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魔王が死んだので魔王城をテーマパーク化したら、家族の中では最弱な僕が“魔王役”になった……人間相手には負けないけどね。  作者: 水定ゆう
1章

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8/22

第8話 閉園時間になりました

遊園地感を出したい。

ここで1-1はお終いです。

「ユイガさん、私はこれからどうしたらいいですか?」


 プラシアは漠然とした質問を投げ掛けた。

 困った僕は「うーん」と唸り声を上げてしまう。


「どうもしなくていいよ。ちょっと待ってね」


 僕は板状の魔導具を操作していた。

 タブレットって言う道具で、表示されているのは、魔王城の内部。

 僕は魔王城内部の様子を逐一確認すると、プラシアに言った。


「ジョイ達の姿が無いね。逃げ足は相当早いみたいだ」


 魔王城は広い。もしかすると、ジョイ達が迷子になっている可能性もあった。

 けれど隈なく探してはみたものの、ジョイ達の姿は何処にもない。

 如何やら無事に魔王城を出られたようで、胸を撫でた。


「そうですね。特にジョイさんの逃げ足は速いですよ」

「あはは、天下一品だね」


 ジョイは勇者なんかじゃない。寧ろ烏滸がましい。

 それくらい仲間のことを大切にしていなかった。

 と言うよりも、如何やって魔王城最深部まで辿り着けたのか、そっちの方が気になる。


「でもプラシアは凄いね。ジョイを見捨てないなんて」

「一応、仲間……でしたから」


 プラシアの言い方が過去形になっている。

 まるで今は“仲間”では無いみたいに聞こえる。

 僕は問い掛けることをしない。絶対に野暮だって分かるから。


「ちなみに、勇者パーティーとか言ってたよね?」

「は、はい」

「どういう意味? あんな逃げ腰な冒険者が、勇者には見えないと思うけど」


 僕が勝手に勇者パーティーと呼称しているだけかもしれない。

 それでも、まんざらでは無い表情を浮かべていた。

 僕はプラシアに真相を訊ねると、顔色を悪くする。


「憧れているんですよ、勇者パーティーに」

「そうなんだ。憧れるのはいいことだよ。でもね……」

「言ってあげないでください。必死なんです、ジョイさんは」


 憧れることは決して悪いことじゃない。

 だけど勇者を名乗るには足りない部分が多い。

 その中でも、ジョイには勇者は相応しくない。自称することさえ、烏滸がましい。

 って、魔王役の僕が口を出すなんて、それこそ烏滸がましいよね。あはは。


「はい、プラシア。そんな話は止めよっか」


 僕はパンと手を叩いた。

 気分をスパンと切り返ると、タブレットをスッと指でなぞる。

 操作するのは魔王城の仕掛けで、僕は管理室の壁を開けた。


「な、なんですか、急に壁が動きましたよ!」

「出口までの直通経路を用意したんだ。少しくらいは、歩けるよね?」


 魔王城の中は仕掛けで一杯だ。

 タブレット一つで簡単に操作できてしまうと、普段は公開されていない、裏側の状況まで確認ができる。

 形もパズルのようにバラバラにできて、外したり繋いだりもお手の物。

 管理室から近くの街まで、直通経路を用意することも難しくはなかった。


「壁に入口を作ったから、そのまま真っ直ぐ階段を下りて行けば、自然と街まで戻れるよ」

「えっ、どんな構造ですか!?」

「あはは、それも企業秘密だよ。でもね、これだけは言っておくよ。普段からこんな真似、して上げられる訳じゃないんだ」


 僕は厳しいことを口にする。

 今回は特別で、僕はプラシアを助けてあげようと思っただけ。

 もちろん好意とかじゃない。単純に、仲間に見捨てられたプラシアを可哀そうに思っただけだ。


 だからこれからは“死”と常に隣り合わせであることを思い出して欲しい。

 確かに魔王城はテーマパークだけど、人死にが出ない訳じゃない。

 寧ろ従業員の魔王群の方が生存能力は高いんだ。


「あの、ユイガさん。ここってもしかして、凄いですか?」

「うん、凄いと思うよ」


 漠然とした質問に対して、僕は漠然とした返しをする。

 するとプラシアは呆けてしまうと、管理室の中を見回した。

 ここだけでもプラシアの興味を惹く物はたくさんある。

 だけど企業秘密のものも多いから、あまり見ないで欲しいんだよね。


「あの、他にはどんなものがあるんですか?」

「ダメダメ、教えられないよ」

「むぅー、面白そうですよ」

「面白いとかじゃないよ。あったら便利な物ってだけ……まぁ、偶にゴミもあるけど」


 いやいや、大抵はゴミでしかない。

 実際、成功のためにはそれ以上の失敗が必要。

 ギアッド義兄さんもそう言っていたから、全然間違いじゃないんだけどね、あはは。


「あっ、そうだ。プラシアは今日はもう冒険しないよね?」

「は、はい。足がこの状態なので」


 プラシアは足を捻っている。

 捻挫したのに冒険なんて無理ゲー過ぎる。

 僕はその事実を聞くと、タブレットを操作した。


「ちょっと待ってね。閉園するから」

「閉園ですか?」

「そうだよ。ここはテーマパークだからね。閉園しないと、ずっと冒険者が入って来ちゃうでしょ?」


 あくまでも魔王城はテーマパーク。

 ずっと冒険者の侵入を許す訳がない。

 そんな訳にはいかないからか、僕はマジになって答える。


「それはダンジョンなんですか?」

「テーマパークだよ」

「それはそうなんですけど……あの」


 今、プラシアが余計なことを言おうとした。

 僕はそんな気がすると、流石にこれ以上のマジレスは止めて貰いたい。

 そう思うと、プラシアの手を取る。緊張からかな? 熱が伝わって来るも、僕は笑顔を張り付け、プラシアの背中をソッと押した。


「はい、もう閉園時間だからね。帰って帰って」


 僕はプラシアの背中を押した。

 まだ帰る気が無いみたいだけど、こんな所にいたらダメ。

 プラシアは真っ当な冒険者なんだから、こんなテーマパークで油を売ってる暇は無いんだよ。


「ま、待ってください、ユイガさん。私はまだ!」

「プラシアには用があっても、僕には無いんだよ。じゃあね、プラシア。後で秒に行くか、回復役の人に治して貰ってね」


 僕は壁にできた出入り口に、プラシアを押し込んだ。

 同時に壁が閉じ始めると、プラシアは強制的に魔王城の外に吐き出される。

 きっとこれでよかった筈。僕は勝手にそう思うと、意外に楽しかったと思った。


「うーん、やっぱり誰かと話すのって、面白い!」


 僕はタブレットを操作しながら、椅子に座った。

 まだ温かいのは、きっとプラシアの肌の温もりが残っているから。

 あっ、ヤバい。メチャクチャにキモいこと思ったかも。

 僕は顔が真っ赤になると、発狂したくなった。

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