第18話 魔王城に再び
可愛くて小さいゴーレム。
「うっぷ!」
「あふっ!?」
転移装置を利用して、僕とプラシアは魔王城に戻って来た。
とりあえず、プラシアに押し倒されたらしい。
あー、重い。人が上の乗ると、相当重い。
女性には悪いけれど、プラシアも僕にとっては充分重たい。
しかも身動きがまるで取れなかった。
背中を床にペタンと付けると、背骨が痛い。
息苦しいとかは無いけれど、何だろう。
顔に柔らかい何かが当たっている気がする。
「ううっ、重い……」
プラシアには悪いけど、早く退けて欲しい。
とりあえずこの狭い部屋方抜け出すことが大事。
僕は息苦しい中、何とか腕を伸ばしてスイッチを押した。
ガチャン!
「「ぐぁふっ!!」」
扉が開いてくれたおかげで、流れる形で廊下に出た。
僕とプラシアは廊下に投げ出されると、ピカンと灯りが点く。
倒れ込んだ僕達を照らしてくれると、プラシアはようやく退いてくれた。
「ううっ、ここは……ひゃっ!?」
「プラシア、重い。退いて」
「す、すみません、ユイガさん」
プラシアは自分の体が、僕のことを押し潰していることに気が付いた。
しかも胸が顔を埋めていたことに気が付き、頬をリンゴみたいに赤くする。
だけどそれ以上に僕の言葉が胸を貫いた。やっぱり女性に「重い」はダメだった。
「ふぅ~、やっと解放されたよ」
「本当にすみません。あの、大丈夫ですか?」
「うん。一応大丈夫だよ……あー、痛たたたぁ」
つい背中に腕を回した。
押さえつけられていた背骨が痛い痛い。
もう少し筋肉付けないとダメかな? 自分ではちゃんと運動しているつもりなんだけど、経営が忙し過ぎて足りなかったらしい。
反省しつつも今はプラシアの機嫌を取ることが大事だ。
だって目の前で凄く落ち込んでいるんだもん。
肩も視線も落としていて、全体的に小さく見えた。
「えーっと、ごめんね。悪気があって言った訳じゃなくてね」
「分かっています。私が好奇心に身を任せてしまったせいです」
「あー」
確かに一理あるかも。って言うか全然ある。
だってプラシア、イレ―ナ義姉さんみたいな、おしとやかとはちょっと違う。
思い立ったが吉日で、好奇心に身を任せる癖が見えた。
多分、魔王城が目新しいものだらけだから、胸が躍っているに違いない。
「でも、好奇心を抱くことは、とっても大事だよ」
「ユイガさん」
「はい、もうここに来ちゃったんだから、手伝って貰うよ」
スッと手を射し伸ばした。
取ってくれるかな? きっと取ってくれないよね?
一度傷付いた心って、なかなか元通りにはいかないから。
しかも魔王城って言う逃げ場のない場所がよくない。
これだと強制的で、プラシアの気持ちを鑑みてない。
そんなのは僕達家族の考える魔王城経営とは少し違う。
あー、何とかならないかな。そう思って待っていると、柔らかい手のひらが触れる。
「いいかな、プラシア?」
「……はい。任せてください。私はなにをしたらいいですか?」
プラシアは僕の手を取ってくれた。
顔色が凄くいい。自信に満ちてる。
後とっても可愛い笑顔で、何だか気持ちが温かくなる。
「よし。それじゃあ」
「はい。私をなにをしたらいいですか?」
「えっとね、掃除だよ」
「……えっ?」
プラシアは言葉を失っちゃった。
だけどそれも仕方がないよね。
だって魔王城にやって来て、初めての仕事が掃除だとは、誰も思っていない筈だ。
「そ、掃除ですか? お掃除ってことですか?」
「そうだよ。お掃除だよ」
「ま、魔王城のお掃除ですか? ええっ、ちょっと待ってください。魔王城って、確かテーマパークで。あれ?」
プラシアもようやく気が付いたみたい。
確かに魔王城に連れては来た。僕に付いて来てくれたんだ。
でもまだ何をするとは言っていない。
即断は身を亡ぼす可能性もあるんだから、踏み込み過ぎも大概だと覚えておいて欲しいよ。
「魔王城での初仕事が、お掃除ですか
「でも、掃除は大事だよ?」
「それは理解しています」
掃除は凄く大事。ゴミを散らかしたままにすると、変な虫が寄って来る。
まぁ、魔王城には全然いるんだけどね。
昆虫系の魔物も、貴重な戦力なんだから、使わない手は無いし、雇わないのは可哀そうだよ。
「っと、プラシア、道具は持ってる?」
「道具ですか? 持っていませんよ」
「だよね。ちょっと待ってね。おーい!」
プラシアが掃除用具を持ってないのは分かってる。
そんなものがわざわざ必要になるとは思ってない。
だからこそ、僕は廊下で叫んだ。口元に手を当てて声を拡散させると、ミニゴーレムを呼び寄せる。
「あのユイガさん、なにか呼んだんですか?」
「そうだよ。すぐ来てくれるからね」
しばらく待ってみることにした。
だけどそんな暇は無かったかも。
廊下や壁を伝って、小さいけれど擦れる音がした。
この音は間違いなくて、視線を飛ばすとやっぱり来てくれる。
「あっ、来たよ」
「な、なにか来ますよ!」
しばらく待ってみると、本当に何かやって来て、プラシアはビックリしちゃう。
震えた声で警戒しているけれど、そんな必要は何処にもない。
腕を前で組んで、杖を構えるけれど、やって来た小さな影の群れに、瞬きをしていた。
「「「ゴーゴーゴー」」」
やって来てくれるのは小さな石人形。
ミニゴーレムが何匹かやって来たんだ。
よかった。みんな綺麗に整列していて、腕と足を上下に動かしてる。
決まった動きを取ると、僕達の前にやって来た。
「はい、ストップ」
「「「ゴー」」」
目の前でピタリと静止するミニゴーレム達。
やって来てくれたのは六匹で、みんなキョトンとした顔をしている。
三つの穴が顔に開いていて可愛いなって見惚れちゃう。
「みんな偉いね。お疲れ様」
「ユイガさん、この子達は?」
「ミニゴーレムだよ」
「ミニゴーレム、ですか?」
「そうだよ。うちの分隊長の一人が作っておいてくれたんだ」
魔王群には魔王役以外にも色々と役割がある。
その一つに、十個存在する隊がある。その中でも五番隊は人海戦術に長けている。
って、魔物だから魔海戦術なのかな? 一人で何言ってるんだろう、訂正しても分からない。
「なんだか可愛いですね」
「あはは、そうだよね。みんな、掃除の方はどうかな?」
「「「ゴゥー」」」
ミニゴーレム達に、掃除の進捗を訊ねる。
僕が留守にしていた間、みんなを働かせすぎちゃった。
申し訳ない気持ちになりつつも、ここは気を取り直す。
「そっか。それじゃあ、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「「「ゴゥー?」」
ここまで頑張ってくれていたミニゴーレム達に応援を寄こす。
そう、ここにいるプラシアが手を貸してくれる。
そのためにも、掃除用具が早急に必要だ。
「掃除用具を取って来てくれるかな?
「「「ゴゥー?」」」
ミニゴーレム達はプラシアの顔をジッと見つめる。
警戒しているみたいで、迷っている素振りだ。
ミニゴーレム達は表情が読めないからね。どうするかな?
「もしかしてプラシアのこと見てる?」
「えっと、その……初めまして。私はプラシアと言います。今日からよろしくお願いします」
「「「ゴゥー?」」」
「新しいうちの従業員だよ。お願いできるかな?」
とりあえずプラシアのことを簡潔に説明した。
新しい従業員。そう言えばきっと分かってくれる筈。
ミニゴーレム達は口数は少ないけれど、ちゃんと意思を持っているんだ。
「「「ゴー!!!」」」
ミニゴーレム達は分かってくれたみたい。
踵を返すと、整列して行ってしまった。
これで一安心。僕は胸を撫でる。
「あの、ユイガさん。私は……」
「大丈夫だよ、プラシア。きっと通じた筈だから」
「そうなんでしょうか?」
「そうだよ。まぁ、ここで待ってようよ」
ミニゴーレム達は必ず戻って来てくれる。
おまけに理解力も高い。順応性もある。
掃除用具を持って来てくれると信じて廊下で待つことを決めた。
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