第15話 お客さんとして
最後のシーン、好き。
「それよりプラシア、なにか買いに来たんじゃないの?」
「そうでした。あのユイガさん、実は回復ポーションが欲しいんですけど」
「回復ポーション?」
プラシアが店に駆け込んできた理由。
それは何か買いに来たからに違いない。
そこに偶々僕が居ただけ。余計な雑談をしてしまった。
「回復ポーションが欲しいの?」
「はい!」
何故回復ポーションを買うんだろう?
プラシアは確かに自分を治せない。
なんかフラグみたいで嫌だけど、そんなのぶっ壊すんだろうな。
「えっと、それなら他の店にも売ってるけど?」
「この道具屋がいいんです!」
「うーん、まぁいいけど」
プラシアは何故かこの店のものが欲しいらしい。
しかもこんなに力強く言われるなんて、断れないよね。
僕は在庫から回復ポーションを取り出すと、カウンターにポンと置いた。
「はい、これでいい?」
「ありがとうございます。やっぱりこのお店の回復ポーションは綺麗ですね」
「ああ、そういうこと。不純物が無いからだよ」
プラシアがうちの店の物を買ってくれる理由。
回復ポーションを不純物を今日苦言まで取り除かれている。
そのおかげで品質は高いし、何より飲みやすい、塗りやすい。
(本当、イレ―ナ義姉さんの理論を形にしたギアッド義兄さんって凄いよ)
うちの店で売っている回復ポーションは本当に凄い。
イレ―ナ義姉さんの理論をギアッド義兄さんが形にした。
あのギアッド義兄さんが三ヶ月も掛かった代物なんだ。
売れて貰わないと困るし、使って貰わないと元値が取り戻せない。
「あの、どうしたらこんなに凄い効果の回復ポーションを作れるんですか」
「あはは、グイグイ来るね」
「はい!」
プラシアはグイグイ質問してきた。
回復役なんだから気になっちゃうよね。
何せ自分の命の生命線。おまけに自分の役割を奪う敵なんだ。
「でもごめんね、企業秘密なんだよ」
「ですよね……」
マジの企業秘密なんだよね。
だって材料なんて至極単純なものばかり。
それを上手いこと蒸留しているだけなんだからさ。
「でも、本当に凄いです。いつか、いつの日か、回復役が必要のない、安全なダンジョン攻略ができればいいんですけどね」
「あはは、できると思うけどね」
「はい……」
何処となく寂しそうな口ぶりだ。
けれどプラシアが想ってのことだろう。
何せ回復役は貴重だ。そもそも回復魔法が使える人は少ないんだよね。
「回復役は引っ張りだこでしょ?」
「はい。必要とされるのは嬉しいんですけど……今のままでいいのか悩んでしまって」
プラシアの悩みは僕には分からない。
実際問題、回復魔法の使えるプラシアは、色んな冒険者パーティーから重宝される。
もちろん薬や医療技術もあるけれど、回復魔法は強力だ。
その力を必用としている機関は多いし、病院でも頼まれることがあるって聞く。
つまり役割は非常に大きい。
おまけに必要とされるから、かなりお金になる。
経済的には余裕なんだろうけど、居た堪れない気持ちがあるんだ。
回復魔法を必用とするってことは、それだけ危険が付き纏うってことだから。
「プラシア、考え過ぎだよ。必要とされることは大事なことだよ?」
「それは分かっています。ですが」
「はいはい、プラシアの言いたいことは分かるよ。回復役としてこのまま危険に飛び込み続ける冒険者達を見てられないってことでしょ?」
「ううっ」
図星だったみたいだ。本当真面目で優しいんだから。
プラシアの気持ちを簡単にだけど察してみた。
でも、そんなことはプラシアが考えても仕方ない。
だって冒険者はみんなバカなんだから。
「あはは、バカだよプラシアは。バカみたいに真面目過ぎる」
「ユイガさん?」
突然笑い出した僕。プラシアは驚いている。
一体何がバカなのか、きっと分かってる。
分かっているから反発しないんだ。
「あはは、冗談だよ」
「冗談に聞こえませんよ」
「ごめんね。でもね、一つだけ確かなのは、プラシアが真面目ってこと。それだけ自分の存在意義とか周りの人達のことを必死に考えている証拠だよ。凄く偉いことだよ。誇っていい筈だよ」
結局僕が言いたいのは、プラシアが凄いってことだ。
自分のことだけじゃなくて、周りのことをよく見ている。
そのおかげかな? いや、そのせいかな? プラシアが道を見失い掛けている。
「ユイガさん、真面目な私はどうしたらいいですか?」
「好きにしたらいいよ」
「好きにしたら、ですか?」
真剣に訊ねられても困るんだよね。
そんなの好きなようにすればいい。
自分の人生なんだ。誰が責任を取る訳でもない。
「そうだよ。自分の人生なんだから、自分の好きにしたらいい。考えても、迷っても、気に病んでも、それが今一番必要だからしていることなんでしょ? だったらユックリ考えればいいんだよ」
僕は当り障りのない言葉を並べた。
正直人生相談は苦手で、たった一言で人生を決められても困る。
まぁ、プラシアに限ってそんな甘いケーキみたいな神経をしてる訳じゃないだろうけど。
「考えることも、迷うことも、気に病んでしまうことも、今は必要なことですか?」
「そうなんじゃないかな?」
「はぅー……なんだかシックリ来ました」
「そっか、よかったね」
えっ、何がシックリ来たの? マジでこんなことで分かったの?
僕には分からないな。うーん、分からないな。
プラシアがそれで何かを掴めたのならいいと、とりあえず真面目な顔で頷く。
「つまり、好きにしたらいいってことですね」
「そうだね。好きにしたらいいよ」
「はい、では好きにさせていただきます」
プラシアはニコッと笑みを浮かべた。
心身共に蝕んでいた鎖が解けたみたいで安心する。
「それはそうと、プラシア」
「はい?」
「お代、まだ貰ってないんだけど。回復ポーション代と、人生相談料。ちゃんと払ってよね」
「えっ、お代ですか?」
「もちろん、お代だよ。はい、一括で払ってね。ツケは……基本的にやってないけど、特別に利息は無しでいいよ。てへっ!」
僕は笑顔で手を差し出した。
手のひらを上にすると、代金を要求する。
ポカンとした顔を浮かべるプラシア。いやいや、ちゃんと払って貰ないと困るからね。
無言の圧力で催促すると、プラシアは挙動不審な態度を取っていた。
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