第50話 僕達も仲間だよ
ユイガ君にとっては、ライザァス達はもう仲間なんですよ。
「うっ……」
ライザァスの攻撃を吸収して、跳ね返し、剣の一撃を高めた。
もはや槍のようで、流石に受け止めることは出来ない。
剣で防御をしても間に合わず、完全に押し負かされると、僕もライザァスも吹き飛んだ。
「はぁはぁはぁはぁ……でも、耐えた」
結果的に最後まで立っていた……っていうか、すぐに受け身を取って置き上がった。
そのおかげか、最終的に勝ったのは僕とプラシアだ。
対してライザァスは地面に横たわっている。
体が痙攣して動かないみたいで、完全に硬直状態。
そのせいか立ち上がることは全く出来ず、3カウントでも、10カウントでも、立ち上がることは無い。つまり、僕達の完全勝利でいい。
「僕とプラシアの勝ちだね!」
「・・・は、はい! やりましたね。ユイガさん!」
「イェイ、ってことだね」
僕は勝利の実感を得ていた。けれどプラシアは微妙な顔だ。
これでよかったのかな? それともまだ反撃の余地があるかもしれないと警戒しているのかな? どっちにしても正しいとは思いつつ、僕は一人で喜んだ。
「はい、ハイタッチ!」
「ハイタッチですか!?」
僕はサッと手のひらを出した。
ライザァスやラインにザイア、魔物達には悪いけれど、勝利の美酒は無いから、せめてアクションだけは大袈裟でもいい。
なのだが、プラシアの表情がほんの少しだけ悪かった。ギコちない表情を見せる。
「えっと、その……私は女性で」
「イェイ!」
パチン! と手のひらを合わせた。
いい音が響き渡ると、プラシアの頬が真っ赤に染まる。
恥ずかしかったのかな? うーん、プラシアの感性が分からなかった。
「ユイガさんとハイタッチ。手を握って貰ったり、私が押し倒しちゃったりしたけど、なんだか“触れている”感じがします」
「いやいや、結局触れるでしょ?」
「そうですけど、ユイガさんはもう少し女性の扱い方を考えた方がいいですよ」
「うーん、配慮しているんだけどな」
もしかして、ハイタッチはスキンシップじゃない?
所謂セクハラって奴なのかな? もしかして、相当ヤバいことをした?
色んな事を考えつつも、僕は頬をポリポリ掻いて分からない顔をする。
「けど……問題はこっちだよね?」
僕はライザァスの方を見た。
体は微かに動いている。魔力も残っているのかも?
流石に僕には分からないけれど、一応生きていた。自分の技を倍返しで喰らったんだ。こうなるのも無理は無くて、鎧の一部が砕けていた。
「「ライザァスサマ!!」」
ラインとザイアは倒れているライザァスに駆け寄る。
自分達も相当体を酷使しているものの、それ以上に信頼するボスの心配をした。
「ライザァスサマ、シッカリシテクダサイ!」
「ライザァスサマ、シナナイデクダサイ、ライザァスサマ!」
ラインとザイアは必死に声を掛け続けた。
ライザァスの体を優しく揺すり、意識を取り戻そうとする。
そんな中、ラインとザイアの標的は僕達に変わった。
「ユルサナイ。ゼッタイニオレタチガコロシテヤル!」
「ソウネ。ワタシタチガカナラズライザァスサマノカタキヲトルワ」
完全に目の敵にされていた。
心外だな。先に割り込んだのはそっちなのに。
僕達は正々堂々、ルールに則って戦ったつもりだけど、気に食わなかったらしい。
多分だけど、僕でも駄々をこねると思う。
それこそ、僕の家族が悪く言われたら尚更で、本気でブチ切れる。
だからラインとザイアが、怒りの感情の矢を僕に向けた理由も分かる。
「うーん、その感情を向ける理由は分かるよ。でもね……」
「「デモデハナイ。ゼッタイニ!!」」
「いや、ライザァスは生きているよ。ほら」
「「エッ?」」
僕に対して怒りの感情を向けるのは仕方が無い。
でも、ラインとザイアに殺される理由は全く無い。
だって、指を指した先をラインとザイアはチラッと見る。
ライザァスは体を起こすと、ラインとザイアを止めようと働き掛けていた。
「心配は要らない。俺は無事だ」
「「ライザァスサマ!!」」
ライザァスは体を起こして、無事を知らせた。
ラインとザイアは歓喜に沸くと、一瞬だけ動きが止まる。
冷静な思考を取り戻すまで時間が掛かると、バッと飛び出した。
「ヨカッタ、ホントウニヨカッタデス」
「ライザァスサマ、ライザァスサマ!」
ラインとザイアはライザァスに寄り掛かった。
兜を被っているので、表情は流石に見えない。
大粒の黒い涙を流すと、ライザァスは兜を撫でた。
「泣くな。騎士に涙は似合わないぞ」
ライザァスはラインとザイアを宥めた。
涙を浮かべているが、ソッと抱き寄せて体に寄せる。
お互いに力が抜けてしまうと、重なり合うような形で、何だか凄い感動モノを見ていた。
「「ハイ!!」」
ラインとザイアはライザァスの言葉を受け取った。
涙を流したけれど、それを何とか堪えようとする。
でも全くダメで、兜から涙が溢れる。
泣き顔を晒させないよう、ライザァスはラインとザイアを抱き寄せた。
これで顔は見えない筈で、そもそも兜越しだから全く見えないけどさ。
「なんだかいい雰囲気だね」
「はい。あの、私達はお邪魔では無いですか?」
「確かにね。本当は三体だけにしたいんだけど……ねっ」
プラシアの言う通り、何となくだがこの場に居ずらくなる。
本当は振り返って、音も無く立ち去るのがカッコいい。
でも、約束は約束。ライザァスに限って無いとは思うけど、反故にされても困る。
「ライザァス。取り込んでいる所悪いけど、僕達の勝ちだよ」
「そうだな。俺達は貴様らに敗北した。どんな最悪でも受け入れよう」
「受け入れる必要は無いよ。僕も勝つのが目的じゃなかったからね」
取り込み中の所悪いのは承知で声を掛けた。
ライザァスの視線が僕に向けられると、兜の向こうに殺気は無い。
相も変わらず警戒されているけれど、身構えた所で僕は何もしない。
そもそも勝つことが目的じゃ無い。あくまでも実力を見せたかっただけだ。
「僕達はライザァスに実力を認めて欲しかっただけだよ」
「実力だと?」
「弱い魔王に従って貰うんだ。それなりの誠意は見せないといけない。だから少しやり過ぎてしまったけど、充分実力は見せた筈だよ。僕は一人では戦えない。人間相手には無双できても、魔物相手にはどうしても劣る。だから、同じ魔物の力も人間の力も全部借りる。借りた上で勝てるかは分からないけど、これが僕の見つけた答え。その方が面白いでしょ?」
結局僕は最弱の魔王。魔物じゃないから、人間相手には勝てる。それでも魔物はそれ以上に強いから相手にならない。
それが分かっているから、僕は弱い魔王でいい。代わりに恥じること無く魔物や人間。他の誰かの力を借りる。その方が僕らしい、僕の見つけた答えで、面白い。
何よりライザァスに証明出来たおかげか、考えが少し柔らかくなる。
「確かに貴様は弱い……か。けれどアレは」
「言ってくれるね。でもそうだよ。アレは僕の仲間の魔王軍全員の能力だよ。ライザァス、君は僕に負けた訳じゃない。僕達に負けたんだ。だからね、ここに勝ち負けは無いんだ」
ライザァスが戦ったのは、僕個人じゃない。
僕の信頼している魔王軍全員を前に、ライザァスは果敢に挑んだ。
ラインとザイア、二人から力を返して貰って戦ったけれど、それで負けたからと言って真にライザァス達が負けたカウントは取らない。
「勝ち負けは無いか。フン、では俺は誰に……」
「誰にも負けてない。だから、さっ!」
僕は手をスッと差し出した。ライザァスは挙動不審な態度を取る。
もちろん魔法も掛かってない。毒とか聖水も付いていない。
ラインとザイアも拍子抜けして、警戒が徐々に薄まると、僕の差し出した手をジッと見た。
「フン、いいだろう。貴様の下に付いてやる」
「「ライザァスサマ!?」」
ライザァスは僕の手を取ってくれた。
提案を受けてくれたみたいで本当によかった。
「あはは」と笑ってしまうと、ラインとザイアは驚いているけど、ライザァスを信じて、それ越しに僕のことを信用した。
「「ウッ……ハイ」」
「ありがとう二人共」
ラインとザイアの手が僕の手に触れる。
ライザァス越しに重なると、多少だけど信じてくれたらしい。
嬉しいな。みんな仲良くしようね。
「それじゃあこれからよろしくね、ライザァス、ライン、ザイア」
「だが勘違いするなよ、いつ俺が寝首を掻くか分からないぞ」
「あはは、怖いな」
ライザァス、ちょっと怖いこと言わないでよ。
僕は笑って誤魔化したけど、正直胸がザワザワする。
でもそんなことにはならないし、ならないように気を付けよう。
気を張るのは嫌なんだけどと、魔王役っぽくないことを思った。
「プラシアもお疲れ様」
「は、はい。無事に終わりましたね」
「うん。みんなのおかげだよ、ありがとう」
プラシアにも感謝を伝えた。
無事に終わったことを一緒に喜び合う。
本当変に大怪我をしなくてよかったと思い、胸を撫で下ろした。
「それじゃあみんなで帰ろうか、僕達の魔王城に」
にこやかな笑みを浮かべて、朗らかな気持ちだった。
多分だけど、これでいいんだよね?
僕は全員を連れて魔王城に戻ると、最高の結果に大満足だった。
ちょーっとだけ疲れちゃったけど、やっぱりみんなで何かするのって楽しかった。
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