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プロローグ「春の声」



 …春の声が聞こえた。



 これは比喩ではなく、鼓膜を震わせ脳に伝わった事実なんだ。


 西暦2022年の4月中旬、日本の『東京』。


 某区の運河沿いに広がる団地。その一室で確かに聞こえた。



「いま、聞こえたんだっ! ”春”の声がっ!」



 天にも昇る心地だった。


 “あの時”だけの奇跡が今、目の前で起きている。


 聞きたくて、聞きたくて、しょうがなかった。



「本当に聞こえたんだっ! やっと話せる。話せるよな”春”!」



 僕は彼女に語り掛ける。


 喜びのあまり目が(うる)んだ。春もまた同じだった。



「話せるよ! ヒロ!」



 僕らは手をつなぎ飛び跳ねながら喜んだ。


 2度目の出会いともいえるこの出来事を心から喜び合った。


 固く結ばれた手に輝く指輪もまた、祝福しているようだった。



◆◇◆◇◆◇◆


  ”(ハル)


 僕がそう呼んでいたのは、幼馴染の葉山千春(はやまちはる)である。


 ちなみに僕の名前は城ノ戸宏実(きのとひろみ)だ。「ヒロ」と呼ばれている。


 ハルは呪いのような病気を患っていた。それは、声を発しても周りにその音が届かないといったものだ。


 つまり、言ったこと、話したことの全てが誰にも聞こえないということだ。

 しかし、対象に例外もいるそれは“家族”だ。


 この病気を持って生まれてきた時から、ハルの人生は散々だった。希望の見いだせない人生に絶望し、何もかも諦めた。


 理不尽に突き付けられた悲劇的な運命にあらがう術もなく、ただ部屋に籠り続ける日々。ハルの心は固く閉ざされ、筆談ノートには寂しく空白だけが取り残された。


 人生はこのまま空しく終わると当時のハルは思っていたらしい。けれど、僕と友達になってからというもの、ハルは少しずつ変わっていった。


 これは声の届かない少女「ハル」と気遣い上手な少年「ヒロ」の恋と成長の物語。


挿絵(By みてみん)

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