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五章 「ルトワナ、会見、トットルッチェ」 -3-

 一区切り笑いあった後、王は速やかに臣下に命令をくだす。

 それを確認して、トットルッチェは玉座の間を出ていこうとするが、その後を宰相が続く。

「もう行かれるのですか、トットルッチェ様?」

「うん。もうここに用は無いからね」

「そうなのですか・・・少し見ていただきたいものがあったのですが・・・」

(あ、もしかしたらこれがジルの言ってた報酬なのかな?)

 そう思い、「少しの間ならいいよ」と宰相につきあうことにしたトットルッチェであった。

 宰相の顔は憔悴したように疲労の色が濃く、足取りも重かった。

 トットルッチェもそののんびりとしたテンポに合わせる。

「それにしてもさー。ここの王様結構肝が据わっているよねー」

 先程の王への会見の素直な感想。

 それに対し、宰相は乾いた笑い声を上げた。

「そうでありますな。トットルッチェ様と気が合いそうな感じでした。ですが、見ている方は寿命が何十年も縮んだ心地です。今にもトットルッチェ様が王に牙をむかんとするものですから」

「そんなことしなよー。最後のは冗談だしさ」

 宰相はその言葉の真偽を掴み切れず、「そうですか」と相槌を打つだけである。

「それにしてもトットルッチェ様はいつもあのような感じなのですか?」

「うん?あんな感じって?」

「ジルルキンハイドラ様の書簡を見る限り、かなり切羽詰まった状況であるとお見受けしました。しかし、あのような・・・何といいますか・・・いい加減な・・・」

 宰相は言葉を選ぼうとしたが、恐らくは分かっていてあの態度、ならばいらぬ気遣いかと思い、そのまま言いにくそうに直接的な表現を用いた。

「うーん。そうだね。大体いつもあんな感じ。それに僕の仕事はここにあの手紙を期限内に届けた時点で終わりだから」

「と言いますと」と宰相はトットルッチェに説明を求める。

「ジルに説得できないのに僕に説得できる訳ないじゃん。それにさっきの会見だって、僕が必死に説得したところで、あの王様が首を縦に振ると思う?」

 宰相は自分の仕える主人の事を思い、「しないでしょうな」と漏らす。

 結果的にみれば、トットルッチェの態度に王が興味を示したおかげで、宰相が王を説得する場が与えられた。

 もし宰相が王を説得できなかったときは、会見の場でトットルッチェが言った通りの行動に出るだけの話。

 全てが計算の上、という訳でもなさそうだが、宰相は自分を納得させるのには十分だった。

 利用されたという思いも多少なりとはあったが、魔女の名の下に許される範囲のものでもある。

 それよりも一昔前の視野の狭い自分を鑑みれば、少しは恩を返せたのだとという思いの方が強い。

「こちらでございます。トットルッチェ様」

「何これ?」

 案内された部屋にあったのは銀で出来たまばゆい鎧。

 しかし、その鎧は普通の物では無く、鎧を着ているのは木製の獣。

「本当は私がジルルキンハイドラ様の元へ直接赴き、これを渡したかったのですが。何分私も多忙の身になってしまった故。ですが、これから戦場へ赴かれるのですから、きっと役に立つはずです。どうかお納めください。トットルッチェ様」

 満面の笑みと共に自慢げに鎧を紹介する宰相。

「サイズ等は分かりませんでしたので、可変がきくよう細工してあります。装飾も一流の細工師によるものであり、バラと翼、そして魔を打ち払わんとする聖獣をイメージして作らせました。強度に関しては銀と鉄の層を何層か作ることによってカバーしております。普通に合金という手もありましたが、そこは私のこだわりを見せ・・・」

 トットルッチェが鎧を覗きこむと、くっきりとその顔が写る。

 今にもトットルッチェが打ち払われそうな神々しさであった。

「なんか・・・重そう・・・」

 そして、素直に感想を漏らすトットルッチェであった。

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