二章ー⑦
よくもまぁ、こんな所まで追いかけてきたもんだ。やたら小っこくて軽い体で。
いくら人並み以上に魔力があったって、限界があると分かっていただろうに。
魔力ってのは、精神的な物が作用しているらしい。
具体的な仕組みなんてまだ解明されてはいない。だけどその説が有力だと聞いたことがある。
こんなに小さいくせにかなりの魔力量を持っているっぽいから、かなりの場数は踏んできたんだろうが……無茶しすぎだろうよ。
とりあえず、少しでも呼吸がしやすいように胸元のさらしを緩めることにした。
そう思ったのだが――何だこれ!?
かなりきつく結ばれてやがる! しかも、ところどころ汚れが固着していてなかなか取れなくなっちまってるじゃねえか!
最後に洗ったのはいつだよ。なんかやたらと汗くせぇし。
仕方ねぇ、さらしを切断するか。
他人様の服を切るなんて乱暴な真似はしたくねぇが、これじゃろくに看病もできやしねぇ。
さらしと肌の間に短刀を滑り込ませ、傷つけないよう、丁寧に裂いていく。
徐々に露わになっていく肌からは、痛々しい傷跡が見える。
こんなちっこいのに、どんだけ修羅場をくぐってんだよ。
浮浪児だって、もう少しは綺麗な体をしていやがるはずだってのに。
確かに、追い回されてひでぇ目には遭ったけどよ。なんだか、かわいそうだな……。
そんなことを思っていたら、押さえるものが無くなった作業着の胸元がするりとはだける。
なんとなく胸元に目線が行ったその時、とんでもないものを見てしまった!
「んっ!!?」
そこには、かなり小ぶりで一見して『そう』とは思えないが、ささやかながらも確かな胸のふくらみが――!
なっ!? こいつまさか!
確認するため腰帯を緩め、洋袴をずり下げる。
すると、下着越しでもはっきりと分かるはずの、男性特有のアレが無ぇ。
つまり、フレア――こいつは!
「お前……女だったのか!?」
あまりの衝撃に、思わずその場にへたり込んでしまった。