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百折不撓のアルゴリズム  作者: 一ノ瀬隆
1章 観測始点の交差

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19話 英雄

僕は、ただ見ていることしかできなかった。



目の前で繰り広げられる、レイとローブの男の壮絶な戦い。



レイが出してくれただろうこの岩に隠れながら、僕はその戦いの行く末を見守っていた。



目の前の岩壁に、そっと手を触れる。ひんやりと冷たく、そして何よりも硬い。 外では爆風が吹き荒れているのに、僕の周りだけは痛いほど静かだ。 レイはこんな状況でも、僕のことだけは傷つかないように、完璧に守り抜いているんだ。



レイは見たこともない力と、剣を使って戦っている。余りの速さに見失いそうになる。



一手、また一手と、その戦いは進んでいく。僕は何もできないやるせなさを感じながら、それを見ていた。



そして、レイはあの男に手をかざし、まばゆい光に包まれた。

その光が消えた時に、レイは目や鼻から、血を流して不敵にほほ笑む。あれは、いつも僕を守る為に奮闘する、レイの、あの顔だった。



「これで公平(フェア)だな──────」



そうレイが言うのが聞こえる。でも、見るからにボロボロ。それでも立ち上がる姿に、昔読んでもらった物語に出てくる、英雄の姿を重ねてしまう。



僕の心臓が、激しく高鳴る。胸の奥が、熱くなる。

しかし、その熱が何なのか、僕にはまだわからなかった。いいや、違う。本当はわかっている。



これは「悔しさ」だ。 元居た世界でも、この世界でも、僕はいつもレイの背中ばかり見ていた。 傷つくのはいつもレイで、僕はただ震えているだけ。 ......嫌だ。もう、守られるだけの荷物にはなりたくない。



僕は、ただ見ていることしかできない。……そんなのは、そんなのはッ!もう御免だ!



ローブの男は、レイの攻撃で手負いながらも、力をひしひしと溜めている。

その圧倒的な力の奔流を感じ、僕は恐怖で体が震える。



レイの表情に焦りが浮かぶ。

次の一撃に、この戦いのすべてを賭けていることが僕でも分かった。



「次で、決める.....!」


レイの口から、覚悟を決めた呟きが漏れる。


世界が求める「勇者」なんて知らない。 僕にとっての英雄は、泥だらけになって、血を流して、それでも僕を守ってくれる、レイ……キミだけだ。



その時、僕の心からの叫びが、僕の知らない不思議な力を引き出した。



「負けないで……僕の英雄!」



僕の体から、温かく、眩しい黄金の光が溢れ出す。 それは、レイの青い光とは違う。でも、間違いなくレイを助けるための光だ。

その光は、まるで僕の心からの願いが、この世界に響き渡ったかのようだった。



光は、レイへと向かう。



その瞬間、勇者は再臨した。



それは、僕の祈りが、レイを救うために奇跡を起こした瞬間だった。

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