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魔王が死んだので魔王城をテーマパーク化したら、家族の中では最弱な僕が“魔王役”になった……人間相手には負けないけどね。  作者: 水定ゆう
プロローグ

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第1話 新時代の魔王城

新作小説です。

ここから始まるのは、義理の兄弟姉妹が送る、魔王城ダンジョン化計画である。

 数年前、この世から魔王が一人消えた。

 勇者に打倒された訳じゃない。

 普通に、寿命を迎えてしまったんだ。


「義親父、本当に死んじまったんだな」


 ギアッド義兄さんは唇を噛んでいた。

 仕方のないことだけど、僕だって凄く悲しい。

 腕っ節が強く、勇敢で頭のいい義兄が、窓から空を見上げて顔色を見せないようにしている。


「ううっ、パパ……」


 シャベル義兄さんは泣いていた。

 潤んだ目を浮かべて、大粒の涙が溢れる。

 床を水浸しにすると、泣きじゃくっていた。


「……」


 シュトルム義姉さんは無言で立ち尽くしていた。

 壁に寄り掛かると、羽を休めている。

 顔を埋めて表情を隠しているから、きっと泣いてる。


「皆さん、シッカリしてください」

「お姉ちゃん」


 イレ―ナ義姉さんと義妹のリミエナ。二人も声を振り絞っていた。

 お通夜状態の暗い雰囲気で華いけない。

 ただでさえこの建物は暗いのに、萎れていてはダメだと奮起する。


「姉さん、ダメだよ。僕達は……」


 そんな中、僕は腑抜けた言葉を吐いた。

 もちろんそれも仕方がないことで、イレ―ナ義姉さんも分かっている。


 僕達にとって、魔王は父親同然だった。

 身寄りを無くして、生き倒れるしかなかった僕達を拾ってくれた。

 魔王なのにとっても優しくて、頼りになって、配下の魔物達から慕われていて、本来なら敵である筈の勇者や王国の騎士団とも友好的な関係を築き上げてきた。

 そんな偉大な魔王が僕達の義父が死んだんだ。信じたくないのは当然で、言葉を出すこともできない。


「いや、このままではダメだな!」


 そんな中、奮い立ったのは勇敢なギアッド義兄さんだった。

 窓の傍から離れると、顔を涙で汚していた。

 もちろん、誰もその顔を否定しない。だって、僕だって泣いているんだから。


「泣くのは止めだ。楽しくない!」

「ギアッド義兄さんは凄いね。僕達にはそんな……」

「がーはっはっはっ、機械の体に置き換えたからな。俺はこんなことで悲しまない……いや、悲しむ訳にはいかない。義親父は死んじまったんだ。だったら、俺達が義親父の代わりをするしかないだろ」


 ギアッド義兄さんは凄い。

 誰よりも早く立ち直れるのは、新しい家族の大黒柱だから。

きっと義父さんの代わりになろうと、本気で立ち上がったんだ。


「ギアッド義兄さん」

「ユイガ、お前なら分かる筈だ」

「僕なら?」


 ギアッド義兄さんは頭が凄くいい。

 だけど時々何を言っているのか分からないくらいバカになる。

 だから僕には全く通じない。首を捻って考えてしまう。


「そうだ。お前なら、俺達の中で唯一まともなお前ならな」


 ギアッド義兄さんの言葉に僕の心は貫かれた。

 グサリと痛みが走ると、つい胸を押さえてしまった。

悪気が無いのは分かる。だけどギアッド義兄さんには、そんなデリカシーは無い。


「唯一まともって……ギアッド義兄さん、そんなこと言わないでよ」

「いや、事実だろ。お前だけは、俺達とは違った感性を持っている」

「うっ……」


 確かに血縁関係の全くない、義理の兄弟姉妹の中で、僕だけは明らかに違う所がある。

 だけどそんなの、誤差の範囲だと僕はずっと思ってる。

 寧ろ僕一人だけが、義兄弟姉妹の中で劣っている。圧倒的に弱いっていう、コンプレックスを抱えていた。


「ギアッド義兄さん、僕は弱いよ。兄弟姉妹の中で誰よりも……」


 僕だけは圧倒的に弱い。

 そんなのは百も承知の事実で、悔しくも何ともない。

 ずっと分かっていたんだ。僕だけは兄弟姉妹の誰にも及ばない。


「そんなこと無いだろ。弱いって言うのは、強さだ」

「意味が分からないよ……」

「分からなくても大丈夫だ。だがユイガ、お前なら分かる。本来なら、俺達魔物はここまでの家族関係を築き上げることは無い」

「それは……」


 僕には分からないし、分かりたくもない。

 だって、例え血の繋がりが無くても、お互いに生まれも育ちも違っていても、僕達は昔から義理でも何でも兄弟姉妹だ。

 それ以外の何物でもないからこそ、僕はその先に進めなかった。


「ギアッド、シャベル、ユイガ、シュトルム、それからリミエナ。集まって」


 そんな中、イレ―ナ義姉さんが手を鳴らした。

 僕達の視線が一斉に集まる。

 イレ―ナ義姉さんは、覚悟の決まった目をしていた。


「お姉ちゃん、どうしたの?」

「義父さんは亡くなってしまいました。それは変えられない事実です」

「イレ―ナ、そんな悲しいこと言わないでよ!」


 イレ―ナ義姉さんに対して、シャベル義兄さんが反発した。

 その気持ちは凄く分かる。どうしようもない気持ちで一杯だ。

 だけど僕達の義父さんは帰って来ない。

 それだけは変えられない事実で、心のダムが決壊した。


「ううっ……僕達はどうしたら」

「泣かないでください、ユイガ。私達は前に進まなければいけません」

「そうは言っても、イレ―ナ。難しい話」

「そうですね、シュトルム。それでも前に進まなければいけません。私達には……“生活(・・)がありますから(・・・・・・・)

「「「……」」」


 みんな黙るしかなかった。

 そうだ。僕達にだって生活がある。

 純粋な魔物なら、そんなもの最小限でいいのかもしれない。

 だけど僕達はみんな慣れ過ぎた。この魔王城の維持管理だって、結局はお金が掛かるんだ。


「ううっ……やるしかないのかな?」

「そうですよ、ユイガ」

「はぁ、ここに来て資金繰りか」


 イレ―ナ義姉さんの言葉が、グサリと全員の心を突き刺す。

 縄で縛り付けると、僕達には自由が無いことを悟らされる。

 このままじゃ食べていけない。明日の僕達の生活が懸かっている。


「とりあえずできることはやるしかないの?」

「そうです、シャベル。貴方の脚、頼りにしていますよ」

「それは任せて欲しいよー。でも、僕達がなにをしたらいいの?」


 シャベル義兄さんの言う通りだった。

 結局僕達の明日を左右するのは、今を如何すればいいのかだけど、その方法がまとまっていない。

 こんなお通夜みたいな空気じゃ、僕達にできることなんて限られている。


「でもお姉ちゃん、どうしたらいいのかな?」

「リミエナ、決まっていますよ。私達には素晴らしい義父の遺産がありますから」

「「遺産?」」


 イレ―ナ義姉さんは突飛なことを言い始めた。

 義父さんが遺してくれた遺産?

 リミエナはキョロキョロと視線を巡らせる中、イレ―ナ義姉さんは笑って答えた。


「そうです。私達が新しい魔王軍を率いて、魔王城を盛り上げるんですよ。そうすれば、私達は前に進める筈です。義父さんのような、いえ、それを超えるような家族の絆を紡げる筈、私はそう信じています」


 イレ―ナ義姉さんはとっても眩しかった。

 とても真面目で真っ当に生きようとしている。

 そんな温かみに触れると、情けない気持ちなんて口に出せない。


「はぁ、仕方ねぇな」

「やってみる-?」

「仕方がない、背に腹は」

「帰られないよね?」

「えへへ、それじゃあお姉ちゃん、頑張ってみるの?」

「ええ、私達ならできる筈です。新しい魔王群の発足と、素晴らしい魔王城を」


 僕達は止まっていた脚を動かすことを決めた。

 このままじゃダメだと、今できることをやってみようと決めた。

 僕なんかじゃ、家族の役には立てないと分かっているけれど、きっと僕以外の家族が何とかしてくれる。そんな期待と言うよりも、僕自身の不甲斐なさを痛感しつつ、追い付けるように迷わないように努力しようと決めた。

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