22話 旅の始まり
「ん....んん???」
意識が浮上すると同時に、後頭部に伝わる柔らかく、温かい感触。 まぶたを開けると、木漏れ日の逆光の中に、心配そうに覗き込むユキの顔があった。
「あ!起きたんだね。おはよう、レイ」
鈴のような声。土と草の匂いではなく、ユキの優しい匂いが鼻をくすぐる。 俺は何をしてたんだっけか。 ──ああ、そうだ。ルターとの死闘を、乗り越えたんだった。
「ん、ああ。おはよう」
少しかすれた声で応える。 起き上がろうとすると、ユキの服に少しシワが寄っているのが見えた。 もしかして、俺が起きるまでずっと、この体勢でいてくれたのか?
頭を振って、意識を切り替え、ユキにこれからの計画を話し始めた。
「よく聞いてくれ、ユキ。今ユキは、さっきみたいな円卓という組織に狙われている」
ユキはそれを聞いて、見るからに驚いた表情をする。それでも、きちんと最後まで俺の話を聞こうとしてくれていた。
「それで、あのローブの男、ルターを退ける手助けをしてくれた存在がいる。俺たちは、その存在がいるかもしれないロンベルという都市まで旅をしようと思う。」
あの三年間。師匠の背後には、聖剣なる存在がいた。そして、その聖剣の力を使う音韻魔導塔。これがあるのがロンベルなのだ。だから、何か情報が得られるかもしれない。
「そう...なんだ。でも!レイと旅ができるなんて。僕は嬉しいよ!」
ユキの華奢な肩が、恐怖でわずかに震えるのが分かった。 だが、彼はすぐに顔を上げ、俺の目を見て、強がりのような、でも本心の笑顔を見せた。その笑顔を守るために、俺はまだ戦わなければならないな。
その為にも、今回の旅のルートを確認しておこう。
俺はグリモ=メモリアにある世界地図を取り出し、ユキに見せた。
「よし!まずは今回の旅の道順だ。見てくれ」
俺がページを開くと、白紙だった紙面にインクが走り、精巧な地形図が浮かび上がった。 そして、現在位置を示す青い光点が点滅している。
「今いるのがここだな。ロンベルから少し北西にある森だ」
ここが今いる位置だ。修行を付けてもらったあの村に行きたい気持ちもあったが、ユキの安全を優先してロンベルに行くことを重視した。
「すごいね。この本」
ユキが物珍しそうな顔でグリモ=メモリアを眺める。
「ああ。気づいたら、ポーチに入っていたんだ」
下手な嘘で、グリモ=メモリアのことをごまかす。あの3年間は、俺の中で閉まっておかなればならない。それが俺なりのケジメだ。
「レイ。じゃあ早速出発しようよ!善は急げ。でしょ?」
「ああ。そうだな」
こうして、ロンベルへの旅が始まったのであった。
2章、『艱難辛苦のフォアードロード』編よろしくお願いします!




