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お江戸評判記

黒猫銀次の独白

作者: 桜桃露雨


 銀座の裏長屋で、生れ落ちごみにまみれて生きてきた俺が人並に成れたのは…讃州から流れてきた願人坊主のおかげかな?

 酒好きでだらしなく、ぐうたらな坊主崩れ…と思ってたあの男が俺を救ってくれたのは事実だ。


 いまじゃあ、住持でございと澄ましてやがるが…こんなお入れが訪ねていくと、快く接待してくれる気のいいおっさんだ。

 寺男に、あのゲジ熊が居やがるがゲジ熊さえつきものが落ちた表情になってやがる。


 鐚銭(ビタせん)数えて嬉しそうに、量り売り(小売り酒)を買いに走ってた生臭坊主が…本当は修行に疑問をおぼえ出奔した徳の高い僧侶だったなんてな。


 戒空のおっさんと出会わなかったら、俺はチンピラとして無縁(墓穴)に放り込まれていたはずだ。


 世を拗ねて遊び人を気取って、いきってただけのガキだった俺が生きているのは間違いなくあのおっさんのおせっかいだしな。


 金をもらわないと何もしないなんて言ってたが、俺を助けるため奔走してくれた唯一の人だ。家守(賃貸管理人)なんて関わり合いになりたくねぇと見捨てやがったのに。

 相沢の旦那を通じて、御番所(町奉行所)の旦那に拾い上げてもらえたのもあのおっさんが身元引受してくれたからだしな。


 嘗て(かつて)は手下なんて、裏社会を知っていないと務まらないって言い訳で縄付きを解き放る代わりに、昔の仲間を差させていただけだった。

 相沢の旦那たちが、それではいけないと今のように手下を雇い入れる制度を作ってくれた。町の人間たちも御番所手下と言う名の集りゆすりを繰り返すごみが排除され、住みやすくなったと好評だ。


 定町回り同心の野中源之丞(げんのじょう)様の配下である闇烏(やみがらす)の親分の盃をもらった、立派な岡っ引きに成れたのもどうやらあのおっさんのお節介が有ったらしい。

 おっと!闇烏の親分はあだ名に寄らず立派な人だぜ?闇夜のカラスって(ことわざ)があるように、夜の闇を相手に気づかれず接近する特技があるから夜盗が恐怖に駆られてそう呼んでいるんだ。

 親分は、悪党が恐れて言う悪口はオイラの誇りだって…自分でもそう名乗ってるってわけだ。


 まぁ、世を拗ねてうじうじしているより今のほうが生きがいがあるってわけだね。

 今日は、久しぶりに戒空さんのところに貧乏徳利(一升瓶)をぶら下げて遊びに行くかな。

本編で登場し損ねたサブキャラにスポットライトを当てる企画。


うっかり、小ネタを大ネタに筆を滑らせてしまい戒空さんが裏長屋に居られなくなって終わらせましたが…ちょい役で出す予定で出せずに終わったキャラたちによる連作短編?

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