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第35話 鬼気迫るジョイ

鬼気迫ると危機が迫るを掛けました。

「フィー、今の悲鳴を聞いたか!?」

「うん。聞こえたよ。アレって、ジョイ君のだよね?」

「ったく、一体今度はなにをしやがったんだ?」


 ミュジョワとフィーは走っていた。

 知らない森の中を駆け抜けると、とにかく奥へと向かう。

 ジョイと分かれ、別行動を取っていたのが裏目に出た。


 これも全てはジョイの独断。パーティー故に、一人のミスは全員のミス。

 そのせいか、信頼と連携が何よりも重要なのだ。


 だからだろうか? ミュジョワは悪態が止まらない。

 それでもフィーは冷静で、おっとりしている。

 そんなフィーの表情には鬼気迫るものがあった。


「でもアレは悲鳴だったよ?」

「そうだな。一応警戒しておくか」


 フィーが聞いたのは確実に悲鳴だった。

 何かあったのは確定だ。そのためミュジョワとフィーは武器を手にする。

 最悪の状況に備えると、急に全身を悍ましい物が駆けた。


「……うっ!?」

「な、なに、この……うえっ!」


 ミュジョワとフィーは口元に手を当てた。

 近くには何も居ないのだが、何故か森の奥へと踏み入ると、気持ちが悪くなる。

 足がフラ付き、気分を害される。それもその筈、邪悪な魔力が漂っていた。


「この魔力、なんだ?」

「今までに感じたことないよ。……うえっ!」


 ミュジョワとフィーは膝を突いた。

 それだけ濃い魔力が漂っており、体が受け付けない。

 魔力耐性が成長していないのもあるが、それでも別格だった。


「もしかして、この先にジョイ君が?」

「ってことはよ、ジョイの奴、ヤバいんじゃないか?」


 ミュジョワとフィーは分かる。

 この魔力は相当ヤバい。自分達では決して勝てない。

 恐らくは即死だろうが、ジョイの悲鳴はこの先から聞こえた。


 と言うことは、ジョイのランクでは歯が立たない。

 間違いなく死を体験している筈で、急がないと本当にマズい。

 既に死んでいるかもしれないが、まだ助かる見込みもある。

 それもギリギリ、憶測の範疇で、正直助けに行くのは得策ではない。


「どうするの、ミュジョワ君?」

「……本当は逃げ出したいな」


 フィーはミュジョワに訊ねる。

 すると正直な気持ちを吐露した。

 恐怖を感じているのは間違いなく、逃げ出したい気持ちで一杯だ。


「けど、逃げたらジョイに笑われるな」


 ジョイにあんなことを言ってしまった手前だ。

 ここで逃げ出すようなことをする訳にはいかない。

 フィーも当事者なので、ここは退くに退けなかった。


「よし、行くぞ」

「う、うん!」


 ジョイを助けに向かうミュジョワとフィー。

 恐怖心を感じてしまい、折れそうになった心を奮い立たせる。

 まさしく冒険者。未知へと突き進むべく、その歩みを止めなかった。



「うっ、クソッ……どれだけ強い魔物なんだ」

「もしかして、魔王軍かな?」

「魔王軍だって!?」


 この森はディアレイから離れてはいるが近郊だ。

 そのため魔王城も近くにあるので、油断ならない。


 ミュジョワとフィーは一度だけ、魔王城に挑戦したことがある。

 その際、仲間を数人負傷させてしまった。

 あれ以来、恐怖からか、魔王城には近付いていない。


「魔王軍か……今の俺達だと、相手にもならないな」

「ううん。ディアレイの冒険者が総出になっても……」

「だろうな。魔王軍の下っ端にも勝てないんだぞ。幹部なんて……考えただけで吐きそうだ」


 魔王軍は冒険者の間では恐ろしい存在だ。

 忘れがちではあるが、魔王城はディアレイから近い。

 それでも丸三日は掛かる距離で、魔物達の進軍速度なら、それさえ超越しかねない。


 そうなれば一巻の終わりだ。

 ディアレイは成す術なく消滅してしまうだろう。

 噂では本物の勇者も英雄も敵わないとされていて、一般冒険者が束になった所で勝ち目は薄い。今まで何の動きも無かったのが、恐怖でしかなかった。


「あー、考えるだけで無駄だ。フィー、もう少し行けるか?」

「うん、大丈夫だよ」

「それじゃあ早くジョイを回収して……ん!?」


 ミュジョワは何かを見つけた。

 木の幹にもたれ掛かっている男性の姿。

 近くには剣が折られており、戦った後だろう。


 それにしては弱っている。

 体がピクリとも動いていない。

 最悪の想定をしつつも、ミュジョワとフィーは駈け寄った。


「おい大丈夫、ジョイ!」

「ジョイ君、シッカリしてよ」


 見つけたのはジョイだった。如何やらそうとダメージを負っているらしい。

 見れば防具を破壊されていて、特に胸の辺りが酷い。

 皮膚の表面を切られ、血が出ているものの、幸い心臓までは到達していない。


 ……のだが、問題はそこではなかった。

 口から血を吐き出しており、地面に撒かれている。

 どのような攻撃を受けたのかは分からないが、フィーの見立てでは、肺が破裂していた。


「ミュジョワ君、ジョイ君の肺が破裂してる!」

「肺が破裂!? なにが起きたんだよ」

「そんなに時間は経っていないみたい。すぐに祝詞を掛けるね」

「ああ、頼む」


 フィーは手にしている杖を構えた。

 魔力を送り、同時に心を落ち着かせる。

 祝福を貸してくれる神様を想うと、フィーは祝詞をあげた。


「迷える愛し子達を見守りし、慈悲深き(しゅ)よ。傷付き倒れしかの者に、癒しの祝福を与え給え—癒しの祝詞(ひかり)


 フィーが祝詞をあげると、優しく手淡い光がジョイを包む。

 表面上見える傷口は限りなく浅い。

 それでも苦しんでいるのは、内臓の方にダメージがあるからだ。


 果たしてこれでどれだけ効果があるだろうか?

 気休め程度で済むことは無い。祝詞は祈り手の謙信さが物を言う。

 フィーは充分見合っていて、ジョイを助けようとした。


 その想いが届いたのか、ジョイは体を揺すった。

 薄っすらとだが、瞼が開いた。

 微かな光が、ジョイの意識を取り戻させる。


「ううっ……」

「ジョイ君!?」


 瞼を開けたことを、フィーは大変喜んだ。

 幾らジョイが勇者になれない、勇者自称者だとしてもだ。

 仲間であることは変わらないので、目を覚ましたことに価値がある。


「化物が……」

「化物? 一体なにがいたんだ。ジョイ、お前はなにに襲われたんだ!」


 ミュジョワはジョイの言葉を聞き取った。

 相当弱ってはいるが、何とか言葉を発する。

 情報を伝達することは、冒険者にとって、非常に重要な行動だ。


「化物? 一体なんだ。どんな魔物だったんだ」

「き……し……(ブハッ!)」


 ジョイの口から血が溢れた。

 大量に吐き出すと、せっかく塞がり始めた肺が開く。

 突然のことにミュジョワとフィーは動揺する。


「騎士? お、おい、ジョイ!」

「ミュジョワ君。これ以上はダメだよ」

「そうか……騎士系、そんな魔物がどうしてここに?」


 ミュジョワはCランク冒険者だ。

 それだけ経験も積んで来たのだが、ディアレイ周辺の草原や森では、騎士系魔物を確認してはいない。


 ダンジョンが作り出したイレギュラーな魔物だろうか?

 そう考えると、相当危険に違いない。

 血を吐き出したジョイを思い、即座に行動に移る。


「フィー」

「うん。急いで街に戻って知らせないと」

「だな。ジョイ、すぐに戻るぞ」


 ミュジョワとフィーは、ジョイを連れ、いち早く森を後にする。

 もしかすると、ジョイを襲った魔物が、近くで息を潜めているかもしれない。

 そんな恐怖に煽られながらも、迷いの無い動きを見せた。


 幸い、魔物の姿は無かった。

 小型の魔物とも接敵することは無く、何とか森を抜け出す。


 その脚は急ぎ、ディアレイへと向かった。

 フィーの祝詞が効いたとはいえ、ジョイが一刻を争う事態なのは言うまでもない。


「持てよ、ジョイ」


 ミュジョワはジョイを背負い、ディアレイの病院に向かった。

 少しでも効果的な治療を受けさせるためだ。


「私は冒険者ギルドに事情を伝えて来るね」

「ああ、頼んだぞ、フィー」

「任せて」


 フィーは冒険者ギルドへと走った。

 ジョイが傷付いたこと自体は、さほど珍しくもない。

 それでも、ジョイをここまで痛めつけた魔物であり、ミュジョワとフィーに恐怖心を募らせた存在だ。並みの魔物ではない。


 その事実を冒険者ギルドに伝える必要がある。

 今のディアレイの戦力で勝てるかどうかは正直怪しい。

 それでも情報を伝達することしか敵わないのが歯がゆい所だ。


 一体何が起きているのか。

 流石に当事者ではないので分からない。

 得体のしれない恐怖が、ディアレイ近郊に現れたことを、冒険者は警戒するしかなかった。

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