第30話 ギルドマスターに目を付けられた
ジョイは腹を立ててしまう。
「く、クソがっ」
ジョイは地面に倒れていた。
体がピクピク痙攣している状態で、立ち上がれない。
指先が震え、虫のように仰向けで地面を跳ねると、仲間達は見下ろした。
「ドンマイだ、ジョイ」
「うん。相手が悪かったよね」
仲間に憐れまれていた。
それが悔しくて悔しくてたまらない。
奥歯を噛み、血涙を流すと、魔王にも負け、一般人にも負けた。
自信を失ってしまうのも無理はない。
「それにしても、強かったよね」
「だよな。しかもあのAランク冒険者のプラシアさんも一緒だったぜ? 何者だ、彼?」
「スカウトしたいよね?」
「だよな。冒険者、やってないのかな?」
ジョイを目の前にしてユイガの話だ。
完全に立つ瀬が無くなったジョイは悔しさの余り死にたくない。
ジョイへの恨みを連ねていくと、ドン! と地面を叩いた。
「クソ野郎が!」
如何して優者への道を、英雄になるための栄光を悉く踏みにじるのか。
弱い自分を認めることが出来ないジョイはとにかく悩む。
実力不足なんて知らない。自分は強い、恵まれている。そう抱くのは決して悪いことではないが、ジョイにとっては大問題だった。
「どいつもこいつも、俺のことをバカにしやがって。ふざけんなよ、みんな死んじまえばいいんだよなっ、アアッ“!」
ジョイは通行人の目の前で最低な言葉を口にした。
完全に手遅れな状態で、パーティーメンバーは困り顔だ。
ジョイの性格は難がある。止めようにも痛い目を見ても懲りない。
本当に如何しようもなく腐っていた。
「ジョイ、それは言い過ぎだよ」
「そうだよ。そんなこと言っちゃダメって、大人の人に教わらなかったの?」
「知るかよ、ボケがっ! なに見てんだ、見せ物じゃねぇぞ、クソがよ!」
ジョイは仲間達に叱られた。
道を行き交う通行人達も憐れんだ目を向ける。
それが気に食わないせいか、落ちていた自分の剣を、通行人に向けて放り投げた。
「「なにやってるんだ、ジョイ!」なにやってるの、ジョイ君!」
仲間達は間に合わなかった。
剣があらぬ方向に飛んで行き、関係のない一般人に投げ付けられる。
突然のことに動揺し、驚いて動けない。
間違いなく当たってしまう。冒険者の信用が、急降下していく未来が見えたが、自称勇者のジョイには関係がない。全員ひれ伏せればいいだけだと、人間以下の思考回路だった。
「(ボン!)ふぅ、間に合ったみたいだな」
しかし剣は当たらなかった。
あくまでも一般人には当たらなかっただけだ。
突然の突風。勢いよく冒険者ギルドの扉が開いた。
そこから疾風の如く現れた男性。
その屈強なボディで通行人の盾となると、怪我一つさせなかった。
「ぎ、ギルド……」
「はぁ、なにやっとんじゃボケがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
現れたのはスキンヘッドの男性。
色黒の肌には艶があり、冒険者を引退した今でも鍛え抜かれている。
顔つきは当たり前に怖く、誰が見ても一度はビビる。
現在はギルドマスターをしており、ディアレイの冒険者を統括する重要な存在だった。
「冒険者同士での決闘は禁止していないけどなぁ! 一般人に迷惑かけてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 騒ぎを聞きつけて出てみればこの様だ、お前等の行動がどれだけ軽率だったか分ってんのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
怒り心頭だった。それも当然、男性はギルドマスターだ。
冒険者を統括するのが仕事であり、冒険者とはグレーな存在だ。
街の人達の協力と信頼あってこその職業。それを踏みにじるようなことをしでかしたジョイ達を怒鳴り付けるのも無理はないが、公衆の面前と言うのは恥ずかしい。
まぁ、ディアレイでは恒例で、一種の伝統芸として親しまれていた。
「特にジョイ、お前はなんだ? 自称勇者を名乗る異常者か? お前のせいでどれだけの迷惑が出ているのか分かってねぇんだなぁ? 毎度毎度、こっちがどれだけお前の悪行に付き合わされるか分かってんのかぁ、分かってんなら誠実に取り組めや、分かったなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ただ叱り付けているだけではなかった。
愛のある激昂に、ジョイ以外の冒険者達は震え、身の程を弁える。
もっとも、ジョイにとっては耳障りでしかない。苛立ちを覚えると、情けない姿を晒したことに腹が立った。
「「すみませんでした、ギルドマスター」」
「お前達はまぁいい。それで、ジョイ。お前がボコされるのはいつものこととしてだ。一体誰にやられた?」
ジョイ以外の二人が盛大に謝った。
誠意を込めているのは間違いがない。
問題はジョイの方で、誠意もない。おまけに一体誰にやられたのか話そうとしない。
「……」
「答えろやぁ、ジョイ。いつもいつも、お前一人の面倒を誰が穏便に解決してやってると思ってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ジョイはディアレイの冒険者ギルドに恩しかなかった。
ギルドマスターに強く言われれば、それだけで何も言い出せない。
悔しい顔をするものの、仕方がなく口走った。
「……知らねぇよ。生意気なガキにやられたんだ」
「ガキだと?」
「はい、ギルドマスター。あのAランク冒険者、プラシアさんと仲がよさそうでしたよ」
「プラシアだと!? 確かに最近見なかったが、まさか男を作っていたのか……まぁ、仕方がないな」
ジョイの口調は相変らずだ。敬意の“け”の字も無い。
けれどギルドマスターが重視したのはそこではない。
“ガキ”にやられた。おまけにここ最近ギルドに顔を出さないプラシアと一緒だった。
別に誰と居ようが構わないのだが、問題はプラシアが認める程の“ガキ”だった。
「一体どんな奴が興味があるな」
「ギルドマスターがですか!?」
「ちなみにどんな奴だった?」
ギルドマスターはガキの正体に興味を持つ。
一体どんな奴なのか知りたくなった。
もちろん詳しいことは知識不足で言えないが、スッと手を挙げて答える。
「えっと、黒いマントを羽織った、一般人で」
「銃だったかな? 変な武器を持っていたよね」
「黒マント……銃型の武器? そんな珍しい奴……アイツか!?」
数少ない説明だった。けれど要素は拾っている。
ギルドマスターはそれなりに人の見た目と名前を覚えている。
その中でもそんな物騒なものを所持している、あたかも一般人を装う冒険者ではない人間は、一人しか考えられない。
「ギルドマスターはご存じですか?」
「ああ、まぁな。ジョイ、お前には分が悪すぎるだろ。アイツに勝とうなんて、俺でもキツいぞ」
「「ギルドマスターが!?」」
ギルドマスターでも、マジで本気になったユイガには勝てない。
何をして来るか分からないので、下手をすれば自分以外の全てを破壊しかねない。
それがさも当然のようにできてしまうからこそ、別に深い意味は無くても、敵に回したくはなかった。
「ああ、普段なら勝てるだろうが……いや、相手にするだけ面倒だな。そうか、アイツか……マジか。変に因縁を付けられたりしてねぇか、後で確認してみるか」
ギルドマスターは怯えていた。
別に武力の面では勝るだろうが、もっと別の部分で恐れている。
それこそこの街の発展を左右する重要人物で、対等な関係にあった。
だからだろうか、ギルドマスターは厳しい表情をすると、溜息を付きジョイを睨んでいた。
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