23話 魔法の応用
旅の始まりに伴い、俺たちは最初に食べる物を探した。
幸い、この森は恵みに溢れている。果実や動物の痕跡がちらほら確認できた。
そこで、俺は狩猟を開始した。
「……そこだ」
湖で水を飲んでいる鹿に、気配を殺して近づく。
呼吸を整え、指先に魔力を集中させる。狙うは眉間の一点のみ。
「ストーン=バレット」
放たれた岩の弾丸は、音もなく鹿の頭を貫いた。鹿は苦しむ間もなく、その場に崩れ落ちる。
「コイツを解体するから、ユキは果実を取ってきてくれ」
俺はナイフを取り出しながら、ユキにそう指示する。
「わかったよ。じゃあ鹿さんの解体、よろしくね」
ユキは少し顔をしかめて、森の奥へと向かった。
彼はあまり血や内臓を見るのに耐性がない。こういう仕事は、俺がやるべきだ。
テキパキと血抜きをし、可食部を切り分ける。そしてその肉を、今夜食べる用と保存用に分けた。
「じゃあ保存食にしてみるか」
少しの思いつきから、保存用の肉を調理する。肉の中にある水分に注目。その水を霧散させるイメージを強くもつ。
「……ふんっ!」
慎重に魔力を送り込むと、肉からジュワッという音と共に、白い蒸気が猛烈な勢いで噴き出した。
視界が真っ白になるほどの湯気。
次の瞬間には、完璧に水分が抜けきった干し肉が出来上がっていた。
表面は硬く、しかし旨味は凝縮されている。完璧な保存食だ。
「よしっ。これで数ヶ月は持つな」
少し心の中で喜んでいたら、果実を採り終わったユキが帰ってきた。
「レイー!取ってきたよー!って、ええ!?鹿さんがもう干し肉になってる!?これも魔法ってやつなの?」
「まあ、そんなところだ」
驚愕するユキを横目に、干し肉を保存しやすいようにまとめ、カバンへと詰めていく。それに集中していたら、
「なんか僕が知ってるレイじゃないみたい」
ぽつりと零れたその言葉は、風の音にかき消され、俺の耳には届かなかった。
その夜、果実と鹿肉を合わせた簡素な料理を作った。水は魔法で生成し、一応煮沸消毒をしておいた。
「いただきます」
「いただきます!」
そうして、久しぶりにユキと2人でご飯を食べた。
....やっぱりユキと一緒に食べると美味しいな。
2日立つと、鬱蒼とした森を抜けた。視界が一気に開け、整備された街道が見えてくる。
「あ、レイ! 見て、街が見えるよ!」
「ああ。あれが中継地点の街、サークだ」
俺たちは久しぶりの人里に、少し足を早めた。




