森の賢者 1
大森林の奥深く、焚き火を囲みながら1人の少年は温かいスープと硬いパンを食べている。
「食えなくはないが硬いな・・」
この大森林はレーヴェル大陸の辺境に位置しており、付近では“魔の大森林”と呼ばれている。
危険な魔獣の巣窟となっているため近隣の村人は勿論、盗賊すら近寄らない森だ。
「〈探知〉」
本来なら大森林で焚き火を囲んでいれば魔獣の1匹や2匹は寄ってくるだろうが、付近に魔獣の気配はない。
「この魔獣避けの魔道具はよく効くな」
少年の目の先には黒色の陶器があり、陶器からは薄紫色の煙が出ている。
中に小さい魔石が入っており、魔石の魔力が持つ限りは魔獣避けの効果が期待できる魔道具だ。
袋から地図を取り出し、考え事をしながらスープを飲む。
(本当にこんな辺境の大森林に人が住んでいるのか?)
少年が大森林に入ってから既に4日が過ぎていた。
帰りの分の食料を計算すると、節約してもあと2日が限界だろう。
道中の村や街で情報を集め、僅かな手掛かりを頼りに辺境の大森林にまで足を運んだのだ。
(もし森の賢者がいなかったらどうするか、それも考えなくてはならんな)
森の賢者は大森林の奥深くに住むと言われている。
その知識量は膨大で、世界中の情報に詳しいと噂されていた。
少年にはどうしても森の賢者が持つ知識が必要だった。
(絶対に助ける・・待っててくれ・・)
少年は行方不明になってしまった妹のことを考えながら眠りについた。