第16話 女の子に押し倒されてしまった
素が出るユイガ、緊張なプラシア。
「えっ、本当にお金取るんですか!」
プラシアは本気で驚いていた。
カウンターに乗り出すと、不安そうな目をしている。
「もちろんだよ。だって回復ポーションを買いに来たんでしょ?」
「そ、それは払いますけど。相談まではやり過ぎじゃないですか?」
回復ポーションの代金は絶対に払って貰う。
だけど人生相談料は払いたくないらしい。
うーん、それはちょっと割に合わない。
「いやいや、うちはただの道具屋。人生相談は専門外なんだよ?」
「そうかもしれないですけど」
「そうかもしれないだよ」
僕は絶対に曲げる気がない。
何せ人生相談なんて専門外だ。
それを僕がやる羽目になるなんて、こんなのイレ―ナ義姉さんの専売特許だよ。
「はい。千五百ZGでいいよ」
「か、格安ですね」
「格安にしてあげたよ。はい」
「わ、分かりました」
プラシアは財布を取り出した。
お金を手渡してくれると、僕は代金を受け取る。
とりあえず丁度受け取った。とりあえず、代金額には見合っている。
「さてと、それじゃあ店を閉めるよ」
「えっ? 閉めちゃうんですか?」
「当たり前だよ。だって今日は店を開ける日じゃないんだから」
店を開ける日じゃない。
プラシアが流れ込んでくるのは予想外だった。
無事に売買も済んだんだから、早めに出て行って欲しいな。
「はい、プラシア。僕は店を閉めるからね」
「ま、待ってください!」
「待つってなに?」
一体何を待つ必要があるのかな?
店を閉めるって言ったら閉めるんだよ。
カウンターから出ると、プラシアの背中を押す。
「はいはい、帰ろうね」
「ま、待ってください。私はまだ」
「いやいや、僕にも時間を浪費する暇は無いんだよ」
正直、最低なことをしているのは重々承知だ。
だけど早めに戻らないとマズい。スライムの様子をミニゴーレム達に任せ過ぎてもダメだ。
「はい、また買いに来てねー」
「ユイガさん、待ってください。私はユイガさんと……」
ガチャリ!
プラシアを店の外に追い出した。
急いで扉を閉めて、鍵を掛けておく。
これでプラシアが店に入ってくることはない。
きっとまた店を利用してくれる筈だと期待する。
「さてと、そろそろ戻らないと……」
扉を背にした瞬間だ。
急に扉の向こう側が眩く光り出す。
「我に与えんは光の源、司るは万能の鍵—マスター・キー」
何だろう、魔法を唱えているのかな?
しかも今、“マスター・キー”って言ったよね?
結構強力な魔法だけど……まさか!
「いやいや、それはないでしょ」
僕はドアノブをガッチリ押さえた。
だけどそんなの無駄な抵抗だ。
閉めた筈の錠が外から開かれると、僕の抵抗は空しい。
だって筋力ないんだもん。鍛えてもないんだもん。
「(ガチャリ)ユイガさん、勝手に話を終わらせないでください」
「いやいやいやいや、なにやってるの? 不法侵入だよ」
「まだ侵入していません」
「してなくても、勝手に鍵開けてるでしょ!」
こんなに強引な人だったとは思わなかった。
僕はトン引きしてしまうと、ぞっとして言葉に出せない。
だけどこれが女性の本性なんだ。怖いな、もしかして普段は温厚なリミエナも、怒ったらこんなに怖いのかな?
「女性は下手に刺激して、怒らせない方がいいかも」
「なにを言っているんですか? 私は別に怒っていませんよ」
プラシアは怒っていないらしい。
だけど僕には怒っているように見える、そう感じる。
今までの経験則で伝わると、ゾクリとして背筋が凍った。
「ユイガさん、入ってもいいですか?」
「ダメだよ」
「ではここで言いますね。ユイガさん、私を雇ってください」
「!?」
急に変な方向に舵が切られたんですけど!?
一体何処からそんな言葉が出て来るのかな? 要素あったのかな?
もしかしなくても見逃がしててた? フラグが何処に投下されていたのか思考を巡らせるけど、もう拾い上げられない。
「別にいいかな」
「そんな!」
速攻でお断りします。
何故かって? うちの道具屋週に三日しか開けないんだ。
わざわざ誰かを雇うなんて必要ない。
「ですがこのお店は、開店時は非常に賑わっていますよね? 人手が……」
「大丈夫大丈夫。それくらいなら、僕一人でも余裕で回せるから」
残念なことに、プラシアを雇う必要がまるでない。
だって僕一人で余裕で回せちゃうんだもん。
力を借りなくても全然何とかなった。
「そ、そこをなんとか!」
「ダーメ。要らないものは要らないの。そもそもこの世で最も高いのは人件費なんだからね」
結局経営で一番苦しいのは、人件費だと思ってる。
無駄に人件費を掛けるくらいなら、無人販売とかの方がマシ。
そうしないのは、うちの店の商品が、非常に繊細だからなんだけど、週に三日程度だ。
僕一人でもなんとかなっている時点で、別にプラシアに頼らなくてもいい。もっと細かく言えば、プラシア以外でも誰でもよかった。
「ってことでお引き取り願うよ。また客として来てね」
「ユイガさん……あのっ、うわぁ!」
「えっ、ちょっと……ぐへっ」
急にプラシアが店内に押し入った。
はいはい、不法侵入でーす。これは警察に突き出しても文句言われないよね?
そう思った矢先だった。
プラシアは床板の間に爪先を挟んだ。
何て器用なんだとか感心してられない。
体勢を崩した拍子に転んでしまうと、僕も巻き込まれる羽目になった。
「お、重い……けど」
まさか押し倒されちゃうなんてダサいな。
それにしても重い。人間が上に乗ってるんだから当たり前だよね。
だけど柔らかいものが当たってる……けど口に出したらぶちのめされるから言わない。
「す、すみません、ユイガさん。あの、庇ってくださって、ありがとうございます」
「うん、庇った訳じゃないけどね。怪我をしていないみたいでよかったよ」
「は、はい」
別に僕は庇った訳じゃない。巻き込まれただけなんだ。
だけどプラシアが怪我をしていないみたいでよかった。
ホッと胸を撫でる気持ちを抱くと、プラシアは恥ずかしそうで、顔がちょっとだけ赤かった。
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