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第24話 冒険者ギルドに行ってみた

みんながよく知ってる、想像通りのギルド会館だぞ!

「はぁ~」


 僕は溜息を付いていた。

 魔王城を飛び出して、ディアレイに来た。

 今日も今日とて、平和な街だ。


 ディアレイは冒険者が多い。だからこそ、冒険者を相手にした商売が盛んだ。

 近郊には数多くのダンジョンが存在している。

 踏破済みの低レベルダンジョンから、未踏破の高レベルダンジョンまで様々。

 英雄に憧れを抱く、冒険者達にとっては、夢のような街だった。


 おまけに王都からもあまり遠くはない。

 そのため、騎士団が常駐していない。

 大抵のことは冒険者や自警団で解決できてしまうからだろう。


 それに加えてディアレイは魔王城がある。

 ほとんどの冒険者は魔王城を本物だと誤認している。

 そのため、無謀な冒険者達が偶にやって来てしまうのだが、所詮テーマパークだ。

 言っちゃえば交流みたいな感じ? 所謂トレーニング感覚で魔王城に訪れる上級冒険者の背中を追い掛けて、真実を知らずにお金を落としてくれる。おかげでディアレイも魔王城も潤っていた。


「もう、ユイガさんは酷いですね」

「ん~」


 そんな折、プラシアが僕の隣に立った。

 ムッとした表情を浮かべている。

 一体僕が何をしたのかな? 全然分からない。


「ごめんなさい」

「……いいですよ、私も大人気なかったです」


 とりあえず謝っておけばいいや。

 正直、なんで謝っているのかは分かってない。

 だけど先に謝っておけば、後から文句を言われても、逆に言い返せる。


 イレ―ナ義姉さんみたいに、思考が豊かじゃない。

 ましてや参謀みたいに策士じゃない。

 結局僕が出来るのは、単なる小細工だった。


「それより、ユイガさん。これからどうされるんですか?」

「そうだね……とりあえず、冒険者ギルドに行ってみない?」

「ぼ、冒険者ギルドですか!」


 冒険者ギルドとは、冒険者の集まる場所だ。

 ほとんどの冒険者は朝一で冒険者ギルドに行く。

 そこで手頃な目ぼしい依頼を見つけ、受注して、ダンジョンへと向かう。


 つまり、冒険者ギルドには情報が集まる。

 何よりも冒険者が非常に多いディアレイでは好都合。

 冒険者ギルドに足を運べば、大抵の情報が手に入る。

 それだけこの街にとって、冒険者ギルドの存在価値は大きかった。


「美味しんだよね、冒険者ギルドは」

「そ、そうかもしれませんけど」

「なに、プラシア、嫌なの?」


 僕は冒険者ギルドに行きたい。

 だけどプラシアは困り顔を浮かべている。

 視線を左右に向けると、目を泳がせていた。


 それも仕方がないよね。だってプラシアも冒険者の一人。

 しかも貴重な回復魔法を使える回復役だ。

 冒険者パーティーにとっては、もの凄く重宝する。


 そんな優秀な子が、冒険者ギルドに戻って来た。

 しかもパーティーを組んでいないフリーな状態。

 回復役はどのパーティーも欲しいから、きっと囲まれて引っ張りだこになってしまうんだろう。でも、必要とされているのっていいことだよね?


「嫌では、ないですよ。ただ……」

「分かるよ、言わなくても分かるよ。冒険者ギルドに行けば、パーティーに誘われるんだよね?」

「……あっ、そっちじゃないです」

「あれぇ?」


 僕はプラシアの気持ちを言い当てたつもりだった。

 だけど全然違ったらしい。

 寧ろそんなことは些細な問題で気にしていないらしい。

 あれれ? 冒険者活動の再開が嫌とかじゃなかったの?


「それじゃあ、どっち?」

「あの、ユイガさんは魔王なんですよね?」

「うん。魔王“役”だけどね」


 僕の立場は一応魔王だ。だけど魔王“役”でしかない。

 つまりは茶番劇を展開している程度の意味でしかない。

 それが何か問題でも? 僕は首を捻ると、プラシアはあたふたする。


「あの、その、仮にも魔王が冒険者ギルドに立ち入って、討伐されないのでしょうか?」

「えっ?」

「ユイガさんは魔王ですよね。それでは冒険者が集まっている場所に立ち寄るのは、悪手だと思うのですが」


 プラシア、普通に真面目なことを言ってるよ。

 だけど間違ってはいない。プラシアの言うことは正しい。

 けれど少しだけ違う。プラシアの言葉には肝心な言葉が足りない。


「あはは、それはないよ。大丈夫大丈夫」

「大丈夫じゃないと思いますよ」

「大丈夫だよ。前にも言ったかな? 冒険者ギルドのギルドマスターも、この街の市長も共犯だから、公認だから。冒険者ギルドに立ち寄っても、討伐はされないの」


 僕は笑って済ませた。

 何せこの街では魔王城の活動は公認されている。

 しかも冒険者ギルドのギルドマスターもこの街の市長も代々共犯だ。

 僕達が非難されれば街が非難される。街が非難されれば街に関わった全員が悪人になる。誰だって悪人にはなりたくないんだから、誰も文句は言えないんだよね。

 いや、イレ―ナ義姉さんが根回しをして置いてくれてよかったよ。あれ、凄く魔王っぽい?


「それに、僕が魔王なんて誰も思わないでしょ?」

「……あっ」

「その、あっ、は傷付くよ」


 僕は自分から傷付く発言をした。

 だけどプラシアなら上手くフォローしてくれる。

 そう期待していたけれど全くダメで、寧ろ口元に手を当てていた。


 完全に忘れていた態度が気に入らない。

 ムッとした表情を浮かべて、肩を落とした。


「でもさ、僕は自他共に認める最弱の魔王だけど」

「自他共にではないと思いますよ? 少なくとも私は、ユイガさんの強さは、単純な武力や知力じゃないと思います」

「ありがとう。でもさ、僕は一応最弱の魔王だけど、並の冒険者には負けないから。それだけは安心して」


 結局最弱の魔王なのは変わらない。

 自他ともに認められていると思ったけど、そんなことないらしい。

 いやいや、プラシアさん。僕は最弱だよ? それでも幹部達に鍛えて貰っているから、並の冒険者程度には負けないけどね。


「ってことで、冒険者ギルドにやって来たけど」

「もう着いちゃったんですか!?」


 気が付けば僕とプラシアは冒険者ギルドにやって来た。

 目の前に現れたのは、巨大な石造りの建物だ。

 旗と看板が立っていて、盾に二本の剣がクロスしている。

 これが冒険者ギルドのトレードマークで、この場所は所謂ギルド会館だった。


「それじゃあ入ろっか」

「わ、分かりました。あの、なにかあれば」

「大丈夫、なにも無いから」


 僕はプラシアに心配されつつも、冒険者ギルドの扉を開く。

 ギルド会館の中は今日も人で溢れている筈。

 まぁ、午前中だからね。それも仕方がない。そう思いつつ、重そうに見える扉を軽く開いた。

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