③
「いったいどこまで続くのかしら。いい加減にしてほしいのだけれど」
全くである。
長く暗い道が延々と続いていた。
ジル、リオル、ナージャ、そして小さいティナと大きいティナ。
彼女らは村を出てから数日、河をいくつかわたり北上していた。地形は草原から乾いた砂漠へと変化していった。岩山が乱立する中を縫うように進んでいくと、小さな洞窟へとたどり着いた。
洞窟の道は人一人が通れるくらいの狭さで、一本道。罠などはないが、ただ長かった。
洞窟に入る前は日が昇っていたが、今はもう暮れてしまっているだろう。いや、もう夜は明け次の日が昇っているかもしれない。
前も後ろもただ暗いだけの一本道は一瞬が数時間、数時間が何日にも感じられるようだった。もしかしたら自分はもう死んでいて、ずっとこの道をさまよい続けているのではないかと思えるほどであった。
「それにしても今頃主の母君はどうしているのでしょうな」
ナージャは主のいら立ちのとばっちりを食らわぬように、すかさず話題を振る。
「さあ? 追ってきてるか。今の小さい私みたいに死んだように眠ってるか。どっちかじゃない?」
ティナの視線の先にはリオルに抱かれている小さなティナ。もうずっと飲まず食わずなのにやせた様子もなく健康的である。いったいどんな薬を盛ったのであろうか。
「それだと主の母君の言っていた策はどうなるのでしょうか? 指揮するものがいなくてはいかな策も実行には移せますまい」
ナージャの言にティナはため息一つ。
「策もなにもママがあの村に来た時点で終わってるじゃない」「と言いますと?」「ジル姉にはママがどんな策を提案するかわかっていたってわけ。あらかじめもう策は準備済み。水計だって情報操作だって一朝一夕じゃない」「まあ、それはそうですが。であるならばジルルキンハイドラ様の目的とはいったい?」「そうね・・・ママの居場所を作るってところかしら」
さらに説明を求めようとするナージャの言葉を遮ったのはリオルだった。小さく「目的地だ」そうつぶやいたのであった。




