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魔王が死んだので魔王城をテーマパーク化したら、家族の中では最弱な僕が“魔王役”になった……人間相手には負けないけどね。  作者: 水定ゆう
1章

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第17話 付いて来ないでよ

オーバーテクノロジー。

「ふぅ……(重かった)」


 立ち上がった僕は息を整えた。

 肩を押さえると、ちょっとだけ痛い。

 多分倒れた時にぶつけたんだ。でもこれくらいない後で薬を塗ればすぐに治る。


「すみませんでした、ユイガさん」

「いいよいいよ、大丈夫。それよりプラシア、本当に帰ってくれるかな?」


 本当、早めに魔王城に戻りたい。

 何せまだ掃除が残っているんだ。

 除去剤も手に入らなかった。つまり手作業の苦行が待っている。


「本当にダメですか?」

「ダメなものはダメだよ」

「どんなことでもしますよ」

「そういう人を勘違いさせるような言葉、平気で使うのがダメなんだよ」

「ほえっ?」


 プラシアさん、本当に分かっていないんですね。

 何だろう。こういう子が、社会の歪みなのかもしれない。

 そう思わされると、シュトルム義姉さんのような魅力を見つけた。


「とにかく、プラシアはもっとまともな生活をするべきだよ」

「まともな生活ですよ」

「あー、言い方を変えるよ。プラシアはテーマパークのキャストとか、趣味でやってるような副業に関わらないで、自分が本当にやるべきこと、それこそ必要とされることをするべきだよ。それが僕から言える言葉かな、じゃあね。分かったね。本当に帰ってよね」


 プラシアをこれ以上関わらせたらダメ。

 きっとよくない方向に転ぶ気がする。

 それこそ、本物の勇者(・・・・・)みたいになっちゃうかもしれない。


「待ってください、ユイガさん!」


 僕が見せの奥に消えようとした。

 だけどプラシアはとってもしつこかった。

 外に追い出しても駆け出してきて僕を捕まえる。


「もう、付いて来ないでよ」

「いえ、付いて行きます」

「どうして? ストーカー?」

「そ、そんなつもりじゃないです。ただ、好きにしていいって言ったのは、ユイガさんの筈ですよ」


 それもそうかもしれない。本当、余計なことを言った気がする。

 僕自身を恨んで呪うけれど、そんなことしても仕方がない。

 言葉に責任を持たないとダメな理由を痛感する。


「もう、勝手にしてよ」

「はい、勝手にします」


 僕は呆れてしまった。一体何が気に食わなかったのか分からない。

 もしかして、あしらい方がダメだったのかな?

 それもそうだよね。あんな強引なやり方、怒るよね。


「それでユイガさん、如何やって魔王城に帰られるのですか?」

「ん? 転移するんだよ」

「転移? つまり、テレポートの魔法ですね!」


 惜しい。そうなんだけど、そうじゃない。

 もっと漠然とした、魔王城の構造を利用したものだ。


「ちょっと違うかな」

「違うんですか!? 興味深いです」

「あー、なるほどね」


 ここでようやくプラシアの真意に気が付いた。

 如何して僕に付き纏っているのか、その理由が明らかになる。


 要するに、プラシアは魔王所のことが気になるんだ。

 ただのテーマパーク……でありながら、人死にも受け入れる恐ろしいダンジョン。

 この街を、ディアレイを支える観光地であると共に、難攻不落の居城だ。

 その内部に隠された不思議構造に興味を持つのも不思議じゃない。


「確かに、興味深いよね」

「あれ? ユイガさんが管理しているんじゃないんですか?」

「僕? 僕がする訳ないでしょ」


 プラシアさん、僕が管理していると思っているのかな?

 あはは、そんな訳がないでしょ。魔王城の経営だけでも大変なのにさ。

 全く、僕のことを買い被り過ぎないで欲しいよ。


「ユイガさんじゃないんですか!?」

「当たり前だよ。僕の何所に、そんな頭脳があると思ってるの」


 自分で口にして悲しくなって来た。

 何せ僕はギアッド義兄さんのように賢くない。

 本当家族の落ちこぼれだなって何度も嫌になる。


「では一体誰が?」

「それは……まぁ、僕の義理兄弟姉妹(かぞく)かな」

「ご家族ですか?」


 少しだけはぐらかすことにした。

 何せ僕の家族はみんな魔物。プラシアに下手にバレたら大変だ。

 みんな僕より強いし、プラシアなんて敵じゃないと思うけど、気絶でもされて説明が増えても嫌なんだよね。


「ザックリ説明すると、魔王城を中心にして、色んな所に自由に出入りできる、転移装置を置いているんだよ」

「そんなことが可能なんですか?」

「可能だよ。僕にはサッパリ理解できないけどね」


 本当に凄いとしか言いようがない。

 何せこの装置を開発したのは、世界でも数人だけ。確か僕の知っている限りだと、二人か三人だった筈だ。

 曖昧だけど、その内の一人が、僕の義理の兄さんでギアッド義兄。自慢の義兄で、僕なんかじゃ足下にも及ばない。


「あの、その装置をもっと多くの方に利用して貰うのは?」

「ダメダメ。こんなのがバレたら、世界の均衡がまた一つ崩れちゃうでしょ?」


 プラシアは変なこと言い出した。こんな装置や機構が外部に知られていい訳がない。

 仮に知られたからと言って到底真似できるものじゃない。

 それでも一度誰かの耳に知られれば、爆発的に噂が拡散される。

 そんなことになっても、僕達には何の得も無いし、寧ろ知られていない方が好都合だ。


「そんなことよりもさ、プラシア。本当に付いて来るの?」


 僕は改めてプラシアに訊ねた。

 本当の本当に、魔王城に足を運ぶ気なのだろうか?

 メリットなんてものは一切ない。邪魔って訳じゃないけど、魔王城は魔物が多い。

 プラシアには相応しくないんだけど、もう心に決めているらしい。


「もちろんです。私はユイガさんに付いて行きます」

「なんで僕に付いて来るのか全然分からないんだけど」


 プラシアの考えていることが読めない。

 いや、読もうとするのが間違いなのかな?

 首を捻ってしまうと、溜息が零れ落ちる。


「はっ。分かったよ、それじゃあ転移するよ」

「えっ、ここからですか!?」

「ううん、こっちこっち」


 僕は壁のスイッチを押した。

 すると壁に扉が出現して、僕はプラシアを手招きする。


「こんな所に扉があったんですか?」

「扉があったんだよ。僕達家族しか使えない、特別なギミックかな」

「凄いです。お店にも仕掛けが施されていたんですね!」


 プラシアは瞳を輝かせていた。

 瞳の中に幾つもの星がキラキラと咲く。

 興奮状態になってもいいけど、そのままにじり寄らないで欲しいな。


「プラシア、落ち着いて。落ち着いて、落ち着いて……うわぁ!」

「きゃっ!」


 プラシアは僕に近付いた。

 その拍子に足を躓くと、部屋の中で重なる。

 狭い部屋なのに、蒸し暑いよ。世間的にはご褒美? なのかもしれないけど、全然嬉しくない。


「ううっ、なんでこんな狭い部屋に押し込まれて。もういいや、転移!」


 僕とプラシアは狭い部屋の中に押し込まれた。

 流石に早く転移しないとマズい。

 そう思うと急いで転移装置を起動させると、魔王城まで一瞬で消えた。

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