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第41話 怪しい廃屋

本当はお城にしたかったけどミスりました。

「これからどうしよう?」


 ここからは正直計画外(ノープラン)だ。

 何せ騎士型の魔物ともなれば、相当強いのは確定。

 念入りな用意周到さが求められるけど、問題はそれ以前にあった。


「凄い魔力ですね。これが騎士型の魔物特有のものでしょうか?」

「凄いね、プラシア。分かるんだ!」


 プラシアは流石の実力者だ。

 騎士型の魔物の魔力を、すぐさま感じ取ったみたい。


「は、はい。って、ユイガさんはこの魔力を感じませんか?」

「うん、分からないよ!」


 ここは堂々と、そしてハッキリと伝えた。

 残念ながら、僕には微妙な魔力の変化は分からない。

 それ以前に、魔力の強弱を掴むことさえ出来なかった。


「いや、凄いね。プラシアが一緒にいてくれて助かるよ」

「あ、ありがとうございます。ですがユイガさん、魔力が分からないのに、どうやって魔力を辿るんですか?」


 良い質問だよ、プラシア。確かに僕は、魔王役の器が足りていない。

 普通に魔力を辿れないと、魔物の背中を追い掛けることは出来ない。

 何故ならば、魔物の持つ痕跡は、大抵が魔力に由来するからだ。


 それこそ、スライムのように這った跡に粘液を残してくれたり、ゴブリンやオーガのように、足跡を残してくれたらありがたい。

 でも、その痕跡さえ隠してしまう魔物も当然居るんだよ。

 それが本当に厄介で、僕も手を焼いちゃう。


「確かに、魔力を追うのが確実だよね」

「はい。ですので……」

「もちろんコレを使うよ?」


 僕は鞄の中からアイテムを取り出す。

 ギアッド義兄さんに作って貰った、魔物を探知するための特別な探知機(レーダー)だ。


「魔物探知機」

「魔物探知機?」


 プラシアは聞いたことも見たこともなかった。

 何せギアッド義兄さん手製のアイテムで、僕しか持っていない。

 っていうより、僕みたいな雑魚(ざこ)じゃないと使えないんだよね、コレ。そう言う仕様になっているから、プラシアが持っても反応しない。


「これはね、特定の魔物の魔力を探知できるんだよ」

「ええっ!?」

「一括りに魔物と言っても、個体によって識別できるんだ。生物で言う所のDNAみたいなものだよ」

「DNA?」


 あまり聞かない専門用語を口にしてしまった。

 そのせいか、ポカンとしているプラシアの顔が面白い。

 僕はそんなプラシアを前にして、ギアッド義兄さんが作ってくれた探知機を、自慢気に披露した。これくらいしか見栄を張れないんだから、お願い、許して。


「えーっと、ちょっと待ってね。まずはこの辺りに流れる最も強い魔物の魔力を読み取って……」


 探知機のスイッチを押した。まずは無数に飛び交う魔力を選別。

 最も強い魔力を読み取り、探知機に記録させる。

 それを前面のガラス板に表示させるんだけど、上手く反応するかな?


「最近は使っていなかったから、動くかな?」

「動かなかったらどうするんですか?」

「その時は……あはは」


 僕は笑って誤魔化した。正直それだけはやめて欲しい。

 残念と言うか、何というか、呆れちゃうくらい何も出来ない。

 人間相手ならまだしも、魔物に隠れられたらお終いなんだよね。


「笑いごとですか!?」

「笑い事じゃないけど、笑って済ませるしか無いでしょ? ってことで、お願いします!」


 僕は探知機を握ったまま、本気で祈った。

 するとピコン! と軽快な音を立てる。

 この音が鳴るってことは、何か見つけたってことだ。

 期待が裏切られなくてよかったと思い、表示を確認する。


「来たっ! 来たよ、プラシア」

「本当ですか?」

「うん。この点がそうだよ」


 探知には確かに点が表示されていた。

 方角を読み取ると、地図と確認する。

 タブレットを持ち出しては来たけど、照らし合わせてみる。


「この方角だけど、確か廃屋があったよね?」

「廃屋ですか?」

「うん。昔、シャベル義兄さんと一緒に肝試しに行ったことがあるんだけど、もしかしてここを根城にしてるのかな?」


 地図と照らし合わせた結果、僕はこの先にある建物を知っている。

 所謂廃屋で、もう使われていない。

 今は魔王城が管理しているんだけど、昔、一回だけシャベル義兄さんと肝試しに言ったな。二年前だけど……まぁいっか。


「それじゃあ行ってみようか」

「本当に行くんですか!?」

「行くよー。もちろん行く。行かないと、話にならないでしょ?」


 別に僕は見回りに行くわけじゃない。

 普通に勧誘死体から足を運ぶんだ。

 それなのにここで退き返す選択肢はない。


 もしかして、心の準備が出来ていないのかな?

 ごめんね、プラシア。今は時間との勝負。

 もしかすると、冒険者が依頼を受けて調査に来ちゃうかもしれない。


 そうなったら手遅れ。ってことは無いけど、バッティングしちゃう。

 出来るだけ、冒険者と魔物が出遭うのは避ける方針で行きたい。

 だって面倒なんだもん。説明とか怠いからね。


「ってことで、行くよプラシア」

「わ、分かりました」


 僕はプラシアを連れて廃屋に向かった。

 とりあえずこの先にあるのは分かり切っている。

 でもプラシアの反応を見るに何かありそうだ。


「もしかして、嫌な魔力を感じたとか?」

「は、はい……」


 やっぱりそうだった。プラシアは感じちゃっているんだ。

 別に変な意味じゃないよ? 変な意味じゃないけど、感覚が研ぎ澄まされている。

 そのせいか僕には分からないけど、プラシアの足が気持ち重かった。


「ちなみにどんな魔力?」

「こう、剣のように鋭い魔力と、全身を走る雷の気配と言いますか……」

「やけに具体的だね」


 プラシアが感じた魔力の波動。あまりにも具体的過ぎる。

 剣のように鋭い……騎士型だから、剣を持っているのかな?

 雷のような気配……魔力の属性かもしれない。

 あくまでもイメージから導き出されたものだろうけど、プラシアを震え上がらせる。


(でも、それだけの存在感を放つってことは、よっぽど強い魔物なのかも?)


 ここから廃屋まではかなりの距離がある。

 縄張りを主張するように、強い魔力を放っているらしい。

 僕には全く分からないけれど、相手は相当な切れ者だ。


「どうするんです、ユイガさん?」

「いや、行くよ」

「行くんですね」


 プラシアは目を伏せていた。本当は行きたくない。

 冒険者ではなくなったので、危険に果敢に飛び込むのは違う。

 それでも僕にはいく理由がある。ここで逃すのは惜しい。


「恐れることも大事だけど、それだけだと、魔物達を従える魔王にはなれないよ。まぁ、僕はただの魔王役だけどね」


 魔王だったら魔王らしく、どんな相手にも堂々とした立ち回りを見せる。

 それが威厳であり敬意であると、何となく言ってみた。


 ちなみに僕にはそんな気は一つも無い。

 あるのはただ一つ、魔王軍の補強。

 即戦力で強い魔物が居て欲しいから、それっぽいことを言って誤魔化した。


「ユイガさん……カッコいいですね」

「カッコいいかな?」

「はい。ユイガさんの振る舞いはまさしく魔王です」

「あはは、ありがとう」


 プラシアは大袈裟に勘違いしてしまった。

 僕はそんなつもりは一切無いのに勘弁してほしい。

 一体何処を学ぶことがあるのか未だに疑問視する中、プラシアも少しだけ足が軽くなり、前へと進めた。その行動力だけあれば今はいい、そう思わされた。


(とは言えだね……)


 二人で一緒に行くとは言っても、一体何処に潜んでいるのだろうか?

 僕はチラチラ感じる魔力じゃない何かを受けた。

 これが何か分からないのが、僕の欠点なんだけどさ。


(ここにいる魔物はかなりの強敵だと思うけど、大丈夫かな?)


 色々心配はあった。でも多分大丈夫。

 会話が出来るからこれ以上の奇襲は無い。


(でも引き返す選択肢は無いかな)


 何度も言うように、引き返す選択肢は無かった。

 ここまで来て逃げ腰だと、勧誘所の騒ぎじゃない。


「ふぅ」

「ユイガさん?」

「なんでもないよ。プラシアも、油断しないでね」

「は、はい!」


 気を引き締め直した。呼吸を整え続けても仕方がない。

 まともに魔物と戦って、僕が勝てる見込みは無い。

 残念な事実を受け入れつつも、プラシアを連れて魔物を探した。

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