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第33話 勇者の前提条件

いよいよ1章最終に入りました。

ここまで付いてきてくれてありがとうございます。

「クソッ、なんで俺がこんなことを……」


 その日、ジョイ達はとあるダンジョンに来ていた。

 ディアレイから離れた森の中。

 ここにやって来たのは、珍しい野草の採取だった。


「仕方がないだろ? ギルドマスターに言われたんだから」

「うん。この間、ジョイ君が勝手にした決闘分だって」


 ジョイの新たな仲間達。

 Cランク冒険者のミュジョワとDランク冒険者のフィー。

 二人もジョイに巻き込まれる形で、同じように野草を採取していた。


 まさに貧乏くじを引かされている。

 それだけミュジョワとフィーも、プラシア並みに優しい。

 お人好しのせいか、面倒な役回りを押し付けられることが、度々あったのだ。


「クソッ、一体誰のせいで……」

「「ジョイのせいだろ」ジョイ君のせいだよ」


 全てはジョイと言う、自称勇者のせいだ。

 たった一人の責任の筈が、連帯責任になってしまう。

 パーティーの恐ろしい部分だったが、ジョイはまるで反省していない。


「はっ!? 勇者の俺に楯突いて来たんだぞ!」

「勇者って……勇者は一般人に笑われても、変に気にしないだろ?」

「うっ……」


 ミュジョワに痛い所を突かれたジョイ。

 何も言い返せないのは、この間、ユイガに同じことを言われたから。

 それが引っ掛かってしまうと、無性に腹が立つ。


「ふざけんなよ、ミュジョワ!」

「ふざけているのはジョイ君の方だよ」

「フィーまで!? な、なんだよ、俺が悪いのか?」


 ジョイは相変らずだった。

 自分が悪いとは一つも考えていない。

 呑気というか何というか、本当に如何しようもなかった。


「はぁ。ダメだな」

「うん、ダメだね」


 憐れまれてしまうジョイ。勇者の道は果てしなく遠い。

 溜息まで付かれてしまう始末で、ムカついて仕方がない。

 ジョイの性格だ。キレてもおかしくはなかった。


「なんだその態度!? 俺は勇者だぞ、勇者に向かってその態度は……」

「いい加減、弁えろよ、ジョイ」

「そうだよ。ジョイ君は勇者の器じゃないよ」


 ついに本当のことを言われてしまった。

 ジョイは勇者にはなれない。勇者になる器ではない。

 今のジョイが勇者になってしまえば、それこそ暴君の誕生。世界の終わりで、暗殺必至だ。


 とはいえ、その必要がないくらい、ジョイは弱かった。

 何せ冒険者ランクは最底辺。

 まさかのEランク。格下も格下。ただ威張っているだけの奴だった。


「う、器じゃないだと!? ふざけんなよなぁ!」

「ふざけてないない。ジョイは勇者じゃないって」

「そうだよ。今のジョイ君じゃ、この間ジョイ君と決闘をしたカッコいい人に及ばないでしょ?」


 あまりにも抽象的だったが、カッコいい人とはユイガのことだ。

 ユイガは確かにカッコよかったし、強かった。

 それこそジョイに持っていないものを全て持っている。


 プラシアもユイガに惹かれていた。

 その理由は別にカッコいいからではないのだが、少なくともジョイには無理だ。

 実際、見捨てられ返されたのも容易に納得出来る。

 ハッキリ言って、ジョイはダメだ。ダメダメのダメ、ディアレイの冒険者でも底辺付近だった。そう、努力というより性格が終わっていた。


「アイツのことは口にするんじゃねぇ。次言ったらぶっ殺すぞ!」

「えっ、私の方が強いよ? ぶっ殺され返されちゃうよ?」

「なっ!? ……それは、まぁ、否定できないな」


 フィーは神官職に就いている。

 そのおかげか、プラシアにはとても及ばないが、回復魔法に心得がある。

 これは神様から得た祝福だ。


 それでもフィーは一応鍛えている。

 手にしている杖を使えば、普通に打撃武器になる。

 素手でもフィーの方が強いくらいには、ジョイは弱かった。


「それにジョイ、そんな口の悪さだと、永遠に勇者にはなれないぞ?」

「うるせぇ、ミュジョワ! お前を先に殺してやる」

「いや、俺の方が腕っ節もなにも強いだろ?」

「がっ!?」


 またしてもジョイは墓穴を掘った。

 ミュジョワはパーティーの攻撃役だ。

 武器は剣で、盾も装備している。一応魔法も使えるが、それでも得意ではない。


 正直お荷物と化しているジョイを世話するだけで一苦労。

 それがパーティーの現状で、力関係は圧倒的。

 ジョイではミュジョワに傷一つ付けることが出来ない。それ程までにランク以前の人柄の問題で、ジョイは劣っていた。


「……どいつもこいつも、俺を勇者だと認めねぇ」

「「うん、勇者じゃないからな」ね」


 自称勇者のジョイはその思い込みだけは一級品だ。

 Aランクを跳び越え、Sランクにも匹敵している。


 けれど問題は実力が伴っていないこと。

 とは言えそれは問題ではなく、最大の壁は、ジョイの心情だ。


 誰だって、心の中に勇者があれば、人は勇者になれる。

 逆に人でなくても、信じるものがあれば、それは自ずと力になる。

 人でもそうでなくても、誰だって勇者になれる。魔王にだってなれる。

 それを忘れてしまっている所か、捨ててしまっているジョイには、難しい話だった。


「勇者じゃないだって……冗談じゃねぇ! 俺は絶対に勇者になるんだよ」

「はぁ。ジョイはどうして勇者に固執するんだ?」

「そうだよ、ジョイ君。英雄思想を持っているなら、別に勇者じゃなくてもいいよね?」


 何故ジョイが勇者の称号に固執しているのか。

 ミュジョワとフィーはジョイ本人に訊ねた。

 以前口にしていたが、ジョイが勇者になりたい理由。

 それはあまりにも子供だった。


「そんなの決まってんだろ。俺は田舎の出で、このままじゃ舐められっぱなしだ。だったら俺が勇者になればいい。才能もある人望もある……」

「「才能も人望も無いけど?」」

「うるせぇよ! とにかく俺が勇者になれば、誰もが認めるに決まってんだろ。俺は俺であるためにな、俺が一番偉くなってやるために、勇者になるんだよ!」


 ジョイは勇者になりたい。その理由はごく単純だ。

 単に舐められたくないだけ。別にそれでもいいのだが、才能も人望も欠けている。

 おまけに勇者の定義から完全に掛け離れていて、私利私欲の面が強い。

 それだとジョイは勇者には届かない。完全に堕ちるだけだ。


「ジョイ、それは無理があるだろ」

「なんでだよ、ミュジョワ?」

「勇者は勇気がある存在。つまり、どんな最悪な状況でも、己の勇気を奮い立たせて立ち向かう。そんな他者の羨望を受けなくても、がむしゃらに行動できる存在のことだ」

「……だからなんだよ」


 ジョイの雲行きが怪しくなっていた。

 実際、ミュジョワの言う勇者像は、一つの定義でしかない。


 それでも絶対の部分がある。

 それは勇者が英雄思想の枠組みから少し外れている点だ。


 勇者は英雄ではない。

 英雄とは武勇や知略により、偉大な功績を成し遂げた者。

 それとは異なり勇者とは大前提“勇気”を持っていることだ。

 どんな状況でも決して諦めない。勇気を奮い立たせて立ち向かえることが、勇者の条件の一つだが、そこに才能が噛んでいても構わない……のだが、ジョイには前提条件が欠けていたのだ。


「ジョイ、仲間を見捨てるような奴に、勇気があると思うのか?」

「!?」

「そうだよジョイ君。ジョイ君は……」

「うるせぇ! うるせぇうるせぇうるせぇうるせぇ!!!」


 ジョイは痛い所を突かれて反発するしかない。

 その場で足踏みして地団駄を踏むと、奥歯を強く噛んだ。

 本当のこと、プラシアを置いて逃げ、仲間からも見捨てられた。

 そんなジョイに勇者を語る資格はない。それが分かっているからこそ、ジョイは勇者になれなかった。

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