微笑む
どうして高木はだめなの?
そんなことを聞くのはおせっかいだと分かっているけれど。他人の恋愛に首を突っ込むべきではないと分かっているけれど。
それでも聞きたいと思ってしまう。
「紗那の考えていることを当ててあげようか」
「えっ?」
「顔に書いてある。どうして私が高木くんにこたえないのかって」
愛梨はくすりと笑いながら言った。正確にはどうして高木はだめなのかだけれど、愛梨の言葉は間違っていない。間違ってないどころか大当たりだ。
「教えてくれるの?」
教えるってほど大層なことじゃないのよ。そう愛梨は前置きした。
同い年のはずなのに、愛梨は私よりも年上のようだ。私のほうが背が高いし誕生日だって私のほうが早いのに、愛梨のほうがずっとずっと大人っぽい。特に精神的な面では愛梨に敵わない。
「誰が私を好きでも関係ない、だって私は好きじゃないから。向こうが勝手に私を好きなだけでしょう。お願いした覚えもない。好いてもらえるから好きになるなんてのは嫌なの、好きな人くらい自分で決めるわ」
愛梨はひどく綺麗にほほ笑んだ。
美しいというよりも可愛らしい顔をしているのに、それはひどく大人っぽかった。
025 微笑む
09/03/31