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3 商会の娘

 この家はもう駄目だ。


 多分王家を騙して私を嫁がせるつもりなのだ。婚約申請書には私ではなく1歳違いの義妹の名が書かれていたのを私は見逃さなかった。


 国を裏切る行為を貴族家が行って許される訳がないだろう。


 こんな愚かな男とその妻子と一緒に巻き添えなんかは絶対嫌だ――


 私はカフェで貰った彼女の名刺をポケットの中で握りしめ、眼の前の愚か者の言葉を聞き流していた。






 翌日、彼女に貰った名刺の住所にある大きな商会に向かった。

 遠かったけど香辛料の買い出しを理由にして馬車を出してもらい、彼女に面会を申し込むと直ぐに店舗迄降りてきてくれた。



 「こんにちは。どうかしたの? 顔色が悪いわよ?」



 相変わらず美しい艶のある髪の毛を見ながら、声を潜めて手早く『困り事』を説明する。



 「そう。ねえ、幾らか礼金を融通できるかしら? それが出来るならいい人を紹介出来るわ。彼ならきっと貴女を助けてくれるから」



 今迄貯めてきた貯金の額を告げると彼女は頷いた。



 「この後予定はあるの?」


 「ここで香辛料を買う予定だけなのよ。馬車で来たから早く帰らなくちゃ」


 「じゃあ、御者にちょっと話をつけて来るわ。待ってて」



 彼女は御者に何か言伝をして、紙幣を何枚か渡した。


 それを見てギョッとしたが、



 「あなたが支払うお礼の中から出たようなモノだから気にしないで」



 そう言って笑うと、私の手を引いて歩き出した。



 「店に今出してない香辛料だから倉庫出しになるから時間が掛かるので直接邸に商会から届けるって言っといたのよ。貴方は今から他の買い物をした後、一緒に商会の馬車で送るからって言ったら喜んで帰っていったわよ」



 世の中結局お金よね――



 小声で彼女がそう呟いたのがなんとなく耳に残った。



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