2章ー④
だけど、まだまだ遅ぇ!
これくらいの腕なら、まだ余裕で逃げ切れる!
後ろに三歩ほど下がり、少し距離を取る。
後方からさっきの残りがやってくるが、あんな雑魚共にかまっている暇なんてねぇ。
五人くらい固まって、一気に飛び掛かってくる。
「ばーか」
とんっ。
地面を蹴り、上へ跳ぶ。
「捕まえ――たっ!?」
まったく、声なんて掛けたら来ているのがバレバレだろうが。そうじゃなくても気配で分かるっていうのによ。
どどどっ、べしゃ。
案の定、平衡を崩して一人が倒れたのを皮切りに、次々と転んでいきやがった!
だが、油断はできねぇ。
着地した瞬間を狙って、若者が剣を構えている。
突いてくる気だな?
俺は、剣の切っ先を狙って、先ほど仕込んだ小袋を投げた。
「小癪な!」
余裕の表情で、若者がそれを切り払う。
――かかった!
きれいに両断された袋からは、勢いよく白い粉が噴き出して、相手の視界を遮った。
「げほっ、げほっ!? なんだ、これは!」
慌てて振り払おうとしているが、余計舞い散ってしまう。
俺の姿なんて確認できねえだろうな。
その隙をついて、さっと若者の横を走り去っていく。
「ただの小麦粉だよ、毒じゃねぇから安心しな~!」
十メートルほど引き離し、大声で叫ぶ。
ちらりと後ろを見たが、まだ剣を振り回していた。
まぁ、しばらく大丈夫そうだな。
ひとまず、拠点に帰るとするか。
今回、ちょっと短いです。すみません。