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バクズ ♪ ストーリー  作者: Penjamin名島
恋愛百物語
80/102

第 80 夜   『四角形の法則』

語り部 : 伊丹イタミほのか

お相手 : 天野誠助アマノセイスケ


盛立役 : 千林喜代センバヤシキヨ

      夏宮景ナツミヤケイ

      西本悦子ニシモトエツコ

 4人の女の子仲良しグループで、仲良く受験しようと頑張った中三。


 本番直前の模試の結果、志望校への合格圏内にいたのは3人、1人は諦めて違う学校を受けた。


 私たち3人は同じ高校へ、3人が好きになった、あの人を追って進学した。



   第 80 夜

    『四角形の法則』


 中学の頃からの友達、女3人で会議中。


「喜代! 昨日、理科実験室の掃除、彼と二人っきりだったんだって?」


「しょうがないでしょ? 掃除当番だよ」


「お願いして変わってもらったんだよね? 喜代ちゃん」


「ちょっと、景! 黙っててくれるって言ったのに」


「あっ、そうだった。……えっと、ごめんなさい」


「もう! ……あ、いやあのね。変わってって言ってきたのは、向こうなんだよ」


「ふう、もう分かったわよ。喜代って行動力はあるくせに、最後の最後で尻込みするもんね。掃除してちょっとお喋りして終わりでしょ?」


「ほのか、その言い方は傷つくよ」


「信用してるってことよ」


「と言うかさ、私達って、誰も面と向かって告白する勇気がないから、傷を舐め合ってるだけでしょ」


「ふーんだ」


 私たちは同じ中学から一緒だった天野誠助くんを追いかけて入学し、ここでも中学の時同様に、抜け駆け禁止の盟約を結んだ。


 因みに、ここにいないもう一人、西本悦子は元々彼のことは、ただのお友達だったみたいだし、協定には関係ない。


「とにかく、私達の間での抜け駆けは禁止。だけど宣誓してのアプローチはそれぞれにOK、選ばれるのだとしたら、この3人の中の誰かっていうのがベスト。でもこちらからの告白はしない。彼からの言葉を待つ。覚えてる?」


「そう言うほのかだって、中学の頃は一番彼と仲良かったくせに、気持ち言い出せないでいるじゃない? そんなもっともらしい協定まで作ってさ」


 景って、天然って言えば聞こえはいいけど、ただ考えずに思ったことを口にするのよね。


 なのに肝心なことは、言葉に出来ないの。


「なにしてるの?」


「天野くん、もう先生の用事って終わったの?」


「うん、用事って言うか雑用だね。悪いタイミングで捕まったよ」


 実のところ、彼は私達の気持ちを知っている。


 知っていて誰かを選んだり、全員に断ったりもしない、極端に優柔不断な少年。


「帰ろうか」

「うん」


 でもそんな彼だから、私達を平等に扱ってくれる。


 ぬるま湯みたいな関係だけど、今はまだそれが心地いい。






 彼のことを異性ととして気にし出したのは、私が一番だった。


 その気持ちを相談した時の3人は、最初は私が彼に想いを告げられるようにと、協力してくれた。


 だけど、いつまで経っても告白をしようとしない私に業を煮やした二人。


 直情思考の喜代は、彼の周りをウロチョロしているうちに、彼の毒っ気の欠片もないヒーリングスマイルに打ち落とされた。


 景は……何でなんだろう?


 気がついたら、私と喜代の盛り上がりの輪の中に入ってきていた。


 今は別の学校になっちゃった悦子が、端から私達を見て楽しそうに笑っていたな。


 たぶん彼が私達の気持ちを知っているのは悦子の仕業。


 直接は聞いてないけど、そんな風なニュアンスのことは言っていた。


 そして私達はお互いを裏切らない。


 と誓い合っていることを彼に告げたのは景。


 彼の気持ちが決まるまで、その関係は揺るがない。そんな約束を交わしてくれた。


 私にも分かり易いように、アプローチを続けるのは喜代。


 私に彼女くらいの行動力があればきっと、こんな複雑な関係になる前に、彼に気持ちを打ち明けられていたと思う。


「はぁ~あ、私って本当にダメダメだなぁ。けど今のままでも良いと思うんだよね」


 第一、私達の気持ちを知っていながら、彼が誰かを選ばないってことは、私が直接告白しても、受け止めてくれる可能性は零に近い。


「おはよう、伊丹さん、一人?」


「えっ、あぁおはよう天野くん、うん、まだ二人とも来てないよ」


 いつもギリギリの登校なのに、今日はやけに早いんだね。


「二人が来る前でよかった。伊丹さんが一番早いのは知ってたから、今日は少し早めに出たんだ」


「なに、もしかして私に御用?」


「うん、あのさ、もう少ししたら、あの二人の誕生日でしょう」


「そうだね。二人とも同じ月だから、それで私かぁ」


「と言うことで、二人には内緒で]


「うん、分かった」


 けど、これって協定違反になるよね。


 でも天野くんのお願い事は聞いてあげたいし、筋は間違っていない。


 ここは知らんフリ、二人には黙って行動するしかない。






 休みの日の午後、二人の誕生日プレゼントを買いに街へ。


 私服姿って新鮮。


 なんて楽しみより、大変なのは自分の服装だよ。


 って事で今、もの凄く眠い。


「やぁ、待たせちゃったかな?」


 時間通りに来ているんだから謝る必要はないです。


 私が早く来すぎただけです。


「なんだか、眠そうだね。大丈夫?」


 大丈夫です。ちゃんと起きてます。


「かわいいね。その服」


 はぁー、眠気なんて吹っ飛んじゃった。


 頑張った甲斐あったぁ~。


 天野君も格好いいよ。


 私達は駅前のファッションビルに入った。


 私の狙いはお揃いの小物、4人分。


 毎回、同じ事をしちゃってるけど、これはもうお約束。


 天野くんは二人のためにと、洋服店に入って、それもお揃いの物を二つ買った。


「割と早く終わったね」


「伊丹さん、時間あるようだったら、お礼に奢るからお茶しよ」


 と言うお言葉に甘えて、喫茶店でチョコパフェを頂いた。


 思いがけないご馳走に、舌鼓を打つ。


「あれ? 悦子だ」


 今日は本当なら私もあの輪の中にいたはず。


(げっ、見つかっちゃった!?)


 3人は連れ立ってお店に入ってきて、私達に近付いてきた。


 ああ、えーっと、もう隠れようがないな。


「って、あれ、天野くん? なに? 今日は二人で会ってたの?」


 二人は黙って私を見てる。


 ダメだ。言い訳の言葉も浮かんでこない。


 私はまだ二口三口しか食べていないパフェと天野くんを置いて、お店から出て走り出した。


 自分から決めた約束事、協定を受け入れたくせに、見られたからって逃げ出して、もう天野くんにも二人にも合わせる顔がない。


「あ、荷物……」


 忘れて来ちゃった。


 けどいいや。今さら取りに帰れないよ。


 私は真っ直ぐ家に帰った。


 ちょっと落ち着いて、頭を冷やさないと。


 北向きの私の部屋はカーテンを閉めると、日中でも薄暗く、考え事をするにはちょうどいい。


 考えるといいながらボーッとしているだけで、しばらくこの状態だったけど時間は?


 と、時計を見ようとした瞬間、インターフォンが鳴った。


 お母さんに呼ばれて、玄関に顔を出す。


「あ、……えーっと」


 ほのか以外の3人がやってきた。私の忘れ物を届けに。


「あ、ありがとう。……あの、ね、えーっと、ね」


「伊丹さん。話があります」


「私達も謝ることがあるの」


 玄関口で話す内容じゃあなさそうだな。


 とりあえず私の部屋に上げってもらう。なんだろうこの緊張感。


 でもこの場合、私から口火を切った方がいいのかな。


「ゴ、ゴメンね。理由は話せないけど、決して抜けがけしようなんて……」

「伊丹さん」


 私の言葉を遮ったのは、天野くんだった。


「もう二人には断っている。俺の言うことを聞いて欲しいんだ」


 話をするのに二人に断った?


 どういう事?


「結論から言うと俺、君のことが好きだったんだ。中学の頃からずっと」


 えっ? なに、何が始まったんだ?


 なんか言葉が理解しづらい。


「実はね。私と景はその昔、天野くんに告白して、とっくに断られているの」


 喜代? あんたまで何を言ってるの?


「私達はちゃんと告白して、それでダメだったからね、自分から気持ちを打ち明けないほのかちゃんが、自分から告白してくるまでは待ってって、お願いしたの」


 景? あんた何泣いてんの?


「私達、あんたが告らない事を分かってて、自分たちに都合のいいようにしてたんだよ」


 喜代まで頬を濡らしてる。


「……二人とも、正直に言おうよ」


 天野くんの言葉を受けて、二人は頭を上げた。って、嘘泣き?


 目薬まで使って!?


「二人から愛の告白を受けたのは本当なんだ。その時に俺が誰を好きかも答えた」


 それは中学校の卒業間近な日のこと。


「で、その時に君も、俺のことを想ってくれていることを聞いたんだけど、俺から動くのは待って欲しいと言われたんだ」


 ここまでは二人の説明のまんまだ。


 卒業の頃と言えば、既に協定を結んだ後だ。


 その状態で私が天野くんから告白を受けたとしても、喜代と景のことを気にしてOKしない恐れがある。


 だから出来れば私の方から、どんな約束ごとがあっても、告白すると心に誓って二人に相談するほどに、気持ちが固まるまで待った方がいいかもしれないと、天野くんにアドバイスをしたそうだ。


「作戦としては、私が積極的に動いて、その情報を逐一あんたに知らせるのが、景の役割だったの」


「本当は、こんなまどろっこしい事やらずに、全部言った方が早いって、私は言ったんだけどね」


「いやいや、こういうのってなし崩しじゃあ、意味無いから」


 二人は意見をぶつかり合わせた。


 置いてけぼりとなった私と天野くんは、どちらからともなく目線を合わせた。


「ゴメンね。こんなややこしいことになっちゃって」


「うぅうん、私が最初から勇気を振り絞っていればよかったの。本当にゴメンね。二人もゴメンね」


 そう言えば悦子が言っていた。


 こういうのって、一度タイミングを逃すと、次のタイミングも逃して、ずっと堂々巡りをしてしまうと。


「そう言えば悦子は?」


「とっくに帰ったわよ」


「えっちゃん、みたい番組があるからって」


「悦子らしい、ホントにマイペースだな」


「ほのかに伝言板、しっかりしなさいよ。だって」


 本当に私は3人の親友に支えられているんだな。


 そしてこれからは、私だけの大好きな人も傍で支えてくれる。


 よし! これからもみんなの力を借りて、精一杯頑張ろう。恋も友情も!

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