諦める
もう無理だってわかった。
どう頑張ってみたところで、そんなこと想像できないんだからって思った。
「だから、諦めたの」
「俺もだ」
諦めるのと諦めないのは同じくらい簡単で、同じくらい難しい。そのことを私と高木はよく分かっている。もちろんきっと、私と高木以外にもたくさんの人が分かっているだろう。
「無理なんだよね」
無理なんだよ。もう、どうしようもないくらいに不可能なんだ。
「考えられないんだよな」
諦めてもう目を向けないのと、諦めずに努力するのと正しいのがどちらなのかは分からない。
だけど私も高木も諦める方を選んだんだ。いや、選んだのではない。それ以外に道が見つけられなかったんだ。もうどうしようもないくらいに、一本道だったから。
今から気づくのなんてバカだとは思うけれど、今まではいっぱいいっぱいで考えたこともなかった。気づこうともしなかった。だってそれが当たり前だったから。
だけど、他の選択肢を見てみたら気づいたんだ。
どれだけ沢山考えたって不可能なことを、これ以上考えても仕方がない。
たくさんたくさん考えたって、日沖以外を好きになれそうもないんだから。高木だって愛梨以外を女子としてみないから。他の人を好きになる可能性なんて今の自分では考えられないから。
だからもう、彼女以外に目を向けることを――
003 諦める
10/10/18