異世界・ユーラドルハ
地元で有名な私立高等学校に通っている曽瓦知制。彼は平凡な毎日を過ごしていくはずだった。
俺はクラスメイトと登下校道を歩いている。
「今日、テストがあるらしいけど、勉強した?」
「・・・・・・!?・・・・・・ヤッベ」
「先にー行ってるはー」
手を振りながらその言葉を口にする。
急いで学校に向かっていたはずだ。
「ここ・・・・・・は?」
それからの記憶がなく、気がついたら洞窟のような暗い場所にいる。
大きく聳え立つドアが目の前に現れ、そこから人が出てくる。
「なんじゃ、人ではないか・・・・・・お前は・・・・・・先ほどの少年ではないか」
美少年に見える彼は俺をみると笑い始める。
「私をなぜ知っているのですか?」
「知っているもなにも、われがお主を拾ったのだからな」
「拾ったって?」
「今から拾った理由を説明する」
「登校をしていたお主は、前から来る自転車を避けようした瞬間、車に轢かれそうになったのを拾ったというわけだ」
「自己紹介をしていなかったな・・・・・・われは、ゼデス。『なぜ、そんなやつが俺を拾ったとだろう』と思っているようだな」
「・・・・・・っ!?」
神は読心術を持つというのか。
ゼデスは俺の目の前に行き、俺の手の甲に魔法陣を描き始めた。
「これでわれの加護を授けた。今からお主を異世界・ユーラドルハに転移してもらう。」
ゼデスは彼の足元に先ほどの魔法陣とは違う魔法陣を展開させた。
「では、またの機会に」
魔法陣の光に目をやられた。
「ここ・・・・・・は?」
草々と広がる大地。遠くに聳え立つ塔。新鮮な空気。そして、雲一つない晴天の光。
ここが異世界・ユーラドルハなのか。
なんだこれは。
足元に茶色の袋、赤の袋、白の袋、アイテムボックスと書かれた黄の袋が置かれている。
それぞれの袋を開けると、茶色の袋には剣と硬貨が入っており、赤の袋には黒、青、紫の3つの石、白の袋には、加護、3つの石についての説明書が入っていた。
【説明書】
加護について
曽瓦知制にスキル「軍師」を授ける。もう一つ、知力、体力、速さのステイタス上昇効果も授ける。
3つの石について
黒石 作戦時、敵陣営として使える石
青石 作戦時、味方陣営として使える石
紫石 一定時間、味方の全ステイタスを上昇させる効果をもつ石
これら3つの石を曽瓦知制に授ける。
内容を確認した後、袋をアイテムボックスに入れ、塔に向かって歩き始める。
これからは1人の生活となるのだろう。
道中、全身緑の耳が尖ったゴブリンと呼ばれる魔物とぷよぷよとした軟体のスライムと呼ばれる魔物が争っていた。殺されるのは嫌だったので、早足でその場を退いた。
「あ・・・・・・あれは!?」
自由気ままにゆっくりと横断するスライムを発見。
アイテムボックスから剣を取り握る。
「うおおおおおおりゃゃゃゃー!」
勢い任せでスライムに突進し、一振りでスライムは散っていく。
「何だ?」
スライムがいた所に水色の石が落ちていた。
通りかかった女性に声をかけられた。
「あなたは誰ですか?お見かけしたことがないのですか?」
「遠き地からに来た者です。」
「なるほどね。今からどこに向かっているの?」
「どこって言われましても分かりません。初めてここに来たので」
「そっか。私はこの先の街に向かっているのだけど、どう?」
「おじゃまではないのでしたらお願いします」
会釈だけすると、目の前に満面の笑みの女性がいる。
「はい。喜んで!」
その女性は時々、後ろをちらちらと振り返る。
後ろには何もないはずだけど。
「?」
「どうかしましたか?」
「うんうん。なんでもないよ」
「そうですか」
何かから逃げているように思えてしまう。
女性についていく形で歩いている。
女性はふと止まって後ろを振り返った。
彼の横に行き、質問を始めた。
「今さらなんだけど、君の名前はなに?」
「俺は曽瓦知制」
「そがわらちせい?聞いたことがない名前ね。私は、ルナノ」
「ルナノさんって呼んでいいですか?」
「いいよ!」
ルナノさんは質問を終えたので歩き始めた。置いていかれないようについていく。
「そろそろ見えてきた」
ルナノさんが指を示した先には建物が多く聳え立っている。
ルナノさんは街に近づいていると顔を隠した。
壁と門の前にやってきた。
この壁は、街をモンスターから守るためにあるのだろうか。
進もうとすると、槍で門番に止められた。
「お前らは何者だ?その男は見たことがない服装をしているな」
「あのー遠い地から来た者なのですけど、ここには初めて来たので・・・・・・」
「遠い地から?まさか!?ハウサアークから来た者たちなのか」
なぜか、勘違いはしてるのだけれど、納得してくれた。
ハウサアーク?って街の名前なのか。
「そうか。だったらこの仮の通行書をギルドに持っていけばいい」
仮の通行書を2枚渡された。
「ここがルーナス」
「るーなす?」
門の先に広がる光景に驚いていると、ルナノさんは、また後ろを振り返った。
ホッとするルナノさん。
「さて、冒険者ギルドに行きましょう!」
街に着いてそうそう、走り始めた。
走る背を見ていると、幼い時に幼馴染と遊んだ時の光景を思い出した。
ルナノさんに案内されて、冒険者ギルドにたどり着いた。