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第46話 場所を変えようよ

とんでも魔導具はユイガ君のせめてもの抵抗です。

「結局こうなるんだね」

「感心している場合じゃないですよ、ユイガさん」


 僕は非常にダサいことになっていた。

 何たって、プラシアの魔法を盾にして守ってもらってる。

 いや、ライザァスの剣技は迫力があって怖い。おまけに正確無比で、騎士道に重んじていた。


 だから僕の反射神経だと、多分切られていた。

 プラシアが割って入ってくれたおかげで、何とか事なきを得ては……いない。

 ジリジリとプラシアの防御魔法が気圧されると、脚が震えて今にも崩れそうだ。


「フン。女に守られるだけか」

「あはは、ボクは弱いからね」


 ライザァスに言われなくても分かってる。

 でも、男性とか女性とか、そんなの関係ないと思う。

 

 誰かのために動けることが本当の強さ。

 残念だけど、僕は自分で弱いと割り切っているから、そんな無茶は出来ない。

 なので全力で守って貰う。それが僕の戦い方だ。


「呆れたな。そんな魔王に仕える気など無い!」

「だろうね。でも、そんな魔王がいてもいいでしょ?」


 ライザァスは僕に失望しちゃったらしい。

 それもそうで、弱いことを弁えているんだから、ライザァスの精神には反する。

 

 でもそれもいいと思う。僕は僕なりの魔王役を務める。

 あくまでも“役”なんだから、精一杯の結果がこれならそれを武器するだけだ。


「ユイガさん!」

「だからね。僕は僕なりに魔王役を全うするよ。ライザァス、悪いけど諦めるのは嫌なんだ。……場所を変えようか」


 プラシアも限界そうだ。こうしている間にも、ラインとザイアが復帰するかもしれない。

 いつまでも防御魔法を使える訳じゃないなら、せめて有利な場所に移動する。

 そう決めると、鞄の中から四角い結晶体を取り出した。


「(パリィーン!)それっ!」


 僕は床に投げ付けた。パリィーンと割れると、眩しい光が迸る。

 僕達全員を包み込むと、一瞬だけ視界を奪うことに成功。

 かと思いきや、地面に簡易的な魔法陣が描かれ、瞬時に廃屋の外に飛ばされる。



「……うっ、ここは?」

「「タテモノノソト?」ネ」


 ラインとザイアは周囲を見回した。

 キョロキョロと見て回ると、廃屋の外だと気が付く。

 短い距離をテレポートの魔法で瞬間移動したんだ。


「テレポートか。なかなかやるな」

「まぁ、僕の魔法じゃないけどね」


 今のは魔法結晶石。結晶化した石に魔法を付与している。

 粉々に割ることで、瞬間的に魔法が発動する。

 仮に魔法使いじゃなくても、これさえ使えば誰でも簡単に魔法使いになれるんだ。


「ユイガさん?」

「ありがとうプラシア。よく頑張ってくれたね」

「は、はい……」


 プラシアは相当魔法を使ってくれた。頑張っていたんだ。

 魔力も削れているけれど、それでも充分残っている。

 余力だけで僕は負けそうだけど、ここからは少しだけ漢を見せる。


「後は僕にやらせて。できる限りのことはしてみるから」


 そう言うと、ライザァスの前に出た。

 プラシアには休んでもらうことにして、少しだけ後ろに下げる。

 身構えるライザァス。そんなに警戒しなくてもいいのにと、僕の弱さに笑っちゃう。


「ユイガさん、なにをするんですか?」

「決まってるでしょ。ライザァス!」

「ん?」


 僕はライザァスを前に、銃剣を手にした。

 今は剣の状態で、切っ先をライザァスに突き付ける。

 勝負挑む構えを取ると、ニヤッと不敵に笑った。


「僕と勝負してよ。僕が勝ったら、まとめて魔王軍に入ってね」


 ニコッと微笑み返した。無茶苦茶かもしれないけれど、ライザァスは多分これでいい。

 僕が❘一対一タイマンを挑めば、乗って来てくれる筈だ。

 おまけに勝てば、魔王軍に入って貰う。弱い魔王に仕える気が無いなら、弱くない魔王になればいい。


「いいだろう。俺に勝てれば、強さを認めてやる」

「やった!」

「ただし……期待を裏切るなよ」


 ライザァスは思った通り乗ってくれた。

 僕は「よし!」とジェスチャーで思いっきり表現する。

 でも勝てるとは言ってない。さてと、期待されているみたいで釈然としないな。


「期待? そんなの重荷だよ」

「行くぞ」


 ライザァスは地面を蹴った。ドンッ! と鋭い殺意が向かって来る。

 目の前に体が寄ると、黒い鎧が体に押し付けられる。

 重い、苦しい。僕はマントをパサッと払うと、ライザァスの攻撃を受け止めた。


「(ガツン!)……うわぁ、結構来るね」

「なにッ?」


 僕はその場で踏み止まった。

 体が吹き飛んでしまいそうになったけど、何とか堪えたんだ。

 それが気に食わなかったみたいで、ライザァスは訝しんでいるみたい。


「お返しだよ!」


 僕も反撃を繰り出した。真っ向勝負を仕掛けたけど、真っ当に戦うとは言ってない。

 鞄の中からロープを取り出す。ヘビのようにウネウネしていて、モチのようにネトネトしている。これで嫌がらせしてみる。


「えいっ!」

「なんだ、この……うおっ!?」


 ライザァスの兜に巻き付けた。ペタペタとくっ付けると、グルリと蜷局(とぐろ)を巻く。あらゆる隙間に入り込むと、普通なら窒息死する。

 案の定ライザァスも困惑していた。振り解こうとするが、手にロープがくっ付いて、トリモチのように伸びるからなかなか剥がせなかった。


「なんだ、この紐は」

「面白いロープでしょ。ヘビモチって言うんだよ。ちなみに非常食になるからね」

「面白いですね、ユイガさん」

「でしょ。後、こうやって巻き付ければ敵の妨害にも使えます」


 ちょっとした宣伝をして置く。

 今度僕の経営している:結の牙で販売する予定だ。

 ライザァス相手にこれだけ通用すると、ちょっと面白いかもしれない。


「小癪な真似だな」

「そうだよ。僕が真っ当に戦っても、ライザァスには勝てないからね」


 ライザァスはヘビモチに苦戦を強いられていた。

 僕に対して苛立ちを抱くと、腕の自由を取り戻そうとする。

 だけどなかなか取れない。僕も笑って煽ってみると、ライザァスは本気を出す。


「チッ! ふざけるな」


 ブチブチブチブチブチッ! と、ライザァスはヘビモチを引き千切った。

 やっぱりライザァス程の魔物には通用しにくいみたいだ。

 改良が必要かもと思わされると、ライザァスはムカついている。剣を突き付け、僕に振り抜いた。


「(ギュイン!)おお、怖い」

「舐めるなよ。俺の剣を、この程度で止められると思うな」


 剣が振り下ろされると、僕はスッと避けた。

 マントを使って弾き飛ばすと、体勢をソッと立て直す。

 距離を取ると、僕は銃剣を構えた。


「分かってるよ。だから……ねっ!」


 僕だって分かってる。ここまではただのお遊びだ。

 ウォーミングアップは完全に終了だ。

 表情が変わり、キリッとすると、ライザァスを前に能力(ちから)を見せる。


「僕だって余裕は無いんだ。卑怯なんて、言わないよね?」


 雰囲気が変わった……ような気がした。

 満ち溢れる自信は、僕だけの力じゃないから。

 でもいいんだ。だって僕にはこれしかない。

 ライザァスを前に、ベルトに付けたバックルから、メダルをコッソリ取り出す。


「卑怯、だと?」

「うん。これが僕の……僕達の、能力(ちから)だよ。だからね、勝たせて貰うよ!」


 手の中にメダルを握った。

 強く念じると、力を貰った気分になる。

 ううん、気分なんかじゃないよ。これは本当に貰った力で、溢れ出た魔力的な何かに? ライザァスは警戒するが、そんなのもう遅いよ。だって、僕は勝って決めたんだから、諦めないよ。本番はここからで、ライザァスを前に堂々としていた。

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