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第42話 廃屋には純度の高い魔力

ちなみに主人公は魔力を感知できないよ。

ましてや魔力が無いから影響を受けないよ。

何にもわからない人だよ。みんな呆れるよ。

「あっ、見えて来た!」


 僕は指を指した。プラシアも釣られて視線を飛ばす。

 見えて来たのはもちろん目的地の廃屋だ。

 うん、相変わらず不気味な雰囲気を放っていて、凄くいいよね。


「なんだか不気味ですね」

「不気味だからいいんだよ。おどろおどろしくて素敵だよね」


 僕は魔王役としてまるで動じなかった。

 何せ廃屋はボロボロの方がソレっぽい。

 素敵だなと思うけど、プラシアの足が竦んだ。


「なにも感じないんですか、ユイガさん?」

「なにが?」


 プラシアは震えている。訴え掛けていた。杖をマジで杖に使っている。

 全く感じないんだけど。もしかして、この先に何かあるのかな?

 僕は首を捻ってしまうと、そんなに怖い感じがしない。


「廃屋から、とても禍々しい魔力が漂っていますよ」

「そうなんだ」

「どうしてそんなに余裕そうなんですか!?」


 プラシアには魔力が伝わり過ぎて嫌だった。そのせいか、ついムキになってしまった。

 僕に当たられても困るんだけど、仕方がないよね。

 だって本当に分からないから。おかげで、人間にも魔物にも、全然怯まないんだけど、故に最弱ってことで、笑うに笑えなかった。


「あはは、あはは、あはは、まぁまぁまぁまぁ、それは置いておいて、心の準備はできた?」

「できて、ます」

「そっか。できてないんだね。それじゃあ僕は行くね。後で付いて来てよ」


 僕はプラシアの身を案じた。そんなに怖いなら無理をして欲しくない。

 一旦離れた場所に待機して貰うと、善は急げだ。

 とりあえず魔王役として勧誘しに向かうと、プラシアは手を伸ばした。


「ゆ、ユイガさん!? ま、待ってください」


 慌てて僕を追い掛けてくれた。そうだよね。プラシアは追い掛けて来るよね。

 何だか餌で釣ったみたいで気分はよくないけど、まぁこのさいいっか。その方が魔王っぽい。義父さんならこんなことしないと思うけど、僕は弱いからね。これくらい最低なことをしないと誰も付いて来てくれないんだよ。


「プラシア、付いて来てくれるの?」

「ユイガさんを一人にできません。ですが、学ばせてくださいね」

「学ぶものなんて無いよ。それじゃあ入ろっか」


 気が付けば廃屋は目の前。目と鼻の先じゃなくて、手を伸ばせば扉が開く。

 つまり敷地内に足を踏み入れていて、一襲われても仕方がない。

 ここ、魔王城が管理しているんだけどな。退去して貰わないと困るよ。


「待ってください、ユイガさん。この扉、仕掛けがありますよ」

「仕掛け?」

「はい。魔法によって罠が仕掛けられています。無暗に触れれば腕が吹き飛んで……」

「(ギィィィ!)開いたよ」

「ええっ、ま、魔法は!?」


 プラシアの言う通り、扉には魔法が掛けられていた。

 その証拠に、魔法陣が刻み込まれている。魔力の余波も、扉越しに僕の腕を伝う。

 おかげで気が付けたけど、残念だな。僕は普通に触れちゃう。魔力に疎いせいかな? 元々僕が感知していない魔法って、僕にはほとんど効かないんだよね。あはは、情けない。


「うーん、効かなかったかな?」

「効かないんですか!? それじゃあ怪我をされたら私の回復魔法は」

「あ、それはちゃんと効くから安心して。フラグじゃないよ」


 プラシアが心配をすることは無い。僕は僕に都合のいい魔法はちゃんと効くからね。

 でもこれはフラグなんかじゃない。そんなの立てたって仕方がない。

 フラグは全部折って行く。何せフラグがあると厄介ごとになるからだ。


「そんなことよりも、早速覗いてみよっか」


 僕は扉越しに顔を覗かせた。

 とりあえず魔物の影は無いんだけど、入ってもいいのかな?

 ソーッと石ころを投げてみると、とりあえず罠は無い。正々堂々スタイルだ。


「いいね。ますます気に入ったよ」

「ユイガさん、不謹慎ですよ」

「ごめんね。(さが)が出ちゃったみたい。それじゃあ、えいっ!」

「やっ! ……なにも起きませんね」


 意を決して飛び込んだ。……けど何も起きなかった。

 先制攻撃の危険性はあったけど、幸いなことに回避成功。

 おまけに罠とか視線とかも無くて、もしかして逃げられちゃったのかなって不安になる。


「とりあえず、魔物の姿が無いか確認してみよっか」


 僕は探知機を取り出した、一応魔力の反応はまだある。

 寧ろより一層濃くなっているから、確実にここに潜んでいる。

 根城にされても困るんだよね。城じゃなくて一軒家。しかも廃屋だけど。


「うん、ここにいるみたいだね。プラシア、どっちがいい?」

「と、いいますと?」

「えっとね……」


 僕は部屋の中を見回した。とりあえず入って早々リビングが待っている。

 天井も高い。階段も露出している。全体的にボロくて、虫とか凄い。

 クモの巣も張ってある。おまけに色々脆い。ここで戦うのは絶対に得策じゃなくて、一旦魔物を探すしかない。


「一緒に魔物を探すor二手に分かれて効率を重視する。どっちがいい?」

「もちろん、一緒がいいです」

「そっか。もちろん?」

「ほえっ!?」


 プラシアの頬が真っ赤になっていた。リンゴみたいで美味しそう。

 だけど緊張しているのかな? それともマズいことでも言ったのかな?

 後者だとは思うけど、何だか可愛い。僕は不意にニコッと笑った。


「いいよ。それじゃあ一緒に探してみよっか」

「は、はい! よかったです」


 プラシアはホッと胸を撫で下ろした。

 気持ちが昂っているみたいで、熱を帯びている。

 本当何があったのかな? 調子が悪いなら休んでいいのに。


(とは言えだね……)


 二人で一緒に行くとは言っても、一体何処に潜んでいるのだろうか?

 僕はチラチラ感じる魔力じゃない何かを受けた。

 これが何か分からないのが、僕の欠点なんだけどさ。


(ここにいる魔物はかなりの強敵だと思うけど、大丈夫かな?)


 色々心配はあった。でも多分大丈夫。

 会話が出来るからこれ以上の奇襲は無い。


(でも引き返す選択肢は無いかな)


 何度も言うように、引き返す選択肢は無かった。

 ここまで来て逃げ腰だと、勧誘所の騒ぎじゃない。


「ふぅ」

「ユイガさん?」

「なんでもないよ。プラシアも、油断しないでね」

「は、はい!」


 気を引き締め直した。呼吸を整え続けても仕方がない。

 まともに魔物と戦って、僕が勝てる見込みは無い。

 残念な事実を受け入れつつも、プラシアを連れて魔物を探した。

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