教室にて
ガラッ
俺は七海と腕を組んだまま、教室のドアを開けた。
刹那、それまでの教室の喧騒が嘘のように、止んだ。
辺りを見渡すと、先程の翔太みたく男女問わず皆固まっている。
俺達はそれを気にすることなく教室に入り、それぞれの席に向かうべく、名残惜しくも絡めていた腕を解く。
「離すのは名残惜しいけど、今日から昼休みも一緒だもんね!置いてすぐどっかにいかないでね…」
「勿論だよ、お弁当もあるしね」
「うん!それじゃあまた!」
俺達が席を着いた辺りで、みんなが事態を読み込めてきたのか、ざわつき始めた。
「え?待って。どうゆうこと?」
「あれ片瀬さんだよな。なんで日野と?」
「本当に片瀬さん?」
など教室から色々な声が飛んでくる。
「俺、日野に聞いてくるわ!」
と、1人の男子生徒が立ち上がった瞬間、
「おーい、お前らH R始まるから席に着けー」
担任が入ってきた。先程の男子はおずおずと、席に着いた。
HRも終わり、休憩時間になった。
ちょうどその時。
ガラッ
「はぁ、はぁ、疲れた…」
石像と化していた翔太が復活して戻ってきた。
「おはよう、もう授業始まるから準備しろよ」
「おう!すぐ準備するわ」
そう言ってロッカーに教科書を取りに行くため、ドアに手を掛ける、
「って、ちげぇ!」
「ん?準備しないのか?」
「そんなのはまた後でだ、それよりも明人あれはどうゆう事なんだ?」
「あれって何だよ?」
「そりゃあ勿論、今後ろで顔をゆるっゆるにしているまるで別人な片瀬さんとの事だよ!」
そう言って、後ろを指さす翔太。
指の先にいる七海を見る。
すると七海も俺に気づいたのか、手を振ってくる。
俺もそれに呼応して、手を振る。
「そう!それだよ!え?何でそんなにイチャイチャしてるの?付き合ってんの?」
「おう」
「"おう"じゃねーよ!マジで?」
「マジだ」
気付いたら周りに人がいっぱい集まってきていた。
「いつから付き合ってるの?」
「理由は?」
「なんで隠していたんだ?」
すごいみんなから質問攻めにされる。どうしよう、頭痛くなってきた。
その時、
キーンカーンカーンコーン
いつもは聞きたくない音だが、今の俺には救済の音に聞こえた。
と、その音と同時に先生も入ってくる。
「授業始めるぞー」
俺はそれに便乗する。
「ほら、もう授業始まるから席に戻れよ」
「くっ、まぁいい。昼休みに問い詰めてやる」
「悪い、今日から七海と弁当を食べるんだ」
「じゃあ放課後にでも「悪い、七海と直ぐに帰るんだ」って、食い気味に断るんじゃねぇ!」
そうこうしていると、先生が、
「おい、和泉。早く座らねぇか」
「すいません!おい明人、放課後もダメなら明日土曜日だしお前んち行って問い質してやる!」
そう言って翔太は席に戻って行った。