯定こそしないが、その決意は受け取った」



そうして、俺は円卓二人の死体を背後に、戦場から去っていった。 振り返る必要はない。彼らの正義は、俺たちの未来への意志に敗れたのだから。



◇◇◇◇◇



その遥か後ろ、そこにユキは気絶した状態で寝そべっていた。 地面には、彼が弾き飛ばされた跡が残っている。



「......っ」



駆け寄った俺は、息を呑んだ。 その両手は、俺を守った反動でズタズタだった。 皮膚が裂け、火傷のような痕が残り、指は不自然に痙攣している。 聖剣を盾にするという無茶な芸当の代償。 俺を生かすために、彼は自分の手を犠牲にしたのだ。



「......やったな、ユキ」



そう呟き、俺はボロボロになったユキの手を、壊れ物を扱うように優しく握った。 温かい。脈はしっかりしている。命に別条はない。 それだけが、今の俺にとっての救いだった。



「帰ろう。みんなの所へ」



俺はユキを慎重に抱き上げ、背負う。 軽い。 でも、その軽さが今は愛おしい。 俺の背中で規則正しい寝息を立てる彼を、もう二度と離さないと誓う。



俺達二人の戦いは終わった。でも、まだロンベルの戦いは終わっていない。 ここからは、イーシアを助けに行く──────!



◇◇◇◇◇



一方、ロンベル平原の前線。



「怯むなッ!! 押し返せ!!」



私は『ユニクシア』を振るい、円卓の魔導兵を次々となぎ倒していた。 だが、戦況は芳しくない。 個々の兵士の質は互角でも、敵には数の利がある。 じりじりと、エデニアムの防衛線が下がり始めていた。



「クソッ......レイ殿、ご無事だろうか......」



私は剣を振るいながら、焦燥を滲ませる。 先ほど、森の奥で天地を揺るがすような轟音と光が見えた。 あれがレイ殿の攻撃なのか、敵の攻撃なのか。 もしレイ殿が敗れていれば、あの怪物二人がここへ加勢に来る。そうなれば全滅だ。



「隊長! 右翼が崩れます!」



「私が支える! 総員、私の背中に続け!」



腹を括り、死地へ飛び込もうとした、その時だった。



ザッ、ザッ、ザッ。



戦場の喧騒を切り裂くように、森の奥から足音が響いた。 重く、静かで、圧倒的な威圧感を放つ足音。



敵も味方も、その気配に飲まれて動きを止める。 森の闇から姿を現したのは──。



「......レ、イ殿?」



ボロボロの黒い軍服を纏い、背中に白い少年を背負った、一人の剣士だった。その姿は満身創痍。 だが、その瞳に宿る光は、以前よりも遥かに鋭く、そして凪いでいた。



「遅くなってすまない。イーシア」



その男は、指を鳴らして、さも当然かのように魔法を放つ。



「ライトニング=レイン」



空から降り注ぐ雷光。 だがそれは味方を一切巻き込まず、敵の兵士だけを的確に射貫く誘導槍へと化した。



ドガガガガガッ!!



「なッ......一瞬で、前衛が壊滅しただと!?」



私が驚愕する中、レイ殿は冷めた目で敵軍を見渡していた。



◇◇◇◇◇



何とか間に合った...!



こうして、敵の兵士をきちんと見るのは初めてだが、すごく違和感を感じる。 整いすぎているというか、兵士の命を感じられない。



──────まるで、裏から一人が全軍を操っているように。



既視感がある。魔導ギルドの禁書庫で見た、ある技術。 それは、屍や人形を魔力の糸で繋ぎ、遠隔操作で動かすという魔法があった。その魔法を使って、誰かが安全圏から全軍を動かしているのか。



ならば。 個々を倒す必要はない。



「見ているんだろ。敵の将軍さんよ!」



俺は残っている魔力全てを放出する。



攻撃魔法ではない。ただ、この一帯を、呼吸すら困難なほど濃密な魔力で満たす。外からの魔力と、この場の魔力濃度を飽和させ、命令を遮断する。いわばジャミングだ。



魔力切れで意識が飛びかける。 だが、効果はてきめんだった。



ガクッ、ガシャン......。



糸が切れた操り人形のように、1000の兵士たちが次々とその場に崩れ落ちていく。 やはり、予想は当たっていたようだな。



「それじゃあ、あとは任せる、ぞ。イーシア!」



「レイ殿!? レイ殿ーーッ!!」



イーシアが血相を変えて駆け寄ってくるのが見えた。 よかった。これなら、もう大丈夫だ。



さっきの激戦と、魔力切れで限界だった俺は、安堵と共に意識を手放した。



視界がブラックアウトする。 最後に感じたのは、駆け寄ってきた仲間の温かさと、背中の確かな重みだけだった。

第二章『艱難辛苦フォアードロード』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


次の第三章に向けて、充電と準備のため、数日だけ更新をお休みさせていただきます。


次章のタイトルは──第三章『快刀乱麻のブレイブハート』。


鬱屈とした空気をぶち破る、最高に熱い物語を持って帰ってきます。


待っている間に、下にある☆☆☆☆☆から評価ポイントや、ブックマーク登録をいただけると、執筆のエネルギーになります! 第三章も、乞うご期待!

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