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第47話 貸して貰うだけの祝福

祝福とは特定の要素を持った者に与えられる、神様からのギフト。ただし使いこなせるか否かは、本人次第であり、基本的にはおまけ程度の価値である。

 ライザァスは仕掛けて来た。僕の動きが怪しかったせいだ。

 でも仕方がない。実際、とっても怪しい。

 でもそんなの関係無くて、手にしたメダルをギュッと握った。


「キャスト—ブースト」


 僕はメダルの力を解放した。

 発動(キャスト)して、メダルに込められた力、強化(ブースト)で身体能力を大幅に強化。ライザァスの攻撃を回避すると、剣は空気を切り地面に突き刺さる。


「なにっ!?」


 ライザァスは困惑していた。

 まさかとは思うだろうが。剣戟が躱されてしまったので、キョトンとした顔をする。

 兜で表情は見えないけれど、何となくそんな感じだ。


「危なかった。ヒヤヒヤしたよ」

「貴様、一体なにをした?」


 ライザァスからザックリ二メートルは離れた。

 スッと右奥へ消えると、ライザァスに睨まれる。

 地面に突き刺さった剣を引き抜くと、警戒しているみたいだ。


「なにって、僕も自分の能力を使っただけだよ」

「能力、だと?」

「ユイガさんの能力……えっ、あったんですか!?」


 グサリ! 僕の胸に、プラシアの言葉が突き刺さる。

 そうだよね、そうなんだよね。僕は今の今まで無能を晒してきた。


 残念だけど、最弱の魔王は覆らない。

 でも、僕は魔王の中では最弱であって、全てにおいて無能の最弱じゃない。


 それもその筈、僕は正直一人では強くなれない。

 そんなのは誰だって当たり前のことで、僕の能力はまさしくそれを体現している。

 今のメダルの能力だって、結局の所はそうだ。


「傷付くな~、まぁいいけど。僕にだって、僕にしかできない特別な能力はあるんだよ? まぁ、僕の能力って言うより、祝福って感じかな?」

「祝福、ですか」


 能力(ちから)って言うよりは、祝福(スキル)って言った方がいい。

 これは僕が生まれた時に、神様から与えられた特別な能力。それが祝福。

 この世界には存在しない、特別な能力で、僕のは完全に協調性を重要視したものだった。


「そうだよ。僕の祝福は、自分以外の誰かの能力を分けて貰って、それを自分のもののように使ったり、本人に上乗せや他者に与えることができるんだ」

「……はぁ?」

「分かってないね。いいよ、それじゃあ見せてあげる!」


 説明が難しくて、おまけにややこしい。

 そのせいか、プラシアには全くじゃないけど、上手く伝わらない。

 キョトンとされると、変に相槌を打たれた。


「ライザァス。ここからが勝負だよ。アルバート、借りるよ。エンチャント—アルバート=ブレイブ!」


 追加で別のメダルを取り出した。

 ギュッと握ると、メダルに込められた能力が僕に流れる。

 ポワワァーンって感じになると、何だか強くなったみたいだ。


「口だけで強くなったと思うなよ」

「さて、それはどうかな?」


 ライザァスは剣を構えていた。

 警戒すると、僕を誘っているみたい。

 いいよ、全然誘ってくれて構わない。だって、僕の強さは僕だけのものじゃないから。


「せーのっ!」


 地面を蹴った。とんでもない速さで移動する。

 まるで飛んでいるみたいで、地面を平行に高速移動。

 ライザァスも目にも止まらぬ速さに驚くと、剣を構えるが残念だ。


 ガキ―ン!!!


 剣と剣がぶつかり合った。ライザァスは片手で、僕は両手で握る。

 何故か騎士のライザァスの方が気圧されている。

 ジリリと地面を削って後退すると、僕の方が上だ。


「「ライザァスサマ!?」」


 ラインとザイアはライザァスが押されていることに違和感を覚えた。

 すぐにでも動き、加勢したいのだが全身が痛む。

 プラシアの魔法を喰らい、身動きが取れなくなると、膝を突いてしまった。


「来るな。貴様、その剣技はなんだ」

「これは僕のじゃなくて、アルバートの剣技だよ」


 そう、そういうこと。これは僕の力じゃない。

 僕の体を通して、ライザァスは魔王軍(うち)で最強の剣士と戦っているんだ。

 アルバート、それはライザァスの何十倍も下手したら何百倍も強い元人間の剣士だ。


「なるほど。貴様の祝福とやらは、貴様以外の能力をその身に受けることができるのか」

「基本はね? でもさ、そんな余裕、もう無いよね?」


 ライザァスは完全に押されていた。ライザァスの剣技も確かなもの。でもアルバートには及ばない。

 それもその筈、アルバートの剣技や剣術はあくまでも個人技(ソロプレイ)だ。

 でもライザァスの剣技や剣術は、何処か集団技(チームプレイ)っぽい。多分、元々人間だったんじゃないかな?


「ライザァス、もしかして元は人間だった?」

「!?」

「やっぱりね。ってことは、スケルトンか本格的にゴーストかな?」

「……黙れ」

「ん?」

「黙れ! 貴様に言わる筋合いは無い、詮索は無用だ!」


 ちょっと鎌を掛けてみた。ライザァスは感情的になると、動きが悪くなる。

 鈍い感じかつ乱暴で、振りがただ速いだけだ。

 これなら僕は避けられる。スッと剣を当てて受け流すと、ライザァスの喉元に剣を叩き付ける。


 ガキン!


「そう簡単には、当てさせてくれないよね」


 ライザァスの動きは反射的なものだった。

 結局はアルバートの能力を借りていても、僕が使っているんだ。

 出来ることには限りがあって、ライザァスに受け止められても仕方がない。


「詮索は今の所する気は無いよ。ただ、本領を発揮できていないよね?」

「なんだと……」

「図星だから黙ったんだね。それじゃあ、僕にも勝てないよ!」


 次のメダルを取り出した。別に一度に仕えるメダルは一枚だけじゃない。

 何枚だって重ねられる。疲れるのは僕だけで、体力と精神力がある限り、メダルは重ね掛け出来るんだ。


「キャロン、力借りるよ。ダメ押しの……エンチャント—キャロン=ダンス」


 メダルの能力が僕に力を与えてくれる。

 軽やかに舞い踊る、可憐な少女の魔物。それがキャロンだ。


 僕は地面をポンと蹴った。体が軽い……とかじゃない。

 でも軽やかな動きで空中殺法を繰り出すと、ライザァスの反応を超える。

 剣で受け止めようにも細かく突きが繰り出され、少しずつ削られた。


「凄い、凄いです、ユイガさん」

「うん、応援ありがとう。このまま決めるよ!」


 一度に繰り出す突き攻撃が、ライザァスの剣技と合わない。

 一つ一つを受け止める間もなく、グサリグサリと突き刺さる。

 自慢の黒い鎧がボコボコにされると、ライザァスは疲弊し膝を折る。


「うっ……」

「「ライザァスサマ!?」」


 こんなこと、今まで無かった筈だ。

 アルバートの圧倒的な剣技、キャロンの軽やかな空中殺法。

 相反する二つの能力が同時に襲い掛かり、ライザァスは剣を地面に突き刺して、敗北のニオイに包まれる。


「俺は、ここで……」


 ライザァスは泣き言を言い始めた。

 繊維は喪失気味で、疲弊からまともに動けない。

 それなら僕の勝ちは目前で、剣を振り上げた。


「ライザァス、それじゃあ決めさせて貰うよ!」

「くっ……来るなら、来いっ!」


 ライザァスの体がよろけている。

 相当ダメージを受けているのか、動きが若干ギコちない。

 もしかしなくても勝てる? そう思いたいけど、ライザァスは剣を構えていた。


「ライザァス、無理はしない方がいいよ?」

「黙れ。俺はまだ立っている。それが答えだ!」


 ライザァスはまだ立っていた。本当に騎士型の魔物なんだ。

 何処となく人間味もあるけれど、今はそんなこと言ってられないよ。

 下手したら僕が殺されちゃう。だったら、余裕のない今の内に、勝負を決めるんだ。


「もちろん、ライザァスの闘志が消えていないのは分かっているよ。だからね……それっ!」


 僕のへなちょこな剣技が炸裂する。

 アルバートのおかげで強化された僕の剣術。キャロンのおかげで強化された僕のしなやかさ。どちらも借りものだけど、僕はちょっとは使いこなせているかな?

 圧倒的な力の差があったけれど、それをひっくり返してしまい、振り下ろした剣身はただ空気を切り裂き、大気中の魔力? を切って、ライザァスに振り下ろされた。

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