第17話 付いて来ないでよ
オーバーテクノロジー。
「ふぅ……(重かった)」
立ち上がった僕は息を整えた。
肩を押さえると、ちょっとだけ痛い。
多分倒れた時にぶつけたんだ。でもこれくらいない後で薬を塗ればすぐに治る。
「すみませんでした、ユイガさん」
「いいよいいよ、大丈夫。それよりプラシア、本当に帰ってくれるかな?」
本当、早めに魔王城に戻りたい。
何せまだ掃除が残っているんだ。
除去剤も手に入らなかった。つまり手作業の苦行が待っている。
「本当にダメですか?」
「ダメなものはダメだよ」
「どんなことでもしますよ」
「そういう人を勘違いさせるような言葉、平気で使うのがダメなんだよ」
「ほえっ?」
プラシアさん、本当に分かっていないんですね。
何だろう。こういう子が、社会の歪みなのかもしれない。
そう思わされると、シュトルム義姉さんのような魅力を見つけた。
「とにかく、プラシアはもっとまともな生活をするべきだよ」
「まともな生活ですよ」
「あー、言い方を変えるよ。プラシアはテーマパークのキャストとか、趣味でやってるような副業に関わらないで、自分が本当にやるべきこと、それこそ必要とされることをするべきだよ。それが僕から言える言葉かな、じゃあね。分かったね。本当に帰ってよね」
プラシアをこれ以上関わらせたらダメ。
きっとよくない方向に転ぶ気がする。
それこそ、本物の勇者みたいになっちゃうかもしれない。
「待ってください、ユイガさん!」
僕が見せの奥に消えようとした。
だけどプラシアはとってもしつこかった。
外に追い出しても駆け出してきて僕を捕まえる。
「もう、付いて来ないでよ」
「いえ、付いて行きます」
「どうして? ストーカー?」
「そ、そんなつもりじゃないです。ただ、好きにしていいって言ったのは、ユイガさんの筈ですよ」
それもそうかもしれない。本当、余計なことを言った気がする。
僕自身を恨んで呪うけれど、そんなことしても仕方がない。
言葉に責任を持たないとダメな理由を痛感する。
「もう、勝手にしてよ」
「はい、勝手にします」
僕は呆れてしまった。一体何が気に食わなかったのか分からない。
もしかして、あしらい方がダメだったのかな?
それもそうだよね。あんな強引なやり方、怒るよね。
「それでユイガさん、如何やって魔王城に帰られるのですか?」
「ん? 転移するんだよ」
「転移? つまり、テレポートの魔法ですね!」
惜しい。そうなんだけど、そうじゃない。
もっと漠然とした、魔王城の構造を利用したものだ。
「ちょっと違うかな」
「違うんですか!? 興味深いです」
「あー、なるほどね」
ここでようやくプラシアの真意に気が付いた。
如何して僕に付き纏っているのか、その理由が明らかになる。
要するに、プラシアは魔王所のことが気になるんだ。
ただのテーマパーク……でありながら、人死にも受け入れる恐ろしいダンジョン。
この街を、ディアレイを支える観光地であると共に、難攻不落の居城だ。
その内部に隠された不思議構造に興味を持つのも不思議じゃない。
「確かに、興味深いよね」
「あれ? ユイガさんが管理しているんじゃないんですか?」
「僕? 僕がする訳ないでしょ」
プラシアさん、僕が管理していると思っているのかな?
あはは、そんな訳がないでしょ。魔王城の経営だけでも大変なのにさ。
全く、僕のことを買い被り過ぎないで欲しいよ。
「ユイガさんじゃないんですか!?」
「当たり前だよ。僕の何所に、そんな頭脳があると思ってるの」
自分で口にして悲しくなって来た。
何せ僕はギアッド義兄さんのように賢くない。
本当家族の落ちこぼれだなって何度も嫌になる。
「では一体誰が?」
「それは……まぁ、僕の義理兄弟姉妹かな」
「ご家族ですか?」
少しだけはぐらかすことにした。
何せ僕の家族はみんな魔物。プラシアに下手にバレたら大変だ。
みんな僕より強いし、プラシアなんて敵じゃないと思うけど、気絶でもされて説明が増えても嫌なんだよね。
「ザックリ説明すると、魔王城を中心にして、色んな所に自由に出入りできる、転移装置を置いているんだよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だよ。僕にはサッパリ理解できないけどね」
本当に凄いとしか言いようがない。
何せこの装置を開発したのは、世界でも数人だけ。確か僕の知っている限りだと、二人か三人だった筈だ。
曖昧だけど、その内の一人が、僕の義理の兄さんでギアッド義兄。自慢の義兄で、僕なんかじゃ足下にも及ばない。
「あの、その装置をもっと多くの方に利用して貰うのは?」
「ダメダメ。こんなのがバレたら、世界の均衡がまた一つ崩れちゃうでしょ?」
プラシアは変なこと言い出した。こんな装置や機構が外部に知られていい訳がない。
仮に知られたからと言って到底真似できるものじゃない。
それでも一度誰かの耳に知られれば、爆発的に噂が拡散される。
そんなことになっても、僕達には何の得も無いし、寧ろ知られていない方が好都合だ。
「そんなことよりもさ、プラシア。本当に付いて来るの?」
僕は改めてプラシアに訊ねた。
本当の本当に、魔王城に足を運ぶ気なのだろうか?
メリットなんてものは一切ない。邪魔って訳じゃないけど、魔王城は魔物が多い。
プラシアには相応しくないんだけど、もう心に決めているらしい。
「もちろんです。私はユイガさんに付いて行きます」
「なんで僕に付いて来るのか全然分からないんだけど」
プラシアの考えていることが読めない。
いや、読もうとするのが間違いなのかな?
首を捻ってしまうと、溜息が零れ落ちる。
「はっ。分かったよ、それじゃあ転移するよ」
「えっ、ここからですか!?」
「ううん、こっちこっち」
僕は壁のスイッチを押した。
すると壁に扉が出現して、僕はプラシアを手招きする。
「こんな所に扉があったんですか?」
「扉があったんだよ。僕達家族しか使えない、特別なギミックかな」
「凄いです。お店にも仕掛けが施されていたんですね!」
プラシアは瞳を輝かせていた。
瞳の中に幾つもの星がキラキラと咲く。
興奮状態になってもいいけど、そのままにじり寄らないで欲しいな。
「プラシア、落ち着いて。落ち着いて、落ち着いて……うわぁ!」
「きゃっ!」
プラシアは僕に近付いた。
その拍子に足を躓くと、部屋の中で重なる。
狭い部屋なのに、蒸し暑いよ。世間的にはご褒美? なのかもしれないけど、全然嬉しくない。
「ううっ、なんでこんな狭い部屋に押し込まれて。もういいや、転移!」
僕とプラシアは狭い部屋の中に押し込まれた。
流石に早く転移しないとマズい。
そう思うと急いで転移装置を起動させると、魔王城まで一瞬で消えた。
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