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パパと娘  作者: kuroru
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第一話/やあ、ハロー。

「皆さんこんにちは。僕の音はどうでしょか! 素晴らしいでしょう!!」

「えぇ、えぇ。そうですとも。これより始まるは摩訶不思議な大楽曲! あなた方程度が知るそれとは違うのですよ、ねぇ? そこのあなた?」

 弓を番え弦からずらすな。弓を番え弦から離すな。見ずに成功するまで只ひたすらに弾け。

私の心を表すにはこの小さな箱をより輝かせなければ成らぬのだ。人に聴かせるべきはそういう音のみよ。

「ぱぱー?」

 ん?

「あーいたいたー」

「おや、なにかな?」

 浮ついた表情……。いやどちらかというと困った表情か。どうしたのだろう。

「この子。この子ね? すごく泣いているの。でもどうしてか僕はこの子に寄り添えなくて」

「うん。それで?」

「それでね。なんでだろうって考えてたら分からなくなっちゃった」

 つまり教えて欲しいわけだ。

 さて知らない本を一から読むのは面倒くさいし、かといって適当なそれもあり得ないか。どうしようか。

「あ、そうだ」

「ん?」

「僕その物語知らないから教えてくれる? なるべく要約して教えて」

「わかったあ」

 こうすることによってこの子は自身の脳をより刺激する。

一見すれば寄り添わない父親にでも見えるのだろうが、知ったことでは無い。この子が自分で道を切り開けるように為さなければ何の意味もないからだ。

 飛ぶ鳥が飛び方を親より知り得、また子に伝え行くように。人には脳を活性化させなければ成らん。でなければ先にあるのは不安や恐怖による死。まあ最も人はそれを放棄してきたお陰で今でもいじめや戦争は無くならん上に、個々の宗教により欺かれた僕らの信仰心は途轍もない村八分を生んだ。

 これらは忌み嫌わなければならない最も悪に近い人の心の状況だ。

 にしてもずっと唸っているな。かわいい。

子育ては嫌いだが教え導くのは性に合っているらしい。まあ既に知っていたことだが。

「答えは出たかな」

「まだですー」

 ふふ、面白い。

「物語の要約はね? そこで起こった現象だけを掻い摘んで話すんだ」

「現象だけ?」

「そうそう。少しこっちに来て」

「どこ行くのー。まてー」

「コップと水を取りにね」

「りょかい!」

 抜け取るやないかい。いっこ抜け取るやないかい。

「うううう」

 なんだこのコント、面白いな。僕も使お。


「さーてさて。辿り着きましたよ蛇口の前にぃ」

「辿り着いちゃったぞ蛇口の前に~」

 ってあれ。全部食器棚に直しちゃってたか。

 仕方ない取りに行こう。


「はいじゃあ水を入れました」

「うん、入ったね」

「で? 流します」

「じゃー」

「これ。君ならどう説明する?」

「ぅえ?」

 わお、すっごい気の抜けた返事。返されると思ってなかったな、こやつ。

「えーと。コップに水を入れて、その水を捨てた?」

「正解だ」

 嬉しそうにしとる。

「これが即ち。事象の大まかな部分だけを掻い摘むって事さ」


「水がコップに入ってコップから出た。捨てた?」

 考え込んでいるね。良い兆候だ。

 あ、そうだ。ひとつ面白い話がある。皆々様は知っているだろうか。

『子の先生になれた親は1割に満たない』という話なんだが。これはまあ言えばそのままなんだが。

一時的な快楽を求め恋慕に愛慕、性欲に子作りの情景と子と三人以上で組み合わされた家族的情景。

 希薄で軽薄な一時的不安乖離性に基づいた子の繁栄。その先にある親による子への虐待。些細な事にも答えられぬ先生にすら成れぬ未熟な親擬き共の世界。

 それが生むのは未熟な青年、青二才の誕生だ。

 未だ世界を知らんのに、誰かの教えに。乞えるそれに答えられると惰性か本気か、思っている。

「出来た!」

 だからお前らは『ルール』が大好きなのだ。

「よし。聞かせてくれ」

「この物語はね。二人の人間の話」

 胴ぐらいあるのによく持てるなその本。

意外と軽いのか、力が強いのか。

「ふむ」

「男の子と女の子が幼馴染の村育ち達。」

「うん」

「全部は読めてなくて、展開はよくわかんないんだけど」

「いいよ」

「その二人がねケンカしちゃったんだ」

「おやおや」

「その理由が、君ばっかりずるいって女の子が言っちゃった事が原因」

「なるほど。それで?」

「でもそのおもちゃ。男の子は前まで全然遊べてなくて、今初めて触ってね」

「でもねでもね、この子全然遊べてないんだよ? なのに女の子が泣いたら周りの大人が男の子を叱っててさ。変じゃない? だって女の子は遊べる時間があったのに遊ばなくて、男の子は遊びたくても遊べなかったんだよ?!」

「なるほどね」

「うん。それがどうしても気になって、先が読めなかったんだ」

 平等では無いんじゃないか、という疑問だな。

「わー。頭わしゃわしゃー」

「君の疑問は正しい」

「ほんと?!」

「ああ」

「君は何も知らない大人が男の子を責めているその状況が許せなかった、という事だ」

「うんうん!」

「この状況下で下手な行動を取ったのは周りの大人だ」

「女の子が泣き男の子が佇むとね。みんなこう思うんだ。『力なき者を力ある者が襲っている』ってね」

 ん?

「おや、思い当たる節がある様だね」

「うん。学校で見たことある。気がする」

 ほう。

「確かに筋肉は男性の方が付きやすく発達しやすい」

「だがそれはあくまで筋力の話だ。感情の話じゃない」

「当たり前じゃん!」

「そう。当たり前だ。だが出来ない」

「ぅえええー」

「特に今の社会だと猶更、『女性は表立って動くべき』という言葉ばかりが先行して、裏でやっているのは男性に対する区別別けや差別だ」

「……どうしてそうなっちゃったの?」

「簡単な話だ」

 そう、とてもな。

「女性が『学び』を捨てたからだ」

「学びを捨てた?」

「君の様に、あれやこれを知ってどうなっているんだろうと考える力さ」

「ほー。僕褒められた!」

 かわいいやつだ。

「あーわしゃわしゃされるー」

「そしてその学びが欠けた女性が母親になるんだ」

「えー」

「えーだよほんと」


「さて少しはお役に立てましたかな、お嬢様?」

「くるしゅうない!」

「なんと嬉しきお言葉」




どうも、ありがとう。

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