奪う
「せめて会いたいなあ」
高木はもう随分と愛梨と会っていない。今度、演奏会によんでみようか。
「私は閉じ込めたい。檻に日沖を入れて手も足も縛って」
目隠しもして。何も触れないように、何も見られないように、どこへも行かないように。
日沖から何もかも奪ってやりたい。日沖を私のものにしたい。
「すごい危険なこと言ってるって自覚あるか」
高木は怪訝な顔をしている。
だけど私は、かまわずに続ける。
「それで最後は絞め殺しちゃうの。そのあとホルマリン漬けにするの」
そうすれば、日沖はどこへも行かない。大きなビンに日沖を入れて、ホルマリンを入れて部屋に飾っておく。
「岸岡、お前」
「大丈夫だよ。実際にやったりなんてしないから」
高木が何を言おうとしたのかは知らない。だけど、それをさえぎる。
高木の怪訝な顔が少し改善される。それでもやっぱり怪訝な顔だ。
「当たり前だ。犯罪だからな」
「犯罪とかは関係無いよ。そんなことをしても日沖が私のものになるわけじゃないって知ってるからやらないだけだよ」
大丈夫。私はまだ正常だ。
027 奪う
09/03/22