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魔王が死んだので魔王城をテーマパーク化したら、家族の中では最弱な僕が“魔王役”になった……人間相手には負けないけどね。  作者: 水定ゆう
1章

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第21話 スライムはボロボロなのぉ

スライムがいわゆるロボット掃除機みたいな世界です。

明日から1日1話、20時台投稿です。52話まで(1章)投稿予定です。

⭐︎・ブクマお願いします。少しでも面白いと思ったら付けてください。

「スライムですか?」

「そうだよ。うちでは、掃除を中心に頑張って貰っているんだ」


 スライム達が体を引き摺っていた。

 地面を這っているけれど、これがスライムの日常だ。

 特別な体をしていて、ほとんどが水分で出来ている。

 魔素や毒素を浄化する機能を持っているからこそ、歩くだけで魔物の血肉や冒険者の装備を溶かす。

 まさしくダンジョンの掃除屋さんだった。


「噂には聞いていましたが、まさか本当だったんですね」

「本当だよ。でも、ちょっと様子がおかしいかな?」


 今朝から様子がおかしいのは分かっていた。

 最初は除去剤がないだけ、そう考えていたけど、今は違う。

 スライム達はグッタリとしていて、何だか疲れているようにも見える。


「そうですか? スライムはいつもあんな感じではないでしょうか?」

「うーん、そう言われれば、そんな気もするかな?」

「はい」


 スライムはほとんどの冒険者興味を示さない。

 確かに素材の価値としては美味しいかもしれない。

 だけどわざわざ視界に収める程でもない。


 これが上位種であればまた違う。

 だけどここに居るのは普通のスライムだ。

 プラシアも冒険者として幾度となく遭遇しているが、その様子を細かくは知らない。

 だかたこそ、軽率な態度が取れていた。


「あの、スライムさん達。こんにちは」

「「「ギュ?」」」

「初めまして。今日からここで働かせていただくことになりました、プラシアと言います。よろしくお願い……えっ?」


 スライム達は元気がなかった。朝よりも更に元気がない。

 疲れ果てた体を、プラシアに向けている。

 虚ろな視界でプラシアの姿を捉えた。


 綺麗な自己紹介をしたプラシア。

 だけど途中で口が噤まれる。

 何だろう、違和感でも感じた簿かな?


「ユイガさん、スライムさん達の魔力の流れが滞っています」

「ん?」

「なんとなくですが、そんな風に見えるんですけど……違いますか?」


 プラシアは突飛なことを言い始めた。

 まるで見えている……いや感じているみたいだ。


 プラシアは見た所、魔眼持ちじゃない。

 つまりこれは経験則からくる言葉だ。


 魔力が滞っている現象。

 確かに聞いたことがあった気もする。

 僕も気になってプラシアの横にしゃがみ込んだ。


「ちょっと見せて……そうかも」


 全然分からない。僕には魔法の素質もない。

 確かに、魔力って血液みたいなものだって話だ。

 誰もが持っていて、それには多い少ないがある。けれど確かに流れていて、循環させることで、正常に機能する。


 だけど稀に疲労が溜まると、滞ることもある。

 疲労じゃなくても、何かしらの原因で不調になる。

 大抵は原因を突き止めれば治るけど、僕は担当じゃなかったし、こういうのはイレ―ナ義姉さんの仕事だから分からない。


「あれ、どうしたんですか? やっぱり、魔力の流れが滞っているからですか?」


 プラシアがスライムに声を掛けた。

 何だか弱っていて元気がない。

 もしかしなくても、働かせすぎちゃったせいだ。


 今にも溶けて消えてしまいそうなスライム。

 それが一匹だけじゃなくて、何匹も集まっている。

 みんな目がトロンとしていた。これぞ虚ろな目だ。


「元気がないみたいですね」

「うん。僕もこんな姿、久しぶりに見たよ」


 って言うか、今日見たんだけどね。

 スライム達、掃除に疲れているのか、それとも除去剤が無くて動けないのか?

 大気中の魔素を吸って餌にしている筈なんだけど、それも上手くできていない。

 消化器官みたいなものが、相当弱っているのかも。寿命、かな?


「ユイガさん、回復魔法を掛けてもいいですか?」

「回復魔法? うん、構わないよ」


 プラシアは本当に優しい。

 初日にもかかわらず、自分の出来ることを見つけようとしていた。


 その中の一つに回復役としての実力があった。

 魔物相手に回復魔法何て、あまり馴染みはない。

 だけど理論的には人間と同じで、魔物にもほとんどの場合は有効な筈だ。


 疲れているスライム達に献身的。

 健気でいい子。リミエナとは相性がいいかも。

 そう思わされると、プラシアはスライムの頭を撫でた。

 何処までが頭で何処からが体かは分からないけど、なんだか優しい手の動きに、スライム達も安心する。


「では……汝に与えしは光の源、痛みを癒し給え—ヒール」


 プラシアは回復魔法を唱えた。とても綺麗な魔法だ。

 両手をスライム達にかざすと、魔法を唱えた瞬間から、温かい光の粒子が降り注ぐ。

 イレ―ナ義姉さんやリミエナが使う回復魔法とはまた少し違う。

 プラシアらしい色をした光で、それを受けると、スライム達の顔色が徐々に良くなった。


「凄い。スライムを癒してくれてる」

「怪我はしていないみたいなので、何処まで効くかは分かりませんけど」


 確かにスライムは怪我をしている訳じゃない。

 体が不調な状態で、今にも溶けてしまいそう。

 この状態でヒールを掛けるとどうなるのか、僕は知らない。

 何せ専門外過ぎて対応できなかった。


「とりあえずこれで大丈夫だと思いますよ」


 プラシアは回復魔法を掛け終わった。

 スライムの負っていた怪我は無事に治ったみたい。

 胸を撫で下ろすと、スライム達の目の色がいい。


 死にそうになっていたブラックな目から、優しいホワイトの目に変わる。

 キョロキョロ視線を配ると、あまりよくない視界らしいけど、プラシアの姿を捉える。

 その瞬間、プラシアに飛び掛かった。攻撃の意思はない。じゃれているんだ。


「「「プギュー」」」

「きゃっ!」

 

 突然のことに驚くのも無理はなかった。

 プラシアは尻餅を付いて転んでしまう。

 だけど胸の中にはスライム達が居て、見事にキャッチ。

 受け止めると、スライム達はすり寄っていた。


「ど、どうされたんですか?」

「きっと感謝しているんだよ」

「感謝、ですか?」

「そうだよ。スライム達も疲れていたんだ。ごめんね、無理をさせ過ぎちゃって」


 魔王城の掃除のほとんどは、ミニゴーレム達とスライム達に任せていた。

 きっと今までの疲労が蓄積されていたんだ。

 除去剤を持ってこなくてよかった。もしこれ以上掃除をさせていたら、きっととんでもないことになっていたに違いない。


「「「ギュンギューン!」」」

「ユイガさん、スライムさん達は、気にしていないみたいですよ」

「本当?」


 スライム達は一斉に首を横に振り始めた。

 いや、何処が首なのかは分からないんだけどね。


 それでも僕のことを視界に収めた。

 それから体を使って横に振っている。

 もしかして、気にしなくてもいいってことかな?


 凄く嬉しいんだけど、一応僕は魔王役だよ?

 頑張ってくれている従業員は労わないとダメ。

 何となくそんな思考でいると、拳を握ることにした。


「よし。それじゃあスライム達は休んでいて、後は僕とプラシアで頑張るから」

「は、はい?」

「プラシア、巻き込んでごめんね。掃除、もう少しだけ手伝ってくれないかな?」


 やる気を出した僕は掃除用具を手にした。

 少しでもスライムの負担を減らせるようにしたい。

 除去剤は無いけど、人力で頑張ってみることにする。


 だけどプラシアは予想外だったかも。

 キョトンとした顔をして驚いていた。


 正直僕一人じゃ厳しい。こうなった以上、猫の手も借りたい。

 本当は魔王城を壊した冒険者にも手伝わせたい。死んでもいいから償って欲しい。

 そう思ってしまうと、目付きが怖かったのかな? それとも瞳が怖かったのかな?

 プラシアは心配そうに立ち上がる。


「はい、任せてください、ユイガさん」

「プラシア、本当にいいの?」

「もちろんです。私が選んだ道ですから、一生懸命やりますね」

「ありがとう、それじゃあ……とりあえず、この廊下を頑張ろうか」

「は、はいっ」


 プラシアは「嫌です」って言うと思ってた。

 だけどプラシアの性格的に、それはあり得なかった。

 何だか献身的な優しさを利用したみたいで、少しだけ気が引けた。


 なんて魔王らしいんだ。悪いことをしているんだ。

 きっと魔王役としてはこれが最適解な筈だけど、プラシアは手伝ってくれるらしい。


 本当に助かる、ありがたい。まずは目の前の廊下から。

 そう思って視線を飛ばすと、プラシアは絶句する。

 長い長い廊下だ。果てが見えない……訳じゃないけど、そんな風に見える。

 げんなりとは行かないけど、息が詰まったようなプラシアを見守りつつ、僕達は掃除を頑張るのだった。その後ろ姿を見ていたスライム達は、チョコンとしていて可愛かった。

少しでも面白いと思っていただけたら嬉しいです。


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