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バクズ ♪ ストーリー  作者: Penjamin名島
恋愛百物語
58/102

第 58 夜   『止まない動悸』

語り部 : 間島有佳マジマユカ

お相手 : 大岡珊慈オオオカサンジ


盛立役 : 久地静香クジシズカ

      吉水沙里キッスイイサリ

 親友からの頼み事で恋のキューピッドをする事になった私は、彼女と私の共通の友人、大岡珊慈くんに会いに来た。


 最初に聞いたのは、こう言った時のお約束、「今、つき合っている人っている?」だ。


 そして返ってきた言葉もまた、「つき合ってる人はいない、けど好きな人ならいる」と言った、よく耳にするものでした。



   第 58 夜

    『止まない動悸』


 なんでこんなややこしい事に……。


「ふーん、珊慈くんって有佳の事が好きだったんだ」


「そんなサプライズなんていらないよ。あんまりビックリして、静香の事伝えるのも忘れちゃったし」


「それで有佳はどうなの? 珊慈くんの事?」


 私は、タダの陸上部のクラブメイトってだけの彼を、いきなり意識したりもできないし、それにやっぱり静香の事も放っておけないし。


「ああ、もう! さっちゃんどうしよう?」


 吉水沙里とはこの高校で出会い、同じ陸上部に所属した事で友達になった。


 彼女の男らしさっぷりに惚れ込んで、一も二もなく親友となった。


「久地さんと珊慈くんってどういう間柄なの?」


「クラスメイトだよ。静香と一緒に生徒会執行委員をしてる」


「その活動の中で、仲良くなったって事か」


 私と静香は小中学も一緒で、今もプライベートでは一番仲がいい。


「もしあんたにその気が全くないんなら、彼女の気持ちを伝えればいいし、少しでも珊慈くんの事が気になってるんなら、……伝えられないよね」


 私が大岡くんをどう想ってるかかぁ~。


 確かに仲はいいんだよね。


 と言うか、同じ短距離の選手だから、一緒にいる事も多いんだよなぁ。


「久地さんと珊慈くんの共通の友達って、他にいないの?」


 生徒会の中にはいると思うけど、私がそっちの繋がりを知らないからなぁ。


「よし! じゃあさ、私も一緒に行ってあげるから、3対3でどっか行かない?」


「それってややこしくならない? 二人の気持ち知ってるのに弄んでるみたいな」


「考えすぎだって、それは」


 とにかく別の案を考えよう。


「もう正直に久地さんに話した方がいいんじゃない? 友達なんでしょ?」


 そうだよね。その方がいいよね。






 さっちゃんも立ち合ってくれて、私は大岡くんに言われた事を、そのまま静香に伝えた。


「そうなんだ、なんか残念だけど、正直に言ってくれてありがとう、ちょっとだけスッキリしたよ」


 よかった。やっぱり正直に伝えて正解だったんだ。


「でも有佳はどうなの? 大岡くんの事、本当にどうとも想ってないの?」

「えっ、私?」


「そうだね。珊慈くんだって、自分の気持ち伝えたいって思ったから、告白したわけだしね。ちゃんと答えてあげないといけないんじゃない?」


「有佳ってどうなの? 彼とつき合ったりしないの?」


 ちょ、ちょっと二人とも落ち着いて欲しい。


「そうだ吉水さん、6人デートって本当に実現できる?」


 ああ、こんな所まで喋らなくてよかったのに、デートのプランを立てていた事まで、さっちゃんはばらしてしまった。


「大丈夫大丈夫、それと私の事は沙里でいいよ」

「じゃあ……サリーでいいかな?」


「あはは、中学の時の友達も、そう呼んでたよ」

「それじゃあ私も静香って呼んで」


 なんか大変な事になってきたなぁ。






 私たち3人女子と、男の子はさっちゃんの彼氏とその友達、そして大岡くんの計六人、グループ交際がスタートしました。


 事情を知らないのは大岡くんだけ、他の男の子達も、私と彼の事を盛り上げる役に徹してくれる事になっている。


 なっているんだけど、さっちゃんの彼の友達は本気で静香を口説き始めている。


 でも静香も楽しそうにしているから、まぁ~いいか。


 そうなると自然とさっちゃんは彼氏と、私は大岡くんとといったポジションに落ち着く事となる。


 アイススケートなんて何年ぶりだろう?


 割といろんなスポーツで活躍する自信のある私だけど、こういった滑る系だけはどうにも苦手でよくない。


「ごめんね。なんだかつき合わせちゃって」


 こういったスポーツも得意な大岡くんは私の面倒を見てくれて、他のみんなが楽しそうに滑り回っているのに、隅っこでふらついている私の手を取って、支えてくれている。


「謝んなくていいよ。それにしてもこう言うのは苦手だったんだな。著しく意外に思えるけど」


 だからあの二人はこの遊びをチョイスしたんだろうけど、大岡くんの楽しそうな顔、ちょっと腹立つなぁ。


 って違う違う。


 今日は彼と遊んでみて、どれだけ楽しめるかの検証に来てるんだから。


 とは言え、自分自身がこれだけ必死じゃあ、そんな余裕なしだよ。


 結局スケート中は全く彼との事を考える暇もなく、次のボウリングにかける事に。


 ところが地に足が着くと途端に元気になり、私の負けず嫌いが顔を出して、もう勝つ事に必死。


 それじゃあ今日のプランが意味がなくなることに、途中で気付いた私は、今度は必要以上に彼を意識すると、そこからはもうゲームはガタガタになり、一体何やってんだか……。


 その後ゲームセンターに行ってみても同じような結果で、ただただ恋も遊びも、中途半端に終わった一日だった。


「二人とも今日はありがとうね。ちょっと上手くいかなかったけど、ちゃんと参考にするから」


 今日はたっぷりお金も使ったのに、微々たる成果しか実感できていない。


 折角ここまでしてもらったのに……。


「間島さん……」


「大岡くん!?」


 解散後の待ち伏せ、今日一番の印象がここに。他の事は全部吹っ飛んじゃった。


「な、なにか忘れ物?」


「いや、何か今日一日ちょっと変だったなって思って、気になったんだけど」

「えっ?」


 またここで今日一番が塗り替えられた。


 私の様子がおかしい事に気付いてたんだ。


「なんか心配事でもあるの? 俺でよかったら聞くけど」


 本当に見ててくれたんだね。


 自分的にはそんなに大きな違いは見せなかったはずなのに、こうして先回りまでしてくれて。


 私は今回の企画について、全て打ち明ける事にした。


 公園のブランコで隣に並んで座って、なんだか申し訳なくて泣きそうにもなるけど、頑張って最後まで喋った。


「ごめんね……」


「なんで謝るのさ。そんだけ真剣に考えてくれたって事だろ? ものすごく嬉しいよ」


「でも私、結局答え出せなかった」


「だけどこれからも考えがまとまるまで、俺の事を見ててくれるんだろ? ならいつも通りの自然体でさ、いずれ出る結果ってのを楽しみにしてるよ」


 この数十分のお話で十分だった。


 私の心はもう既に彼の虜になっている。


 だけどすぐには打ち明けない。


 なんだかもう少し、この雰囲気を味わいたい。


 そうだね、いつかきっと気持ちを伝える時が来るよね。


 その時の私は、自然体でいられるのかな?

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