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第27話 勝負を受けることにした件

受けないと引き下がってくれない。

しかも言ってはいけない“地雷”を平気で踏み抜く糞冒険者をぶちのめさないといけない。

 僕は少し、いや、かなり苛立っていた。

 まさかジョイがここまでの奴とは思わなかった。

 いや、思いたくなかったというべきかな?


 別にジョイに悪気があるとは思えない。

 でも人の地雷を踏み抜くのが本当に上手い。

 逆に才能なのでは? そう思えてしまう程で、横たわって震える姿を、ジッと眺めていた。


「あのさ、僕をバカにしてくれても構わないよ。別にプラシアのことをバカにしても……欲は無いけど、最悪知り合いだからね。軽口程度ならいいよ」

「はぁはぁはぁはぁ……」

「でもさ、家族のことだけはダメだよ? 許せない。許せないよ」


 正直、僕のこととかプラシアのこととか、どれだけ悪口を言って罵ってくれても構わない。

 でもね、家族のことは無しだよ。だって家族はみんな優秀なんだから。

 知らない癖に、憶測だけで物を語らないで欲しい。発信源(ソース)があるならいいんだけどさ、それも無いのに口にするなんて、人間ってゴミムシだ。


「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ジョイは苦しそうだった。

 会話なんて到底できない。

 だけど悶絶した顔をしている。


 それには理由がある。ジョイの腕を踏みつけているからだ。

 しかも利き腕。一番細い部分。

 正直、魔王っぽいかもと思いつつ、グッグッと押し潰す。


「痛い? ごめんね。でも、覚えていられないからね」


 このまま腕を折ってしまいたい。

 大丈夫、どうせ覚えていられない。

 折られたということだけが残るだけで、何をされたのかなんて知る由もない。


 それが今この世界で起きていること。

 僕の殺気に合わせて、神様から貰った特別な祝福が発動している。

 本当、このまま永遠に甚振って苦しませてあげたい。二度と家族の悪口なんて言わせないように。


「でもさ、分かるよ。人は憶測で物を語りたがる生き物なんだから」


 僕だって人間だ。だから知ってる。嫌でも分かる。

 想像力を働かせ、憶測で物を語りたい。

 そんな日もあるけどさ、地雷を踏み抜くのは無しだよ。


「けどね、家族のことをバカにするのだけはやっぱり違うんだよ」


 誰だってそうだと思う。

 身内ならまだしも、完全に知らない人達に、直接目の前で家族の悪口を言われるのは気持ちよくない。

 その気持ちが爆発しちゃったみたいで、ジョイに対する微量な不満が原因で、沸々とした怒りが弾けた。


「ジョイなんかじゃ足下に及ばないような天才達だよ?」


 本当ジョイとは天と地以上の差があった。

 勝てる訳がない。見込みもない。勇者でも敵わないんだ。

 ジョイのような自称勇者が相手になる訳もない。一生懸けても届きもしない。


「嫉妬する気持ちは分かる。でも、それに嫉妬していいのは、一番近くで苦渋を舐めて来た僕だけだよ」


 僕はみんなと義理の兄弟姉妹の関係だ。

 有り余る才能をその目で、しかも間近で見て来たんだ。

 一番苦汁をなめたのは僕が正しい。


 そんな僕が呆れちゃっている。寧ろ尊敬している。

 完全に勝るものなし。そんな気持ちで常にいる。

 そうすると嫉妬心も皆無になって、憧れの意識だけが残ったんだ。


「まぁ、全然辛くはなかったけどね。でもでもでもでも」


 ボキッ!


 僕はジョイの腕を絶えず踏み潰し続けた。

 ついに骨が折れちゃったみたい。完全にバラバラになった。

 これで利き腕は使えない。冒険者活動に支障が出ること間違いなしだ。


「言い方は悪いけどね、ジョイみたいな冒険者がバカにする資格はないよね?」


 ついでに方の骨も折っておこう。

 きっとこれでまともに剣を振ることは出来ない。


 仮に決闘をしたとしても、僕が負ける可能性は万に一つも無くなった。

 ちゃんと工作活動を終わらせると、ジョイの右腕から足を外す。


 もう叫ばなくなっていた。(うめ)き声も上げなくなっていた。

 虫の息を通り越してしまい、見えない部分で戦意を喪失させる。

 実に魔王らしくない。あまりにも陰湿だけど、別に構わないよね?


「はっ、スッキリした」


 気分が少しだけ晴れた気がする。

 あくまでも気がするってだけだけど、何となくいい感じ。

 心のよどみが消え去ると、ジョイへ抱いた無性な殺意が消える。


「まぁ、怒っても仕方がないのかな?」


 ジョイはまだまだ子供だ。多分僕と同じくらい。

 でも思想は本当に英雄を意識している。

 勇者にはなれないと断言できるけど、見栄を張りたいに決まってる。


 全部自分の手柄にしたい。

 自分こそが正しいと言い切りたい。

 そんな子供っぽさを思い浮かべると、怒っても仕方がない。


 何だか怒っているのがバカらしくなってきた。

 いや、バカらしくもなんともないんだけどね。

 これ以上ジョイに当たるより、二度と地雷を踏み抜かせないように調教するべきだ。


「ふぅ。……解除」


 僕は気を取り直した。

 怒ったって仕方がない。

 ジョイを殺すなんてアリを潰すよりも簡単だけど、流石に魔王の格が下がる。


 ここは落ち着いて考えよう。

 僕が今やるべきことは、ジョイにこれ以上付け上がらせないようにすること。

 そうすれば、ジョイは二度と僕に楯突くことはない。

 だって、プライドが許さないから。


「はぁはぁはぁはぁ……あっ、ああ……一体なにが起きたんだ!?」


 息を荒くしているジョイ。四つん這いになって気持ち悪くなっていた。

 周りに居た他の人達も苦しそうな顔をしている。

 吐き気をも催して立ち上がれなくなると、僕は声を掛ける。


「大丈夫、ジョイ?」

「なっ、お前、な、なんだ!?」

「いいよ」

「……はっ?」


 ジョイはキョトンとした顔をしていた。

 自分から言い出したにもかかわらず、その反応はなんなのか。

 僕は顔色が面白いと思うと、早速話題を切り替える。


「いいよ。その勝負? 受けてあげるよ」

「ユイガさん!?」


 プラシアは困惑していた。

 如何して受ける気になったのか気になるみたい。


 そんなの決まってる。家族のことをバカにされたからだ。

 正直僕はいい。プラシアは……まぁまぁまぁ。

 でも家族は違う。僕以外の家族は、みんながみんな優秀で、本当に凄いんだ。


 ジョイの物差しで測らないで欲しい。

 本当に腹が立つ。本気で殺しちゃうかもしれないけど、それも仕方ない。

 だって、ここにいない人を悪く言うなんて、……いや、僕もしてたかな。

 悪いと思いつつも、ジョイへの僕が下す評価は最低を更新した。


「はっ。そうだよな、勇者の誘いを断る訳ないよな!」

「いや、そうじゃないんだけどね」


 全然違う理由なんだよね。

 ジョイは自分が勇者だから受けたと思っているみたい。

 本当に単純な思考で羨ましかった。


 とりあえず僕はジョイに絡まれた。

 勝負をすることになったけど、流石に負ける気がしなかった。

 ジョイ、今度は死んだな。って逆に憐れんじゃったよ。

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