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第49話 聖槍が闇を貫くなら

勝利の女神? はどちらに微笑むか。

 僕&プラシアVS完全体ライザァス(ライン&ザイアを添えて)の戦いはいよいよ最終局面。クライマックスに入ると、渾身の一撃を繰り出すフェーズに入っていた。


「プラシア、無茶を承知で頼むんだけど、魔法の展開と収束ってできる?」

「魔法の展開と収束ですか? は、はい。できなくはないですよ」

「マジで!?」


 いや、流石はAランク冒険者さんは違うな。惚れ惚れしちゃうよ。

 魔法の展開って、噂に聞くと難しいらしいよ。

 まぁ、僕の知っている魔王軍のメンバーは使える魔物(ひと)も多いけど。


 それでもアルバートは出来て、キャロンは出来ない。

 違いってあるだけ面白いと思うんだよね。

 今回の場合、凄い方に傾いているけど。


「それじゃあ聖属性の魔法でお願い。決めるよ、プラシア」

「はい!」


 僕は最大限の要望を出してしまった。

 ついつい口が滑っていて、無理をさせちゃっているのは百も承知。

 そんな自分が情けなくなると、弱さに苦悶していても仕方が無い。

 ここは割り切って、プラシアへ攻撃の注意が向かないようにする。


銃形態(ガンモード)。それそれそれっ!」


 恥なんか捨てている。だから剣で勝負するのは諦めた。

 瞬時に銃に変形させると、引き金をバンバン引いて撃ちまくる。


「ふん、この程度か!」


 そうだよね、そりゃそうなるよね。

 分かっていたことだけど、ライザァスには残念だけど届かない。

 簡単に剣で弾かれちゃって、僕の攻撃は露と消える。


「やっぱり強いね、ライザァス。ねぇ、やっぱり魔王軍に入ってくれないかな?」

「くどいな。それなら俺達を倒してみろ」

「おお、いいねいいね。最高だね!」


 ライザァスはやっぱり騎士だった。黒が似合う闇の騎士。

 なのに魔法は凄く面白くて、メチャクチャ光ってる。

 不適合(ミスマッチ)な感じがまた絵になって、何よりも台詞が好き。


 “俺”じゃなくて、“俺達”なのが猛烈に熱い。

 完全に僕達が悪訳だけど、それだけの気概が感じられる。

 何より力を返して動けないラインとザイア。二人を庇うように立ち、剣を振り続ける姿が勇ましかったのは、僕だけかな? いいや、みんなそうだよ。


「ライザァスサマ」

「ムリハナサラナイデクダサイネ」


 ラインとザイアの声援を背中に受けていた。

 微動だにしない。振り返らない。振り返ったら隙になる。

 だから背中で語り、言葉を掛けた。動けない、動くと仲間がやられる。そんな不安と常に背中合わせな状態でも、ライザァスは毅然と振舞う。


「分っている。俺の隣には、常にお前達がいる。だから不安になるな」

「「ライザァスサマ!!」」

「カッコいいなー」


 本当カッコよかった。僕はそれでも負けない。

 恥なんて捨てて引き金を引き続ける。

 単調な動き。単調な作業。明らかに注意を引く動作に、ライザァスは付き合ってくれていたけど、ついに我慢の限界痺れを切らす。


「小細工は止めだ。終わらせるぞ」


 ライザァスは地面を蹴った。幾つもの印が浮かぶ。

 また雷で牽制かな? マントを翻して防御しようとした。

 けれど、ライザァスの動きは全然違った。


「はっ、纏え雷鳴の一撃」


 ライザァスは剣を構えた。空に向かって突き出していた。

 何をするのかな、そう思って凝視すると、ヤバいことをする。

 何と体を印の中に入れるなんて、自殺行為を繰り出す。


「えっ、雷に打たれる気!?」

「そのくらいの覚悟はできている」


 まさか痛みを伴うことを承知する何て……信じられない。

 冗談だと思った僕はドン引きする中で、ライザァス印の中に完全に体を溶かす。

 その状態で剣を掲げると、案の定雷が落ちた。それはそうだよ……って言いたいけど、やっぱり雷は剣にだけ落ちていた。


「雷を剣に纏わせた!」

「次だ」


 ライザァスの作戦は分かってる。雷を剣に集めて、一撃の威力を最高に高める。

 アレを喰らったら洒落にならない。体は木っ端微塵だ。

 僕はプラシアをチラッと見る。魔法の詠唱は終わっているけれど、展開と収束には時間が掛かる。タイミングも計っていて、多分僕の声は聞こえてない。


「コレは、こっちも賭けに出るかな」


 アルバートの能力(チカラ)はもう少しで切れる。

 多分次が最後で、僕は銃を剣に変えた。

 小細工は無し。その気概に応えることにした。プラシアと一緒にね。


「小細工は通じないと悟ったか。賢明な判断だが……」


 ライザァスは雷をその身の受けた。

 動じていないふりをするけれど、相当堪えている。

 これは一発本番かもしれない。僕は別のメダルも用意した。


「勝つのは俺達だ!」


 やっぱりカッコいい。カッコよすぎるんだけど。

 印を幾つも展開して、その全てを通り抜ける。

 その度に威力も速度も増すと、最高の一撃を溜め込んだ。


「来るよ、プラシア」

「……」

「プラシア!?」


 集中力の極致に至っていた。

 完全に声が聞こえていない。

 そんな中、ライザァスは真っ直ぐで、プラシアを攻撃しない。

 普通に僕の方へ突っ込むと、剣を突き出した。


「避けるなら今だぞ……雷は何処までも貴様を追い続けるがな!」


 避けられるなら、避けてもいいって言われた。

 まぁ、避けられないのは分かり切っているんだけどさ。

 大丈夫じゃない。覚悟を決め、メダルを使った。


「「ライザァスサマァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」」


 ラインとザイアの声援が飛ぶ。

 背中に受け、剣戟が増す感じがすると、僕はタジタジ。

 悪者感が否めないけど、まぁやるしかないってことだ。


「いいよ、来て。僕は……逃げられないから」


 僕も剣を構えた。でも怖いな、向かって来るな。

 慄く僕は冷静なふりをすることだけをとにかく頑張る。

 胸を張るなんて出来ないから、ビビらない体を装うと、ライザァスの剣が突き出された。


「プラシア、今だよ!」

「セイント・バリア」


 ライザァスの剣が触れよとした瞬間、僕とプラシアを包み込むように、障壁が展開された。

 それは所謂バリアって奴で、ライザァスの攻撃を無にする。

 全ての衝撃を吸収してしまうと、ライザァスの剣だけがジリジリと音を立てていた。無慈悲……しかもこれだけで終わらない。


「展開から、収束です!」


 セイント・バリアはライザァスの攻撃を受け止め切った。

 雷の効果が完全に消えると、今度は展開から収束へ切り替わる。

 僕は剣をセイント・バリアに触れさせると、収束するエネルギーを溜めた。


「ユイガさん!」

「ありがとう。この魔法、借りるね」

「お願いします」


 僕はプラシアの魔法を借りた。

 構えていた剣の剣身にセイント・バリアが吸収される。

 たちまち虹色の光を放つ剣っていうか、槍に変ると、僕はライザァスに突き出した。


「そらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」


 迫力だけは今は誰よりも勝っている。

 ライザァスは渾身の一撃を防がれ、魔力を相当失っている。

 反動で体もまともに動かなくて、そんな中で繰り出した一突きは最低だった。


「くっ、ここで負ける訳には……」

「いいや、負けて貰うよ。それで魔王軍に入って貰う。だからね」


 剣を構えたけど、それは絶対にしちゃダメだった。

 完全な間違いを訂正すると、メダルの効果が発動する。

 何も真っ当な能力だけが能力じゃない。中には身を守るための能力もあるんだよね。


「エンチャント—ユフ=カウンター!」


 僕の繰り出した突きは、ライザァスが防御することでも反応する。

 今までに溜め込んだエネルギーを全て反転。つまりカウンターしてしまう。

 だから、ライザァスは防御したらダメだった。受けてもダメ。許されるのは躱すことのみ。


「クッ、防ぎ切れ……」

「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」」


 感情が表に出ちゃったよ。でもいいんだ、これで。

 眩い光を伴った一撃が、綺麗なカウンターパンチになる。

 ライザァスは受けちゃった。だから光の槍をモロに喰らって、体が吹き飛んだ。


 ゴトン!


 鎧が地面に打ち付けられた。

 ライザァスは即死ではないけれど、意識を一瞬失ったみたい。

 ラインとザイア、二人が放心する中、光の槍が途切れると、僕とプラシアだけが立っている。

 これって勝ちってことだよね? メチャクチャいい演出を繰り出すと、最後まで立っていたのは、僕とプラシアだけだった。

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