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不死身探偵 不ニ三士郎  作者: ガイア
25/39

25 目張りされた浴室

赤文字で書いてあったそのページは8ページ目だった。


 待てよ!という雪知の声は、不二三には聞こえていなかった。復讐は完遂した。8年前の復讐を。柊ゆらぎの行方不明事件。不二三の頭の中に、不二三を殺した犯人の姿が浮かんだ。


 部屋に向かうと、鍵がかかっているようだった。


「鍵が……」

「探偵さん!」


 階段を上がってきたばかりの様子の昭道が、マスターキーを不二三に差し出した。

「姉さんを運ぶときに、衿の奥の方にあったのかぽろっと出てきました」


「ありがとうございます」

「この部屋で何かあるんですか?」


「メモ帳に書いてあったんです、復讐は完遂したと」


 部屋の鍵を開け真っ先に不二三の目に飛び込んできたのは、テーブルの前に落ちている灰皿だった。


「何故落ちているんだ?」


 拾い上げると、黒いシミがついている。ぱちと電気がつき、不二三が手にしている灰皿には、赤黒い血痕だと判明した。


「そ、それ、血ですか?」

「はい」

「そんな平然と……」


 それより、不二三は轟轟と聞こえている水の音が気になっていた。


「なんですかこの水の音?」


 気づいたらしい昭道への答えを出す前に、不二三はお風呂場に走り出していた。お風呂のある扉を開け、さらに脱衣所へと続く扉を開けると、


「なんだ!?」



 むせかえるような酷い熱気に包まれていた。


「熱っ!」


 昭道の声と共に、部屋の中に誰かが入ってくる気配がした不二三だったが、まずはこの扉をどう開くかということが重要だった。


「ガムテープでばっちり目張りされている」


 そう、恐ろしい程に頑丈に、絶対に誰にも中に入れないという要塞のようにガムテープで浴室の扉が閉ざされていた。


「しかも浴室の中は、真っ暗だ」

「電気をつけます!」


 浴室の電気は脱衣所の外にあり、電気がついたがもやが煙のようにかかっていて、全く様子がわからない。


 人の気配がしない浴室が、脱衣所が熱気に包まれているくらい熱くなっているにも関わらず電気がついておらず、さらにガムテープで頑丈に目張りされているという不可思議な状況に、不二三は眉をひそめた。


「不二三!」


 どたどたと部屋に入ってくる音と共に、雪知の声が飛び込んできた。


「誰かいるのか!」

「血じゃないか、これ」


 駆けつけてきた雪知の背後で、樫杉と菅原の声が響いた。


「すみません!皆さん、脱衣所まで来てください」



 不二三は今日一番声を張り上げ部屋に入ってきた全員を集めた。


「なんだよこれ」


 浴室を見て全員絶句していた。


「雪知、気絶していた立川さんは?」

「谷口さんに任せた」


「さっき西館の階段が封鎖されていて、そこから雪知さんが降りてこられて、そこで谷口さんに立川さんを任せて私と菅原と、雪知さんの3人で一緒に部屋に向かったんです」


 樫杉が早口で説明してくれたため、不二三は今ここに3人が入ってきた状況を理解することができた。


「ガムテープをはがしますので協力してください」


 はがしながらそういうと、全員で浴室の扉のガムテープにつかみかかった。一回だけではなく、2、3重と重ねて張り付けている。浴室はなぜか真っ暗で何が行われているのかわからない。


 しかし、轟轟と水の音は止まらない。


「よし!これでどうだ!」


 汗をぬぐった樫杉に頷き、不二三は浴室へと続くドアノブをまわした。


「……」


 まず噴火したマグマのように襲い掛かる熱気、そして嫌に耳にダイレクトに響く水の音。


「熱っ!」


 雪知が浴室に入ろうとしたが、浴槽から溢れているお湯の温度が高すぎるらしくタイルの床に敷き詰められたお湯が痛いほどに熱かった。


「酷い熱気だ」


 汗をだらだらながしながら樫杉が流れてくる汗に片目を閉じた。なんとか目を見開いて真っすぐ浴室の方を見た一同は、薄い黄色のタイルの上に、血文字のような赤い色で、8年前の復讐をと書いてある文字に、視線が釘付けになっていた。


「うわあああああ!!」

「血文字!?」


 脱衣所から浴室を除いた菅原が、大きな叫び声をあげてすぐ背を向けてしゃがみこんだ。


「俺は……俺は……」


「な、なんだ……あれ」


 浴槽の上に覆いかぶさる風呂蓋の間に少しだけ蛇口から流れるお湯を入れる隙間がある。浴槽の中に何かある。ここにいる全員がそう直感していた。


「どいてください」


 不二三は、汗はかいているが熱いお湯には少し片目を閉じるくらいでずんずん浴槽の方に進んでいき、そのまま熱気だけで肌焼けしそうなくらい熱い風呂蓋を掴んだ。

 浴槽を開けると、長い黒髪がわかめのようにゆらりゆらりと揺らいでいた。

  








「ぎゃあああああああああ!!」

「うわあああああああああ!」


 菅原と樫杉が叫び声をあげ、昭道が口元を抑えた。


 ガムテープで全身ぐるぐる巻きにされ、両目と口にガムテープを張られた女性が着物を着たまま溢れる熱湯の中に入れられていたのだった。不二三はまず50度以上もありそうな鉄の蛇口に触れる。熱い鉄板のような蛇口を皮膚を焦がしながらなんとか捻ってお湯を止めると、水に設定し、浴槽の床に水を流した。


そしてそのまま腕をまくって熱湯の中に腕を突っ込み、不二三はその女性を抱え上げる。


「くっ」


 しかし、不二三は力がないために着物を着たままでお湯を含んでさらに重くなっているため、持ち上がらない。


「不二三!」

「来るな!火傷する」


 そう叫んだ不二三は、熱さに身を焼かれる思いをしながら女性の背中から脇に腕を回して力をいれた。


「ぬうううう!」


 しかし、そんな不二三の背中に両腕が回された。


「え?」


「馬鹿、貧弱なんだから無理するな!」


 足を真っ赤にして雪知が入ってきて、滝のように汗を流しながら不二三と雪知は2人で女性を持ち上げた。途中で熱い熱いといって入ってこれなかった樫杉や菅原が入ってきて、昭道が不二三と雪知にタオルを渡した。


「ここにいる女性は、三人...昭道さんが、さっき死んで、立川さんが閉じ込められていたってことは」


 昭道が呟いた。


雪知は、肌の出ているところが真っ赤になっている女性を見つめて呟いた。


「おそらく...」

今日は、職場の先輩にスフィンクスとピラミッドは砂でできていないということと、エジプトは永遠の砂漠ではなく、街があることを教えてもらいました。

常識が知れてよかったです。

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