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魔王が死んだので魔王城をテーマパーク化したら、家族の中では最弱な僕が“魔王役”になった……人間相手には負けないけどね。  作者: 水定ゆう
1章

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第12話 シュトルム義姉さん

シュトルム義姉さんの仕事は国際配達員です。


「シュトルム義姉さん!?」


 店にやって来たのは、まさかの人物だった。

 いや、まさかってことは無いのかもしれない。

 僕は予定だにしていなかった義理の姉の登場に驚いている。


「どうしたの、ユイガ?」

「いや、シュトルム義姉さんこそだよ。どうしてこんな所に? 今日は店休みだよ?」


 シュトルム義姉さんは僕の顔を見ると首を捻る。

 いやいや、首を捻りたいのは僕の方なんだけど。

 今日は店は開けない日だ。それなのにピンポイントでやって来るなんて、まるで図っていたみたい。何かあるのかな? 僕はシュトルム義姉さんの表情が読めなさすぎて怖くなる。


「休みなのは知ってる」

「知ってるならどうして?」

「どうしてもなにもない。届け物」


 シュトルム義姉さんはそう言うと、肩から下げた鞄に手を突っ込む。

 特別製の魔法の鞄で、中には様々な手紙や荷物が入っている。

 それらを小型化して持ち運ぶにはそれだけ性能の高い魔導具が必要で、現にシュトルム義姉さんは常に持ち歩いていた。いや、持ち歩かないとダメだった。


「届け物?」

「そう、知り合いだから急いで持って来た」


 シュトルム義姉さんが如何して特別製の超高性能な魔法の鞄を持っているのか。

 それを作ってくれたのが、リミエナだからってこともあるけど、そうじゃない。

 シュトルム義姉さんの格好。何処となく動きやすさ重視の装備で、特定の職業の格好だった。


「いつもありがとう、シュトルム義姉さん」

「構わない。これが仕事」

「えっと……忘れては無いよね?」

「もちろん。あくまでも副業としての仕事」


 シュトルム義姉さんの仕事はとても大変だ。

 それもその筈、本業のために副業を兼ねている。

 そのせいだろうか? シュトルム義姉さんは、実際問題、エースの格を与えられているらしい。


「私は国際配達員。だけど、本業は忘れてない」

「それがこれってこと?」

「そう言うこと」


 シュトルム義姉さんはとてつもないエースだ。

 圧倒的な飛行速度を披露して、世界中を駆け巡っている。

 そのせいで、なかなか帰って来られない。

 それでも本業の方はシッカリと務めてくれていて、義理の弟だけど、本当にカッコいい。誇らしい義姉だった。


「読んだ方がいい系?」

「多分」


 僕はシュトルム義姉さんから渡された手紙を見る。

 差出人は見知った人物で、確かに本業だった。


「テッセンさんから? なんだろう」


 僕は封筒を開けてみた。中身の手紙を手にする。

 パッと開いてザッと上から読んで行くと、確かに本業。

 他の場所では決して口には出せない、うちだけの特権だ。


「テッセンがなんって?」

「新作の武器ができたみたいだから、今度卸してくれるって」


 テッセンさんは知り合いのドワーフだ。

 職人気質で、奇抜だけど最高の武器を作ってくれる。

 僕が個人的に取引をしている中で、かなり良好。

 定期的に基本的な武器類と一緒に、特別な武器も独占的に卸してくれていた。


「そう、よかった」

「本当に助かるよ。新しいムーブメントを起こさないと、お客さん逃げちゃうからね」


 冒険者は結構財布事情に厳しい。

 それでも、冒険者には派手好きがかなり多いのは言わずもがな。

 そのおかげかな? 奇抜で本当なら扱えないようなヤバめな武器も、冒険者は買ってくれる。普通にカッコいいや可愛いが正義なんだから、僕達の利益に繋がってくれた。


「売れ行き悪いの?」

「ううん、全然。寧ろ好調だよ」

「よかった。……魔王城の方は?」

「経営の方は何とかなりそうだよ、シュトルム義姉さん。でも、配置している魔物の数がね」


 経営とか利益率はいいんだよね。

 だけど、シュトルム義姉さんが心配してくれている通り、問題が起きている。

 魔物の数が圧倒的に足りてない。今さ、魔王群に属してくれている魔物達が、色んな所に出払っちゃってるんだよね。あはは、それで僕が戦う羽目になるなんて……本当冗談じゃないよ。もう無理無理、勘弁して。


「魔物の数が足りてない?」

「うん。正直、魔王城の方は今、やってないんだ」

「そう」

「そうなんだよ。僕がシュトルム義姉さん達みたいに、強かったらこんなことで悩まなくても済んだのにね」


 僕は弱い。義理の家族の中で圧倒的に実力が劣っている。

 そのせいで、いつも義兄弟姉妹には迷惑を掛けちゃう。

 そんな自分が情けなくて、笑ってはいるけれど、心ではションボリしていた。


「ユイガ、それは違う」

「えっ、違わないと思うけど?」


 何も間違ってないし、おかしなこともないんだよ、シュトルム義姉さん。

 変に励ましてくれなくても大丈夫。僕、別に傷付いてないから。


「ユイガは優しい」

「優しいって、ソレって経営に役立つのかな?」

「慕われてる」

「うーん、慕われるっていうより、心配されてるだけな気がするけど」


 寧ろ舐められている気さえした。

 だって、うちで働いてくれているミニゴーレムや掃除用スライム達。

 動きを見ていれば分かるけれど、完全に舐められているとしか思えなかった。


「今だって、除去剤を……って、シュトルム義姉さん、お願いがあるんだけど!」


 僕は忘れないように思い出した。

 すぐさま口を開くと、キョトンとするシュトルム義姉さんに頼んだ。


「なに?」

「シュトルム義姉さん、除去剤が無くなっちゃったんだよね。できれば大量に仕入れて欲しいんだけど……早めにお願いできるかな?」


 僕は忘れかけていた除去剤のことを口に出した。

 そもそも、除去剤がなくて困っていたんだ。

 それをシュトルム義姉さんなら解決できる……筈。期待を寄せた。


「除去剤? 分かった」

「本当!? ありがとう、シュトルム義姉さん」

「別に構わない」


 シュトルム義姉さんは無茶ぶりに対応してくれた。

 本当は職権乱用なんだろうけど、私用に費やす時間と余裕がある。

 僕はホッと胸を撫で下ろすと、シュトルム義姉さんの頬が若干赤いことに気が付いた。

 頼られて嬉しそうで、クールで無表情に見えて、中身は可愛い。


「けど大丈夫かな?」

「……なにか不安?」


 不安が押し寄せてくることはあるよね。

 でもこれは単なる不安じゃない。もっと漠然とした申し訳なさだよ。


「シュトルム義姉さんに頼んじゃって。二度手間になる気が」

「気にしなくてもいい」


 シュトルム義姉さんは忙しい。

 そんな忙しくて多忙なシュトルム義姉さんを巻き込むのはダメな気がした。

 けれどシュトルム義姉さんは優しくて、表情を一切変えずに言い張る。


「シュトルム義姉さん?」

「私は国際配達員のエース、自慢の義姉を信じて」


 シュトルム義姉さんが自信満々に宣言した。

 いつもならこんなこと言わないのに。

 多分カッコつけてるんだよね。流石に義理でも兄弟姉妹関係は長いから、僕にでも分かっちゃった。そんなカッコよくて可愛い義姉を、やっぱり僕は尊敬した。

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