文化祭にて 3
「こんにちは。そこの君、私を案内してもらえるかな?」
「え?」
声がかけられ振り向くと、そこにいたのは実行委員会でお世話になった鶴見先輩だった。
「今、大丈夫か?いやね、君たちが和装喫茶をすると言ってたから少し気になってな。衣装、似合ってるよ」
「ありがとうございます。はい、大丈夫ですよ。こちらへどうぞ」
そうして先輩を席へと案内する。席へ向かう途中、京達の席の近くを通ると、
「あれ?おねぇちゃん?」
「ん?光じゃないか。来てたのか?」
「うん」
2人は仲良さそうに話す。たしかに今思えば2人とも同じ苗字だった。姉妹だったのか。
「隣の子も…。確か、光の友達の日野京さんだっけ?」
そうして向かいに座る京を見てそう言った。
「そうですよ。こんにちはー」
「こんにちは。2人はどうして?」
「京ちゃんのお兄さんがここで働いているから京ちゃんに誘われて」
「なるほど…。やはり、日野明人くんは君のお兄さんだったか」
「お姉ちゃん達って知り合いだったの?」
「委員会で少しな」
「姉妹トークを繰り広げている中で申し訳ないのですが、一旦座りません?」
「ああ、そうだったすまない。みなさん私も一緒してもいいかな?」
「いいよ」
「どうぞー」
「いいですよ」
そう言って先輩は席に座る。ひとまず俺は注文を聞いてその場を後にした。
「知り合いか?」
「実行委員会の先輩だよ」
「かなり美人というか、イケメンな人だな」
「だな」
少しの間翔太と喋って、
「Cセットできたよー」
「了解。持っていくね」
注文の品ができたようなのでそれを運びにいく。
「ご注文のCセットになります」
「おぉ、ありがとう。助かるよ」
「では、ごゆっくり」
それからガールズトークで盛り上がっているのを遠目から眺めていると、暫くして彼女の友達が探しに来た。そして彼女は
「じゃあ、みんな楽しんでな」
「はい。先輩も楽しんで」
そう言い残して彼女は教室を後にした。
「なんか、凄い人だよねー。なんていうか堂々としてるっていうか」
七海が席を立ってこちらへ来てそう言う。
「もういいのか?」
「うん!楽しかったよ!京ちゃん達はこれから少し回ってから図書館行って勉強するって。凄いよねー」
「楽しかったなら良かった」
「そういうことだからおにぃ、私たちはもう行くねー」
「おう。気をつけてな」
「はい…。今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとね。いつも京に勉強教えてもらって」
「いえいえ、とんでもない。教えることで私の勉強になりますから」
「じゃあねー。おにぃ、おねぇ」
「失礼します。お兄さん、お姉さん」
そう言って彼女らは去って行ってしまった。というか光ちゃん七海のことをお姉さんと呼ぶことにしたのか。
「おーい。明人、片瀬さん。そろそろ上がっていいぞ」
「もうそんな時間か」
「おう。もう交代の人も来てるし大丈夫だぞ。あ、あと出店回る時もその衣装のままだと宣伝になると思うんだが、どうだ?」
「俺はいいけど、七海はどうだ?」
「いいよ!」
「じゃあよろしく頼むわ」
「おう」
そう言って俺たちは荷物を取って、教室を出る。
出ると七海は肩に手を置き、俺の耳元に近づくと、
「コスプレデートだね」
笑顔でそう言った。