第20話 勇者パーティーが悪い
ジョイが相当にクズってこと?
「すみません、すみません、本当にすみませんでした!」
何度も何度も、プラシアは謝っていた。
プラシアが悪い訳じゃない。
ましてや起こったことを今更謝れても、もう諦めるしかなかった。
「もういいよ、プラシア」
「いえ、勇者パーティーが壊したとなれば、私にも責任があります」
「いや、プラシアが壊した訳じゃないでしょ?」
僕はずっと監視していた。
この魔王城には監視カメラという魔導具が幾つも設置されている。
壁よりも強度が高いから、相当壊れることはない。
だから一部始終も全部撮っていて、その中にプラシアが壊した後は見られなかった。
「それにしても驚いたよ。まさかファメラが、あんなに派手に火属性魔法を放つなんてね」
実際に僕は経験済みだ。
ファメラの火属性魔法は相当なもの。
真後ろの壁。少しだけ焼けた跡があるのはそのせいだ。
「すみませんでした、ファメラさんが」
「いや、ファメラはいいよ。綺麗に焼いてくれているから、後で直そうと思うんだ」
これくらいなら全然直せる。
確かに焼け跡は酷いものだった。
それだけ奮闘した証拠で、これくらいなら、表面の汚れを軽く落として水を掛ければ、壁の中の元素や精霊達が感化されて、自動修復される。
「だけど問題はね……」
僕はムカついていた。
ファメラもウルームも、プラシアでさえ、想像の範疇を超えていない。
だけど一人だけ、悪い方向に想像の範疇を超えて来ていた。
「この傷、どうしてくれるのかな?」
僕は床を凝視した。深い傷跡が残されている。
経験から分かるけれど、これは剣を突き刺した後だ。
しかもグリグリほじられていて、タイルを綺麗に張り合わせて作った床が、少し抉れてしまっていた。
「この、傷ですか?」
「そうだよ。床に付いた傷跡。バカみたいに剣を深く刺し過ぎて、タイルを張り替えないといけない」
タイルの張り替えくらい僕でも余裕だ。
だけど問題はその奥。タイルを張っていた内側の部分まで傷が付いている。
ベテランの冒険者なら、変に自分の命を預ける武器を突き立てたりしない。
それで破損する可能性だって充分考えられるんだ。それが分かっていないのは、新米の証拠だよ。
「あの、それはすごく大変なことなんですか?」
「うーん、セメントを用意したりして……準備は大変だけど、そこまで大変って訳じゃないよ。それに僕が怒っているのは、それが原因じゃないから」
「そうなんですか?」
「うん。寧ろこれくらいはダンジョンなんだから、仕方のないことだよ」
床の修復作業は別に普通だと思う。
ここは一応ダンジョンだけど、自然生成のダンジョンとは違う。
勝手に修復されないからこそ、手間が掛かるだけで、別に問題じゃない。
ましてやジョイのしたことを責めている訳じゃない。
少しだけイラっとしたけど、些細なことだよ。
僕が怒っているのは、もっと別の話だ。
「でも、手間が掛かるのは事実だよ。はぁ」
「ユイガさん……」
僕はつい溜息を付いちゃった。
余計な仕事が増えたって思って残念な気持ち。
倉庫にセメントを取りに行かないといけないかな。
もう一回戻るのが億劫だけど、早い方が絶対にいい。
「ああ、気にしなくてもいいよ。新米勇者パーティーなんだから、怒る気にもならないよ」
実際、ちゃんと入場料は払ってくれた。
結構高いのに挑戦してくれたんだ。
だけど少しだけ実力を付けてから来て欲しかったのは本音だよ。
「ユイガさん、すみませんでした!」
「だからプラシアが謝ることじゃなくてね」
プラシアが謝った所で仕方がない。
何だけど、プラシアは気に病んじゃってる。
如何しようかな。こういう時は、ソッとしておいた方がいいよね?
「あの、せめて掃除だけはさせてください。頑張りますから!」
「いや、頑張らなくてもいいよ?」
「いえ、ダメです」
「あはは……」
掃除にやる気を出してくれたのは嬉しい。
だけど頑張り過ぎても体には毒だ。
ストレスフリー……難しいけど、そっちを頑張って欲しいけれど、プラシアの目はやる気に満ちていた。
「それじゃあ掃除を頑張りますね!」
「あはは、意気込みはいいね」
「茶化さないでください……グリムさん、なにか来ますよ」
プラシアは張り切って掃除を再開する。
あまりの意気込みと熱気に、僕は焼かれそうになった。
茶化したつもりはないんだけど、褒め方を間違えたみたい。
プラシアはムッとした顔をすると、急に不穏なことを言った。
「ぐ、グリムさん、あれはなんですか!」
プラシアはハッとなって振り返った。
踵を返すと、気配に気が付いたみたい。
遠くの方に、小さな何かがある。しかも床の上で、ユックリノッソリこっちに近付く。
「な、なにかいますよ」
「そうだね」
プラシアは杖の代わりに箒を構えた。
ギュッと力強く握っていた。
流石は冒険者、判断が早い。
「地面を這っています」
「う、うん……」
プラシアは慄いている。
そんなに心配しなくてもいいのにね。
だけど、地面を這っているなんて。
もしかして、床掃除を頑張ってくれてる?
そんな無理しなくてもいいのに。
僕はそう思うと、プラシアが腕に抱きついた。
「こ、怖いですね。ですが安心してください、私がなんとかします!」
「あはは、抱き付いてるのに?」
「これは、その……反射的にです」
プラシアは自分から抱きついて来たのに、なんとかするって言った。
まるで僕を守ってくれるみたいで、安心する。
だけどそれを女性に言われるなんてね。イレ―ナ義姉さんが聞いたら、絶句していたんだろう。
プラシアがソッと僕から離れた。
大きな膨らみが無くなって、柔らかい感触が消える。
まぁ、それはいいんだけどね。それにしても反射的って、プラシア、相当僕に叱られたこと、懲りちゃってるのかな?
色々考えちゃった僕。何だか悪いことしちゃった。
しかも怖がらせることをしたみたい。
ここは一つ払拭してみせる。
「ふぅー、安心して、プラシア」
「グリムさん?」
「よく見てよ。アレ」
僕はプラシアを安心させてあげることにした。
シッカリと目を凝らして前を見て貰う。
怖いかもしれないけど、全然そんなことない。
だって這っているのは、虫でもアンデッドでも無くて、普通に無害な魔物だった。
「ええっ、アレって!?」
「そう、スライムだよ」
床を這っているのはスライムだった。
正直警戒する必要はほとんどない。
冒険者にとっては当たり前で、僕達にとっては大切な従業員だ。
それが一つ・二つと数を連ねる。
僕が戻って来たから勘付いたのかな?
何だか健気かも。スライムの気持ちを読むことは無理だけど、それなら凄く嬉しかった。
まぁ、違うとは思うんだけどね、あはは——
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