幕間~2章ー①
あっさりとフレアにつかまってしまったティム。
ふと目が合い、フレアを観察するのだが――。
~幕間~
怖がらないで、ぼくは君を助けたかっただけなんだ。
この辛くて苦しい運命の輪から。
拒絶しないで、ぼくは君を連れ出したかっただけなんだ。
暗くて痛くて、絶望しかないこの君の《世界》から。
だからぼくを見て。
君の世界に色を取り戻したい、ぼくの願いは君に届きますか?
2
「は~~~~~~な~~~~~~せ~~~~~~!!」
――昼間から、自分よりずいぶん小さな子供にお縄をかけられ、賑わう街中をずるずる……と引きずられながら絶叫する男がいた。
……俺だ。
こういうのを、何と言うか知っている。既視感とかいう奴だ。
しかし、黙ってお縄にかけられたまま牢屋に行くのはさすがに真っ平ごめんである。
こういう時の為に袖口に短刀を仕込んであるんだよな、っと……。
「余計な真似をしたら、腹にもう一発いれるぞ」
「あ、はい……すみまっしぇ~~ん……」
すぐに気取られて、あっさりとばれてしまった。こっそりと袖を探っていたつもりだったんだがなぁ……。
大概こういう稼業をなりわいにしているもんだから、たまには捕まっちまう事だってある。だが、そんな時でもここ数年間、覚えている範囲ではこの仕込み短刀で何とか乗り切ってきた。それにたとえ乗り切れなくても、まだ奥の手が残っている。
残っている、が……。
あくまで勘でしかないのだが、このガキには通用しない。さっきからそんな気がするんだ。
試みてみるのも悪くは無い。
悪くはないのだが――。
お縄につく前にこいつから貰った腹への一撃たるや『重い・痛い・熱い』と三拍子揃っていて、腹の中の物を全部出しちまうんじゃねぇか、と思ったくらいだ。
……まぁ、骨は折れてなさそうな感じからして、何となくだが手加減してはくれたんだろうけどな……。
今度脱走しようとしたのがばれたら、絶対最初の奴よりもっとキッツいのが来る。そう思うと、抵抗する気も無くなる、というもんだ。
そんだけやばかったんだよ。意識飛んだもん。
だったら大人しく、自警団に引き渡される時に、隙を見て逃げ出した方がまだ目がある。
そう考えながら、目の前のガキんちょを睨み付けた。
「……」
不意に、ガキんちょと目が合ってしまう。
そこで、改めて容姿を観察する。どうも稼業柄なのか、観察するのって癖になってんだよね。
ぼろきれと見紛う外套から覗く体つきは、ガキんちょの同年代の男子と比較しても華奢に見える。
前が開いた大人用の襟付き作業着を着ているのが、小柄な体型と合っていなくて不格好だ。
さらしを作業着の上から胸元に巻いているのも気になるな。動くとき、邪魔にならないようにしているんだろうか。
隙間からちら、と見える腹には、しっかり筋肉もついている。
自分に合った服を調達できないのであろうか、袖も、洋袴の裾も大幅に捲り上げている。
よく見たら靴も、底の部分だけを縫い付けるか何かして留めているだけの靴下のような代物だ。
釣り目がちな所が少々見た目年齢の割にキツそうな印象を受ける。
だが、黒目がちで、太めだが形の整った眉、そんなに高くもないが低くもない小さめの鼻、毒は吐くがふっくらしている唇。各部一つ一つ取っても愛らしい。
――将来は俺様を越える美形になりそうだ。性格はひねくれていそうだけど。
などと、そんな事を思っていたら、
「……綺麗だな、お前の髪と目の色」
いきなりそんな事を言われたものだから、思わず俺は目を瞬かせてしまった。