26話 ロンベルの街並
その後は凄まじい勢いで事後処理が進んだ。 ギルド職員が総出で慌てふためき、俺は応接室に通され、あれよあれよという間に手続きが終わった。
「き、君は一体何者なんだ……!? いや、今は詮索すまい。君はこの街の救世主だ!」
興奮冷めやらぬギルド長から、異例の待遇を提示された。 いきなり『ゴールドランク』への昇格。上から三番目の、通常なら数年かけて到達する地位だそうだ。 そして、自分じゃ扱いきれないほどの大金が入った革袋を渡された。
「と、とりあえずこれだけあれば十分ですかね?」
「十分すぎる。感謝する」
お金が欲しいとは言ったけど、ここまでとは。 まあ、これでロンベルまでの旅費の心配はなくなった。宿も食事も、一番いいものを用意してやれる。
こんな感じで、自分でもびっくりするくらい順調に物事が進んだ。 ただ一つ、ちょっと気になることとしては──
「......ユキ? 荷物、重くないか?」
「あ、うん。大丈夫。......ありがとう、レイ」
ユキが、俺に対して妙に余所余所しいというか、物理的に距離を取っているように感じることだ。 俺が近づくと、ビクッと肩を震わせたりする。 ......いや、きっとあのスライムの群れを見て疲れているだけだろう。気のせいだったらいいな。
俺とユキはもらった大金で旅の支度を整え、逃げるように騒がしいサークの街を後にした。 旅は再開された。ロンベルへ向けて。
数日の旅路を経て、ロンベルに到着した俺たちは、その街のあまりの荘厳さに言葉を失った。
「……きれい」
ユキがポツリと漏らす。 整備された石畳は塵一つなく、街路樹は計算されたように美しく並んでいる。 驚くべきは街灯だ。柱がなく、魔法の光球がふわりと空中に浮いて、道を行く人々を照らしている。
そして何よりも目を引くのが、街の中央にそびえ立つ巨塔──『音韻魔導塔』だ。 雲を突き抜けんばかりの高さ。その表面には幾何学的な魔法陣が刻まれ、微かにブゥン……という魔力の共鳴音が響いている。
歩いている途中も、その街の歴史と荘厳さが肌に伝わってくる。 これがかつての勇者が残した奇跡の都市……なのか。
「それじゃあ、あの塔に行ってみようか」
俺はユキにそう語り掛け、吸い込まれるように塔の元へと歩き出した。
塔の入り口は、巨大なアーチ状になっていた。 そこに、一人の人物が立っていた。
長い金髪をなびかせ、純白のローブを纏った女性。 周囲の雑踏とは隔絶されたような、凛とした佇まい。 彼女は俺たち──いや、正確には俺の後ろにいるユキを見つけると、優雅な所作で一礼をした。
「お待ちしておりました」
その女性は、透き通るような声で、決定的な言葉を告げた。
「──勇者様」




