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星の医者(仮タイトル)  作者: ハンティングキャット
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プロローグ

 ごうごうと音を立て燃えていく山岳


眼が眩む程輝く日の光を浴び青々と生い茂っていた木々は今、その身を焼き焦がす炎の葉を生い茂らせ揺らぎ、次々と朽ち果て灰と化していく。


老若男女問わず誰もが顔見知りで互いに助け合い各々日々のやるべき事に手を抜かず一日一日を大事にし、今日も健やかに過ごそうとしていたものは鈍い金属の音が囀る度に悲鳴が上がり次々とやがて炎のなかに消えていく。


 のどかな風が撫でゆく気風の良い村は今…豪華な装飾が施されたフルプレートの騎士の一個師団がなだれ込み、細々とした路地すら見落とすことなく回り込み配備についてはその腰に付けた剣や手に持つ槍を振るい次々と虐殺していく。


 捨て身の妨害により六方、村から脱するそれぞれの少数グループは、宙に浮遊するカラフルな幾何学紋様が施されたローブ纏う大魔導士たちにより、炎、水、土、風属性やその複合魔法を次々放ち根絶やしにしていくよう細心の注意を払い12人の連繋を常に置き隙の無い布陣を強いて行く。


今まさに歴史から抹消されかけている村に一人…村の奥にある隠し礼拝堂へと逃げ込む一人の少女が息を切らしながら転がり込んでいった。


 銀色のきれい長い髪は煤で汚れ、白い巫女のような服は害悪共により千切れ穴だらけとなり、所々打撲痕や裂傷から赤い血が流れ白い肌を穢していく。


憤りと悔しさで満ち溢れた青い瞳からぼろぼろと真珠の粒を流す少女は骨折しかけた足に鞭を打ち、よろめく身体で懸命に礼拝堂奥へと足を運んでいく。


14の年を過ごしてきた村は害悪共が放つ憎悪の炎に焼かれた。家族のように接してきた私のたった一つの大切な場所(帰るべき居所)は穢され、もう二度と、もう二度と取り戻すことはできない!!


私は、私は巫女としてこのことを伝えなければならい、この世界は創造神を頂点に置いた一神教、他の宗派は絶対に認めず力尽くかウソを込め邪教と陥れ、葬り去る。


 こっちだ…! この血の跡は新鮮だぞ、魔導士様!


私は私の祖先たちはあるお方に救われた…

あのお方は、あのお方ならば…村に伝わるおとぎばなし通りなら…


足止めしていた隠し岩が音を立て崩れ、足踏みするような金属音の群れが礼拝堂入り口へと殺到してくるのを聴き、焦る少女は必死に礼拝堂奥に鎮座する物に手を伸ばし、前へ、1秒でも早く前へと足を引きずらせ進む。


 あとちょっと…もう少し


藁もすがる想いを爆発させ手を伸ばしていたが――強い衝撃が背中を襲い少女はつんのめるように礼拝堂奥の壁に全身を叩きつけられた。


背中が熱せられた鉄の棒で何度も殴りつけられたような激痛に地面に倒れ落ちた少女は文字通りのたうち回る。

際限なく続く肉を焼く痛みと転がる度に突き刺す破片が体を深くえぐる痛みを交互に混ぜ返されていくような激痛に、声にならない悲鳴を上げ続けていく。


「ようやくこれで最後か、邪教の一族どもめ」


 唾棄すべきものだと言わんばりの低い声を吐き捨てる大魔導士の女が掲げた杖先端に付けられた宝珠から炎の色が消えるのと同時に彼女の左右を囲うようフルプレートの騎士たちが魔導士の後方から次々と躍り出てくる。


この場所唯一の出口は既に騎士や後続の魔導士一団に占拠されているのが気絶しかけている青い眼にうっすらと映ると…大魔導士の女は侮蔑した眼差しで蔑み見下ろしながら口を滑らしていく。


「ズアーク帝国、ロンゴミニ王国、チャクラム皇国、各連合国すべて合意の元っ!セラムス教が認めない宗教は駆逐する!!」


 自身が殉ずる教典こそ真理と唄う女の声に一片の雲りがない騎士たちも静かに頷き構える剣を瓦礫が散乱する床に横わたり息も絶え絶えな少女へ刃先を向けていく。


今日も世界は平和になると確信する大魔導士だったが…ふとある違和感に気付き、少女の胸元に目線を向けていく。


「…はん、なんだその野良狼じみた眼つきはっ!貴様の魔力は空なのは見通している、すなおにその薄汚い玉っころと共に砕け散れ邪教徒」


 かみさまかみさま、そせんをたすけてくれたやさしいかみさま

このことばをつかうときがきてしまいました

災害にみまわれても飢饉におかされてもあなたにめいわくをかけたくないと、私達はこのことばだけはきょうまでつかいませんでした


だってかみさまやさしくきずつきやすいのをずっとずっとかたられてきたからです、わたしはあなたのおとぎはなしを

不思議に思っておりました。でもいまならわかります、すぎた力がどんなにあぶないことなのかを


 だけど、もう──むらはわたしいがい……いなくなりました……だから告げます、ごめんなさい、でも…おねがいかみさま


 か…


「か…?」

「カリを……返し……て、ください。ジん、さ…ま」


 少女が最後の力を振り絞るかすれた声と共に彼女が抱える玉っころが独りでにおぞましい光を放ち砕ける。


少女が気を失う最後に目にしたのは、顔のない白い仮面をつけた人?が次々と身体を変化させ害悪共を引きちぎり、炭化させ、分解し、災厄を祓い浄めていく姿だった。

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