5月までの記憶
ふと、目が覚めた時に恐怖を感じたり、虚無感に襲われる時がある。
ただそれは、意味もなく起こるのではなくて、それが何かの前触れであったり、警告だったりする。
それが良いものなのか、それとも悪いものなのか。
今のところ、はっきりとはわからないだろう。だが、それが一瞬で終わることを私達は知っているからこそ、気にかけず、日常をやり過ごしている。
1月の24日に目覚めると、そこには全く先の見えない闇が広がっていた。恐くはなかったが、空っぽなのが嫌だったので、もう一度布団に潜ると闇は消えていた。しかし、反対に朝日が眩しかった。
2月の25日に目覚めると、頭痛が酷かった。だから、会社は休む事にした。
ふと、珈琲の匂いがして、心地よく眠りにつくことができた。
3月の11日に目覚めると、アラームが鳴らなかったことに気付いた。もう1時間も遅れてしまった。目覚まし時計の電池を入れ替えても動かないので、新しいものを買ってみたが、それもまた動かなかった。
4月の2日に目覚めると、泣いていた。自分が居るのが怖くて。要るのかわからなくて。とにかく泣いたら空っぽになった。
5月の30日に目覚めると、そこには何も無くて、ただの無が広がっていた。