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落とし穴は落ちなきゃ、ただの穴  ―1―

また足してく感じになると思いますので、出来上がったらあとでまとめようと思います。

 各地を神出鬼没に現れる一人の魔女がいた。

 魔女の名は、ティナエルジカ。

 その姿は妖艶な女の姿をしているが、数百年の歳月を生き、その瞳に煉獄の炎を宿し、炎を操る獄炎の魔女と恐れられていた。

 そして、彼女は落とし穴を見れば落ちずにはいられない性である(本人に落ちる意思はないのだが)。

 きっとそのデカイだけの胸に栄養を取られて、脳みそがスカスカなのだとは彼女のペットの言である。

 ペットの名はナージャ。

 人語を解する稀有な紅い豹ある。

 ナージャは尊大な物言いだが、一応メスであり、それなりにモテた。

 オスたちがナージャをめぐって、争いあっているのを、『無様な奴ら』と見下していたものであった。

 だが、それも今は昔の話である。

 現在は馬車馬のように、実際騎獣としても使われるので言葉通りに、ティナの圧政に苦しむのであった。

 ナージャは願う。

 ああ、平和な日常が欲しい・・・と。

 そんなある日のこと。

 ティナとナージャは街道を進んでいた。

 街道はそれほど道幅はなく、しっかりと舗装されているというわけではなかった。

 人が歩くたびに土が踏みしめられ、道になってしまったといった具合だった。

 辺りには高い木はなく、名も知らぬ雑草たちが自分達の生息域を競い合っていた。

 ティナ達が歩く街道も人の行き来がなくなれば、ほどなく雑草たちの派閥争いに飲まれるのかもしれない。

「・・・」

「・・・」

 まっすぐ前だけを見据えて、進んでいくティナ。

 ナージャは少し距離を置いて、後ろを付いていた。

 いつも通りティナはビキニの水着のような服。

 下着とも変わらぬ気がするが。その上に良い子は見てはいけませんと、黒いコートを羽織っていた。

 ただ前ははだけたままなので、申し訳程度ではある。

 コートは両サイドに手を突っ込むだけのポケットが二つだけ。

 ジルの普段来ている物と比べると、機能的なものは皆無に近かった。

 背には赤い糸を中心に使われた意匠が施されている。

 普段と変わらぬ格好。

 だが、その上にはいつもと違うティナの険しい表情があった。

「・・・」

 黙々と進む二人であったが、ナージャが切り出す。

「主よ。いかがされたのですか?どこか調子でも悪いのでございますか?」

(バカは風邪を引かぬと言うが)

 ナージャを睨みつけるティナ。

 もちろんナージャがティナの心配をするはずもない。

 何も言わずにいれば、ナージャの背は軽いままで、ティナの相手をせずに済む。

 ただそのためには険悪な雰囲気を我慢しなければならなかった。

「何でもないわよ」

 何でもないのなら、そう不機嫌な気を振りまいてくれるなとナージャは思う。

 ナージャに一切の非はないので、なおのことそう思う。

「ただ嫌な夢を見ただけ」

「またでございますか?」

「『また』って何よ」

「いえ、数日前にも同じようなことをおっしゃっていたかと記憶しておりましたので」

「あら。そうだったかしら?」

(ついにボケたか)

「何よ。そのついにボケたかとでも言いたそうな顔は?」

「それはどんな顔でございます?もしそのような顔があるのなら見てみたいものでございます」

「そう。残念だけど、今は鏡なんて持ってないわ」

「それはそれは本当に残念でございますな」

「そうね」

 かんらと笑うナージャの笑い声が気に入らなかったのか、ティナは足を止め、ナージャを一瞥する。

 とっさにナージャは我が身を焦がす炎に身構えた。

 今までの経験からその炎が避けようもないことをよく知っていた。

 ただ目をつむり、灼熱を耐えるしかない。そもそもナージャが怒りの琴線にわざわざわざと触れなければ良いだけの話ではある。

 まあ、そこがナージャのナージャたるところの一つではあるのであろう。

 身構えて数刻。

 恐る恐る目を開いたナージャの瞳に写ったのは、遠近法で小さくなったティナの背であった。

 普段と違う反応にやはりおかしいとナージャは思う。

(何か変なものでも拾い食いしたか。それとも我が幻覚でも見ているのか)

 ビミョーンとナージャは髭を引っ張って、間抜けな顔を作ってみせる。

(うむ。痛いような気もするが、もしやこの痛みも幻覚か。いやいや、そう考えると・・・)

「何馬鹿やってんの?置いていくわよ」

(ハッ!?我は何をやっているのだ)

 馬鹿に馬鹿と言われてようやく正気に戻るナージャであった。


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